クラウド会計ソフト「freee(フリー)」を手がけるfreee。同社は2015年5月、会社設立に必要な書類を出力できる無料ツール「会社設立 freee」を無料公開したことで話題を集めた。そんなfreeeが10月10日、今度は個人事業主向けに、開業に必要な書類を出力できる無料ツール「開業 freee」を公開した。こちらも利用は無料となっている。
開業 freeeでは、個人事業主が開業するために必要な「開業・廃業等届出書」「青色申告承認申請書(青色申告を行う場合)」「青色事業専従者給与に関する届出書(家族に給与を支払うか、家族への給与を経費にする場合)」「給与支払事務所等の開設届出(給与を支払う場合)」「源泉所得税に納期の特例の承認に関する申請書(給与を支払う場合)」の5つの書類について、サイト上の質問に回答していくことで出力することが可能だ。なお不動産業や旅行業などはそれぞれ業種ごとに別途届出が必要になるため、そのための書類は用意する必要がある。またサイト上でジャパンネット銀行の口座開設も可能なほか、クラウド会計ソフト・freeeも1カ月無料で提供する。
開業により青色申告で控除を受けられるように
会社設立と個人事業主の開業には大きく異なる点がある。それは、会社設立であれば登記は必須だが、個人事業主は開業を税務署に届けることが必須ではないということだ。ではそこにはどういう違いが生じるのか? それは年1回行われる確定申告にある。
確定申告では(1)青色申告(65万円控除)、(2)青色申告(10万円控除)、(3)白色申告——のいずれかの申告方法を選択することになるが、手間のかかる青色申告のほうがより大きな額の控除を受けられる。月収20万円の場合、白色申告と青色申告(65万円控除)では年間で15万円以上納税額が変わるケースもあるという(シミュレーション結果は開業 freee上でも確認できる)。
青色申告を行う(青色申告承認申請書を提出する)ためには開業の届出が必須になるのだが、freeeが独自にアンケートをとったところ、個人事業主の約3割は青色申告承認申請書を提出しておらず、そのうち約6割は提出しないことについて「特に理由はない」と回答しているという。つまり、「制度の構造が理解されず確定申告時のメリットを最大限受けられていない」(freee)のだそうだ。また、開業届の準備から提出までの期間を調査したところ平均11.2日、その後に提出する「青色申告承認申請書」については平均9.3日で、忙しい開業のタイミングで大きな負荷になっているのは事実のようだ。
開業 freeeではそういった開業届の手間を削減するほか、確定申告時に必要となる複式簿記で記帳したはクラウド会計ソフト・freeeで作成できるというわけだ。同社が会社設立 freeeを提供した際にも、設立したばかりの企業を囲い込む意図があるのではないかと報じたが、このサービスも個人事業主に利便性を提供すると同時に、彼らを囲い込むためのうまい施策となりそうだ。