Khan AcademyやCourseraなどは、本格的な高等教育を民主化しようとしているが、趣味の世界にも従来の対面型の教育をソフトウェアによってディスラプトすべき(あるいはより強化すべき)分野は数知れず多い。
音楽、とりわけ初心者レベルの音楽も、その一つだ。クリエイティブが売りもののニューヨークの広告代理店BBHからスピンアウトしたPlayground Sessionsが今日(米国時間2/19)、新しいピアノの教え方をローンチした。ユーザはMIDIのキーボードを使い、ビデオで示されるお手本を見て(聴いて)演奏し、するとソフトウェアが即座に講評をフィードバックする。Webサービスではなくデスクトップアプリケーションなので、まずそれをPlayground SessionsのWebサイトからダウンロードする。タブレット用のアプリケーションも、もうすぐ出る。
私は20年以上ピアノを弾いているし、コンクールに出たこともあるが、でも私にピアノを教えたのは、とっても厳しいロシア人ピアノ教師だった(今ではそのことを、とてもありがたく思っている)。
ショパンの「革命」エチュードを自分一人で弾けるようになるのは難しいだろうが、Playground Sessionsの対象は本当の初心者レベルで、個人教師に1時間40〜60ドル以上も払うレベルではなく、バッハのパルティータではなくポップスを弾きたい人だ。
というと、だいたい想像つくと思う。まず、いくつかの初心者向けチュートリアルがあって、コード進行とか、音符や調号の意味など、音楽の基礎的な概念を学ぶ。チュートリアルをデザインしたのは、ニューヨーク大学の音楽教師Alex Nessだ。
それから対話的な楽譜とビデオによるレッスンで、ケイティ・ペリーの“ファイアーワーク”とか、デヴィッド・ゲッタの“ウィズアウト・ユー”などの弾き方を学ぶ。曲はiTunesみたいなストアで5ドル99セントぐらいで売っている。
協同ファウンダのChris Vanceの説では、“すぐに脱落する人が多いのは、楽しくないからだ。画一的に押しつけられる課題曲。それの、自分のへたくそなピアノ演奏を聴いても、モチベーションは上がらない。Playground Sessionsがやろうとしているのは、従来の教え方の欠点…自分の好きな曲を選べない、自分の持ち曲だという感覚を持てない…を克服することだ”。
Playground Sessionsでは、ユーザが自分が弾きたい曲を選び、MIDIキーボードでそれを弾き、どれだけ正しく弾けたかというフィードバックをもらう。また、前回に比べてどれだけ上手になったか、も指摘してくれるし、現状で問題のある箇所も教えてくれる。
Playground Sessionsのレッスンは1年制と3か月制があり、それぞれ料金は月額9ドル99セントと14ドル99セントだ。
Playground Sessionsは、アドバイザーとしてクインシー・ジョーンズやDavid Sidesと契約している。前者はマイケル・ジャクソンやフランク・シナトラを手がけたこともある大物プロデューサー、後者は今YouTubeで人気の、ポップスをピアノで即興アレンジ〜演奏する名人だ*。〔*: YouTube上の彼のビデオにはPlayground Sessionsの広告が入る。〕
BBHのパイロット部門であるZAGやVance自身、それに匿名のエンジェルたちが同社に投資している。ZAGは、少なくとも100万ドルは出したらしい。エンジェルたちによるシードラウンドは、9月だった。
Playground Sessionsのようなピアノレッスンサービスはほかにもあるが、でも全体としてはとても若い市場だ。JoyTunesなんかはタブレットを使い、MIDIキーボードは不要だ。ただしタブレットタイプは、どっちかというと、子ども向けのようだ。ギターのお勉強サービスも、TechCrunch Disruptで決勝に残ったIncident、iPhoneをギター本体に接続するgTar、ギター教習アプリWildChords(会社はOvelin)など、いろいろとある。