裁判の原告の経験のある人はよくご存知と思うが、訴訟は長くて遅々として進まない過程になることが多い。とくに個人の傷害のケースでは、本人が働けない、収入がないことも多いから、よけいにつらい。
弁護側はよく、この点に目をつける。低額な示談を提示して、すぐにでもお金が必要な原告側の弱みにつけ込むのだ。その結果、傷害の被害者が不利、という歪んだ司法システムになってしまう。被害者は、法廷で十分な期間闘えるだけの財務基盤を、持っていないからだ。
そこで、Mightyが登場する。同社は、原告の資金調達を助けることによって、この不利をなくそうとする。そして、“訴訟の示談の額とその間の生活費との落差”の、解消を目指す。
この、ニューヨークの原告に対する金融プラットホームは最近、シリーズAで525万ドルを調達した。同社の発表によれば、9月に立ち上がったばかりの同社は、すでに原告たちに100万ドルあまりを投資した。
Mightyが一人の原告に投資する額は平均で5000ドルだ。最大で、示談金の見積額の10%までしか投資されない。同社自身も案件を審査するが、最終的に投資の可否や額を決めるのは同社への投資家たち(多くが副収入を求める弁護士)だ。
Mightyの原告への投資はノンリコース投資なので、原告が敗訴した場合、債務はいっさい残らない。
このプラットホームは一種のマーケットプレースにもなっていて、投資をする弁護士たちはなるべく低いリターン率で原告を魅(ひ)きつけようとする。しかしMightyの平均のリターン率は20から30%なので、従来のローンやカードローンなどよりも高い。
しかしあくまでもノンリコースで、原告が敗訴したとき債務が残らないから、どうしても高いリターン率になりがちだ。が、また、原告がこの投資を唯一の支えにして、公正で高い金額の示談にこぎつけることもある。原告としてはリターン率が高くても、最終的に相当額が手元に残るのだ。
30%のリターン率は一見暴利のようだが、でも重要なのは、これで従来の、原告への実質的差別がなくなることだ。しかも、往々にして弱き個人である原告は、敗訴しても借金の重荷に苦しむことはない。
結局のところ、Mightyのようなプラットホームの存在は司法産業にとって良いことだ。これもまた、テクノロジの力で司法の不公平が正される例の一つだ。
〔訳注: 原文がinvestなので投資と訳しているが、この場合の実態は融資だと思う。〕