合成麻薬中毒症をバーチャル治療で治すBicycle Health

2017年にローンチした合成麻薬オピオイドによる疾患を治療するスタートアップBicycle Healthは、創業者のAnkit Gupta(アンキット・グプタ)氏によると、近くそのサービスを米国のほぼ半分の州で展開する。

グプタ氏が過去に創業したPulse Newsは2013年にLinkedInに買収されたあと、同氏はLinkedInがマイクロソフトに買収された2016年に同社を去り、もっと有意義なことをしたいと考えていた。同氏は「合成麻薬の中毒という流行病を治すもっと良い方法を見つけたい」という考えにたどり着いた。同氏がLinkedInを去った年に、4万2000名あまりの死者の死因が合成麻薬の中毒だった。米国保険福祉省(HHS)のデータによると、2018年には過剰摂取による死者が4万7000名を超えた。

そしてこの問題は、解決に向かっていない。Bicycle Healthが集めた統計によると、9200万人の米国人に合成麻薬中毒になるリスクがあり、200万人が中毒と診断されている。

最初同社はカリフォルニア州レッドウッドシティのクリニックを拠点としていたが、新型コロナウイルスのパンデミックで医療施設が予防のための守りの姿勢に入ったため、Bicycle Healthはバーチャル治療に切り換えた。

HHSの新たな規制で、これまで患者本人に直接施療されていた治療や薬のうち、可能なものはリモートで交付できるようになった。この変更によってリモートケアサービスが爆発的に成長し、Bicycle Healthのような企業が我先にとその波に乗った。

同社は現在、18の州で治療を提供しており、2021年の第1四半期にはそれを25の州に拡大する予定だ。この成長を支えているのが個人および法人の多くの投資家で、彼らはSignalFireがリードするBicycle Healthのシードラウンドに参加した。

同社の調達額はほぼ550万ドル(約5億6900万円)に達し、投資家にはSignalFireのほかにHustle FundやRomulus Capital、そしてJeff Weiner(ジェフ・ウェイナー)氏などの個人投資家も含まれる。ウェイナ氏は以前、LinkedInのCEOを務めていた人物だ。そのほかの個人投資家は、Virta Healthの創業者Sami Inkinen(サミ・インキネン)氏、Iora Healthの創業者Rushika Fernandopulle(ラシカ・フェルナンドプルル)氏、そしてJohn Simon(ジョン・サイモン)氏だ。サイモン氏はGeneral Catalystの創業者だが、投資は彼のGreenlight Fundから行われた。

Bicycle Healthは治療としてブプレノルフィンの処方のうほか、指導員のチームが依存症の治療とそれに伴う行動的および精神的な健康問題への対策を提供している。現在は3名の健康指導員が同社のおよそ2000名の患者を担当し、またその3名を12名の臨床専門医が支えている。治療は同社のモバイルアプリから提供され、定期的な訪問診療により、患者の回復状態をチェックしている。

同社は処方薬のディスカウンターGoodRxを利用して、保険のない患者の負担を軽くしている。Gupta氏によるとBicycle Healthは今後、地方や全国規模のヘルスケアプロバイダーと協力して、治療費の患者負担ぶんのさらなる削減を目指していく。「患者の負担を軽減するありとあらゆる方法を見つけていきたい」とグプタ氏。

同氏によると、同社の目標は「患者を手詰まりの状態に放置するのではなく、このような業態が確実に、人が変わることを助けていけるようにすることだ」という。同氏がそれまでいたソフトウェア業界は、何でも速いことと、何かを壊して新しいものを創造することが尊ばれるが、ヘルスケアではそれが通用しないと同氏は悟った。「速いことと壊すことはヘルスケアにとって間違った考え方だ。安全な場所を築くことが第一だ。法的に安全という意味ではなくて、そこでは患者が確実にお世話をしてもらえる、という意味の安全だ」。

関連記事:脳内チップでオピオイド依存と闘う米国初の臨床試験が始まる

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Bicycle Health
[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。