咳を監視するAIに新型コロナの早期感染警報システムの期待

無症状病原体保有者が新型コロナウイルスの感染拡大に大きく関わっているわけだが、症状のない人をどうやって見分けて隔離すればよいのか、どのように検査を受けさせたらよいのだろうか?感染初期の可能性が高い人を、その咳の音に潜む微妙ながら確かなパターンから見分けられる(MIT News記事)ことが、MITの研究でわかった。これには、強く求められているウイルスの早期警告システムの実現につながる可能性がある。

人の咳の音にはいろいろな意味が含まれていることを、医師たちは昔から知っていた。そこで肺炎、喘息、さらには神経筋疾患などの症状を検出するためのAIモデルが作られた。どれも咳の仕方に違いがある。

パンデミック以前、研究者Brian Subirana(ブライアン・サビラナ)氏は、咳はアルツハイマーの予測にも役立つことを指摘していた。これはちょうど1週間前にIBMが発表した研究結果(The Lancet記事)と重なる。最近になってサビラナ氏は、これほど小さなものから、これほどたくさんのことがわかる能力がAIにあるのなら、新型コロナウイルスもわかるのではないかと考えた。実際、同じことを考えた人は他にもいる

彼とその研究チームは、人々に咳を提供してもらうためのサイトを立ち上げ、「我々が知る限り最大の咳の研究用データセット」を作り上げた。彼らは数千件のサンプルを使ってAIモデルのトレーニングを行い、その論文をIEEE(米電気電子技術者協会)の「オープンジャーナル」で公開している。

このモデルは音の強さや調子、肺と呼吸器の能力、筋肉の衰えから微妙なパターンの検出に成功したようで、無症状病原体保有者の100%、症状のある感染者の98.5%を特定できるまでになった。特異度はそれぞれ8%と94%。つまり、偽陽性と偽陰性の数が多くないことを示している。

「人が立てる音が、新型コロナウイルスに感染すると、無症状であっても変わることをこれが示していると私たちは考えました」とスビラナ氏は、この驚きの発見について語った。だが、このシステムは不健康な咳の検出を得意とするものの、症状はあるが根底の原因が不明な人の診断ツールとして使うべきではないと彼は警告する。

この点について、私はスビラナ氏に詳しい説明を求めた。

「このツールは、新型コロナウイルス感染者とそうでない人ととの区別に役立つ特徴を検出するものです」と彼は電子メールで述べている。「これまでの研究では、他の症状も検出できることがわかっています。さまざまな症状を区別できるシステムを開発することも可能でしょうが、私たちの狙いは、その他の症状と新型コロナウイルスとを区別することにあります」。

統計学を重んじる人なら、驚くほど高い成功率には危うさを感じるだろう。機械学習モデルはさまざまな分野で高い能力を発揮するが、100%という成功率はそう聞くものではない。別の見方をすれば、たまたまよい結果が出ただけなのかも知れない。当然、この発見は他のデータセットで検証し、他の研究者によって審査される必要がある。だが同時に、新型コロナ感染者の咳には、コンピュータの聴覚システムで簡単に、ほぼ確実に聞き分けられる手がかりが含まれているという可能性もある。

研究チームは現在、さまざま病院と協力して多様なデータセットの構築を進めている。さらに民間企業とアプリを共同開発し、米食品医薬品局の認可が取得し次第、このツールを広く配布する予定だ。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:新型コロナウイルス

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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