使用をやめられないユーザーにテック大企業は空の謝罪を繰り返す

真の謝罪というのは、正直に過ちを認め、なぜ誤ったことをしたのか、そしてそれによる損害について自責の念を示し、行いを改善することで償いを約束することだ。それをきちんと最後まで実行しないと「ごめんなさい」と言うのは謝罪にはならず、許しを得るための単なる策略となる。

テック大企業から聞かれるのは、そうした種類の“ごめんなさい”だー醜聞を鎮め、影響を受けた人をなだめるための言葉であり、往々にして同じ過ちを繰り返さないための全体的な刷新を伴わない。時に、そうした謝罪の言葉はブログに投稿される。またある時は、役員がメディア向けに謝罪インタビューを行う。しかし、問題を引き起こしたビジネス構造にメスを入れるという形での謝罪はほとんど見られない。

インターラクティブな売上

残念ながら、テック企業のビジネスモデルは、私たちがそうあってほしいと思う姿とは相容れない。我々はよりプライバシーがほしいのに、テック企業はターゲティングとパーソナリゼーションデータで繁栄している。我々は自身の注意をコントロールしたいのに、テック大企業は我々に広告を見せて可能な限り注意をそらそうとしている。また、我々はスパイ行為のない安全で倫理的なデバイスがほしいのに、企業は安価で非常に懐疑的な労働基準でデバイスを製造することでマージンを稼いでいる。我々はパイオニア的なテクノロジーの適用を求めているのに、うまみのある政府との契約や中国の巨大な人口の魅力がテック企業にモラルを妥協させている。そして我々は必要とするものやベストなものにこだわりたいのに、彼らは意図的にバージョンを古くして我々が最新の状態またはコンテンツにしたいと思わせることで収益をあげ、我々をプラットフォームに閉じ込めている。

結果として、たとえテック企業のリーダーが過ちを償うために真剣に意義ある変更を加えたいと思っても、すでに固まっているビジネスモデルや四半期ごとの決算サイクルという短期焦点で身動きが取れない。彼らは謝り、そしてすぐさま問題のある行動に戻る。ワシントンポスト紙は最近、フェイスブックのCEOマーク・ザッカーバーグが行なった12回の謝罪を時系列でまとめたが、ソーシャルネットワークは大失敗に次ぐ大失敗を重ねている。テック大企業は自力では十分に改善できない。

ユーティリティに囚われている

船を見捨てるというのは、理論的にはキャプテンと考えが一致してのことだ。だがテック大企業は、多くの人がそれなしの生活は思い描けないという基礎的なユーティリティに成長した。あなたはテックなしにどうやって友達とつながるだろう? 必要なものがテックなしに見つけられる? テックなしに仕事を終えられる? テックなしに時間を過ごせる? 寂しいと感じたとき、どんなハードウェアもしくはソフトウェアがあなたに寄り添う? 我々はテクノロジーを通じていまを生きていて、ユーティリティ中毒になり、それがなくなることを恐れている。

もし別の選択肢があれば、テック大企業を責任あるものに保てたかもしれない。しかし、大規模に実現可能で、ネットワーク効果を持ち、そしてディストリビューターによる供給の寄せ集めであることが、これらコアなユーティリティにおいて大企業による寡占を招いた。次なるソリューションははるか彼方だ。Facebookが所有しないログインプラットフォームとなりそうな、次にいいソーシャルネットワークは何だろう。Appleの次にプレミアムなモバイルとPCのメーカーはどこだろう。GoogleのAndroid以外に発展途上国にとってベストなモバイルOSは何だろう。Amazonではないベストなeコマースハブは何だろう。次にベストな検索エンジンは何? 写真フィードは? ウェブホスティングサービスは? 世界規模のチャットアプリは? スプレッドシートは?

実際にあったテック企業への過激な反動の一つに、#DeleteUberが挙げられる。職場での差別、いかがわしいビジネスプロトコル、搾取的な価格設定、そのほかの要素も絡んでUberのアプリをボイコットしようという動きにつながった。しかし米国のUberユーザーはさほど慌てずに別の選択肢に移ることができた。Lyftだ。結果として、“Lyftは今年、Uberのトラブルで大きな恩恵を受ける”とeMarketerの予想担当ディレクターShelleen Shumは5月にUSA Todayに語っている。eMarketerの予想通り、LyftはUberに勝り、2社の差は縮まっている。その一方で、Uberは社内方針を徹底的に見直すためにトップがCEOを退いた。

これこそが、大規模な合併を防ぎ、ユーザーがひどく扱われた会社から別の会社に乗り換えられるよう相互運用データのポータビリティをユーザーに与えることで競争を促す、という規制が必要とされる理由だ。

しかし大企業の代わりに利用できる別の選択肢がなければ、大企業が頼みの綱となり、これは不都合を引き起こす。結局のところ、大企業は我々をトラブル嫌いにしていてる張本人だ。かなりのスキャンダル、データ流出、有害なカルチャー、不公正なプラクティスが明るみに出た後でも、我々の多くはそうしたテック大企業なしの心もとない暮らしを避けるためにテック大企業を利用し続けている。事実、Facebookは多くの不安要素があったにもかかわらず、前四半期には米国とカナダにおける月間ユーザー数を100万増やしている。テックユーザーは使用することで意思表示をしているわけではない。我々はしぶしぶ大企業のプロダクトを買ったり使用したりする一方で、大企業に対し悪意を心に抱くことができるというのはわかっていることだ。ただ、大企業に行いを改善させるような力は、我々の忠誠姿勢によって大幅に弱められる。

不十分な監督

議員たちもまた、対応が十分でない。今年のFacebookやソーシャルメディアについての議会公聴会では、無意味で無知の質問が繰り広げられた。「課金せずにFacebookはどうやって稼いでいるのか」といったものだ。「議員、我々は広告を掲載しています」。FacebookのCEOマークザッカーバーグはにやにやして答えた。また別のときには、政治家がスタンドプレーしたり陰謀論を展開したりするなど偏った点にこだわることにかなり熱心で、実質的な議論が展開されなかった。Axiosが最近行なった調査では、政府がテック大企業を十分に規制していないと懸念する人の数は15ポイントも上昇し、今や55%の人がそうした懸念を抱いていることが明らかになった。

政治家が取り組もうとすると、そうした試みが逆発となりえる。GDPRは、GoogleやFacebookがユーザーデータを集めるのを制限し、透明性を高めることでそうした企業の支配を抑制するのに役立つはずだった。しかし、コンプライアンスに伴うコストの増大が中小企業のビジネスの妨げになり、大企業が行政の規制をすり抜けるのに余るほどの金を注ぐ一方で、中小企業はマーケットから追い出されてしまった。中小の広告テック企業がビジネスの20%、30%を失ったのに対し、Googleは広告テックマーケットシェアを増やし、Facebookはわずかな減少だった。

2016年の選挙干渉を受けて、政治キャンペーンの透明性をインターネットプラットフォームに持ち込もうと意図された広告規制法案Honest Ads actですら、FacebookやTwitterが賛同しているにもかかわらず、まだ採択されていない。FacebookからInstagramやWhatsAppを実際に切り離すという議論は言うまでもなく、ソーシャルネットワークが競合する会社を将来買収するのを防ぐための意義ある議論は展開されてきていない。Cambridge Analyticaの崩壊を巡るFacebookの陰謀に関連する文書を強制的に押収したばかりの英国のような政府が、いくらかの力を示している。しかし扱いにくい規制でも、現在ある堀を深くし、崩壊者が足がかりを得るのを防ぐことができるかもしれない。我々はいますぐテック企業から十分に身を守るのに、議員に頼ることはできない。

企業内部への期待

変化のための善処策は、これら独占的な企業の平社員から出てきそうだ。テック大企業は社員の意見に弱く、激怒した才能ある社員たちが起こした戦争で、ロックスター社員はプロダクトに非常に大きな影響を及ぼすことができ、賠償コストは上昇している。これはひとえに、反対の声をあげた社員に代わって高度なスキルを持った人を新たにリクルートするのは費用がかかり、集結力を損なうからだ。Googleでは、標的ドローン兵器に使われているプロジェクトMavenの人工知能の政府への提供をめぐり、従業員4000人が反対し、何人かは会社を辞めた。その後、Googleは政府との契約を更新することを却下した。変化はさらに多くの企業で見え始めている。社員2万人が抗議のためにストライキを行ない、その対応としてGoogleがハラスメント抗争への強制的な仲裁規則を取り除いた後、FacebookやAirbnbを含む多くのテック大企業が同様の措置をとった。

Facebookは、New York Timesやその他メディアの破滅的な報道を受け、同社が改善していると記者らに思わせようと秘密のコミュニケーションキャンペーンを必死になって推進している。TechCrunchは、Facebookを辞めるコミュニケーション担当副社長Elliot Schrageが記した内部メモを報道した。その内部メモで、彼は最近の問題の責任は自分にあると認め、非難の転嫁はやめるよう従業員に呼びかけている。そしてCOOのSheryl Sandbergは「年末が近づき、みなさんが懸命に働いているときに今回の件がみなさんの注意をそらすものになっていることは承知していますー申し訳ありません」と述べ、従業員を落ち着かせようとしている。こうした内部向けの謝罪は一般向けに示した謝罪より、より多くの悔恨と真の変化を伴うべきだ。

我々が毎日使うプロダクトを作るのにこうしたテック従業員に頼ってきた。好ましい環境に優秀な才能を移し、雇用主の業務命令に立ち向かうことを引き受けるのは重大な責任だ。我々のような一般市民、そしてメディアは、彼らが社会のために良いことをしたときは賞賛しなければならない。それが株主にとって価値を損ねるようなときでもだ。もしアプリが我々に弊害をもたらし、不当に我々の注意を奪うのなら、我々はそうしたアプリから離れる必要がある。

そして我々は、集合財の未来を具体化することが個人に不便をもたらすかもしれないことを受け入れなければならない。ただ不平を言ったり、願ったりするのではなく、テック大企業自身がこれまで何回も約束してきた変化を実行に移すよう、テック大企業に責任を持たせる社会運動を形成するチャンスがここにある。

イメージクレジット: Justin Sullivan, Linda Davidson, Ramin Talaie / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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