出張シェフが1食600円台で作り置き、シェアダインが急拡大で「年内に全国展開も視野」

出張シェフがユーザーの自宅に訪問し、家族の食事を作り置きしてくれるサービス「シェアダイン」が人気だ。シェアダインは、さまざまな料理に対応できる管理栄養士や栄養士、調理師、レストランシェフなどの「食の専門家」と、食の悩みを持つユーザーをマッチングするプラットフォームサービスとなる。

1度の訪問における合計の出費は、税込み7480円の「フリープラン(シェフの指名なし)」であれば、平均的な食材費3500円を加えて約1万980円で、12品(16食分)の料理ができ、1食当たり税込み686円で利用できる。4人家族であれば4日分、単身世帯であれば2週間ほどの食事量に相当する。

厚生労働省の調査によると、2020年における月間の平均食料消費支出は、2人以上の世帯で約8万円となっている。フリープランであれば、1回の食糧費3500円を加えても、月4回利用で約4万3920円。平均よりも安く消費支出を抑えながら「食の専門家」が作る料理を楽しむことができるのだ。

同サービスを提供するシェアダインは2017年5月に設立し、18年からサービスを始めた。子育てをする中で家庭の食卓に悩みを持っていた井出有希氏と飯田陽狩氏が共同代表を務めている。現在は毎月100人前後が出張シェフとして登録しているなど、急拡大するサービスについて、井出氏に話を聞いた。

出張シェフが無料の買い物代行も

会員登録は無料で、利用方法はシンプルだ。シェアダインのページで、最寄り駅やプランから出張シェフを選ぶことができる。幅広いプランが用意されており、妊活・産前産後や離乳食、生活習慣病、食育、筋トレ、ダイエット、介護、偏食、お弁当など、ユーザーは自身に合った料理を選べる。選ぶだけでなく、アレルギー対応や具体的な食の悩みについても事前にシェフに相談できる。

シェフは食材の買い出し代行も無料で行う。また、訪問した3時間の中で、調理した12品前後の料理について保存方法やアレンジ方法の説明、キッチン周りの片づけまでする。訪問後は、ユーザーからの料理に関する質問に答える他、簡単なレシピの共有にも応じる。

2019年4月からはサブスク型の提供も始め、月2(隔週)のプランで税込み1万4960円からとなる。料金設定はシェフが行っており、シェアダインは20%の手数料を取っている。サブスクは月2回、月3回、月4回とあるが、利用回数とシェフの設定料金を掛け合わせた金額が、月額の費用になる。

なお、どのプランでも食材費は別途かかるものの、買い物代行費や交通費などは表示価格に初めから組み込まれ、プラスされることはない。この他、単発での申込みやお試しプランなども用意している。

コロナ禍におけるシェフを支援

コロナ禍でいわゆる「おうち時間」が増える中、ユーザーとシェフの獲得に弾みがついた。2021年6月時点で、コロナ禍以前(2019年12月)と比べてユーザーは4倍に増えた。ローンチ当初は子育て世帯の利用がほとんどだったが、最近では単身世帯やシニアの利用も増加。単身世帯には家飲みのおつまみプランなどを打ち出した他、オンラインに手を出しづらいシニア向けには電話予約窓口を新たに開設し、新たなニーズの取り込みには力を入れてきた。

一方、シェフの獲得にも尽力してきた。2020年から複数回にわたり「飲食店料理人応援プログラム」を実施。コロナ禍で深刻な打撃を受けた飲食業の料理人が「出張シェフ」としてデビューできるように支援するプログラムを打ち出してきた。

「シェアダインに登録する食の専門家(料理人)は現在1600人に上り、2021年1月からは毎月100人前後が登録しています」と井出氏は語る。シェフ登録時には面談や実技試験、衛生研修などを行う。出張シェフ候補者は実際にシェアダインスタッフの自宅に訪問し、時間内に決められた品数を調理できるかなどを試験するという。

「我われが定めるガイドラインに則った衛生管理項目をクリアしているかなどの他、訪問前のチャットのやり取りも見ています。チャットについても、マニュアルを用意しています」と井出氏はシェフの質の担保には特に気を配っている。

また、サービス提供エリアも拡がっている。2021年6月時点で青森、新潟、東京、神奈川、千葉、埼玉、茨城、群馬、山梨、愛知、岐阜、三重、大阪、京都、奈良、兵庫、滋賀で利用可能。「チャレンジングではありますが、年内には全国47都道府県の展開も視野に入っています」と井出氏は自信をみせる。

「理解してもらえなかった」創業当初の悩み

シェアダインは法人向けサービスの展開も進めている。2019年10月から、従業員向けの食事セミナーや出張料理サービスを合わせた「シェアダインウェルネス」を始め、大企業から医療法人まで導入が進んでいるという。

また、コロナ禍で在宅勤務が増えている中、社員同士のコミュニケーション不足を課題に感じている企業向けに、オンラインクッキングを通じた新たなサービスも始めた。

井出氏は「直近では新しい社内懇親会のカタチとして、300人規模でオンラインのクッキングイベントをプロデュースしました。イベント前に300人の各家庭に当日に使用する食材をお送りし、オンラインでシェフと一緒に料理を作るという仕組みです。まず1つ事例ができたので、これからパッケージとしてどんどん売り出していく考えです」と説明した。

今後の展開について、井出氏はこう語る。「私と共同代表の飯田のように、家庭の食卓に悩みを抱える人は多いと思います。ですが、設立直後、シェアダインのサービスは理解してもらえませんでした。家庭の食卓はまだまだ『女性が考えるべき』といった風潮があり、そもそも話を聞いてもらえないということもありました。だからこそ、そのような悩みを解決策として『出張シェフ』というサービスを当たり前にしていきたい。社会課題として認知が進むようにしっかりと啓発活動も行っていきたいと考えています」。

関連記事
料理を学びたい人向けミールキット宅配「シェフレピ」がレシピと動画のみ版「#シェフレピアーカイブ」を期間限定で提供
低糖質・高タンパクの冷凍弁当宅配「ゴーフード」が総額6000万円のプレシリーズA調達
複数デリバリー・テイクアウトサービスからの注文を一元管理できる飲食店向けSaaS「CAMEL」のtacomsが資金調達

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:シェアダイン食事レストラン

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。