多様性、公平性、機会均等を実現するための初心者向けガイド

米国でミネアポリスの警察がGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏を殺害し、それに続く人種的正義の蜂起が起きた後、テック業界の多くの人々が自社では黒人やラテン系の人々の地位が低いにもかかわらず、「Black Lives Matter」と声高に叫んでいた。一部の企業の「Black Lives Matter」宣言は、トランプ氏に対する各社のスタンスや法執行機関への各社技術の販売とは対照的に、そういう姿勢を見せているだけであると感じた。

それでも、この動きはテック業界における多様性(ダイバーシティー)、機会均等(インクルージョン)、公平性(エクイティー)への関心の高まりにつながっている。もしあなたが「黒人や褐色の人材はどこで見つけられるのか」とか「黒人やラテン系の人材を見つけることができれば投資したい!」と思っているのであれば、この記事は参考になるだろう。

以下では、この分野で活動している主要な組織や、テクノロジーにおける多様性、公平性、インクルージョンの分野でよく使われる用語集を紹介しておく。

データ

  • 大手テック企業の従業員比率は白人男性が圧倒的に多い。例えばFacebookは、黒人がわずか3.9%、ラテン系が6.3%、女性が37%だ。
  • 2018年に女性起業家が投資を受けたのは米国のベンチャーキャピタル資金のわずか2.2%だった。
  • 米国のVCファームの意思決定者のうち、女性は10%に満たない。
  • マッキンゼーの2020年レポートによると、エグゼクティブチームの性別が多様な上位4分の1の企業は、下位4分の1に含まれる企業よりも平均以上の利益を上げている可能性が25%高い。
  • マッキンゼーによると、民族的・文化的多様性で上位4分の1に入る企業は、収益性で下位4分の1に入る企業を36%上回っている。
  • Digital Undividedによると、ラテン系の女性が女性主導のスタートアップ企業の2%未満を占めている。
  • Digital Undividedによると2009年以降、黒人女性はベンチャー企業からの資金調達の0.06%しか受けていない。
  • Hiredによると、白人男性がテック業界で稼ぐ1ドルに対して、黒人女性が稼ぐのは79セント。

用語集

ここでは多様性、公平性、機会均等について議論する際によく使われる用語を紹介しておく。

  • Ableism(エイブリーズム:健常者を優遇する差別。
  • Accomplice(共犯者:BIPOC、女性、障害者などに関連して、自分の特権を使って積極的に変化を主張する人。例としては、職場で人種差別を訴える白人が挙げらる。
  • Ally(同調者:共犯者のより受動的なバージョン。同調者の例としては、大義は支援しているが自分自身を危険にさらしたくない人が挙げられる。
  • Anti-racist(人種差別反対主義者:米国の人種差別政策の学者であるIbram X. Kendi(イブラム・X・ケンディ)氏によると「人種差別反対主義者であるということは、どの人種集団に対しても、行動的に間違っていたり、正しかったり、劣っていたり、優れていたりするものは何もないと考えることです。人種差別反対主義者が個人の行動を肯定的に見たり否定的に見たりするときはいつでも、次のような点を注視する。個人が肯定的、あるいは否定的に行動しているときは、全人種を代表しているわけではない。人種差別反対主義者になることは、行動を非人種化することであり、刺青(タトゥー)などに対する偏見などもすべて取り除くことです」。
  • BIPOC:黒人(Black)、先住民(Indigenous)、有色人種(People of Color)の略、この用語は、米国の黒人(奴隷)と先住民(大量虐殺)といった特有の過去における経験と困難を踏まえずに、「有色人種」という言葉の代わりに使われる。
  • Cisgender(シスジェンダー:性別が出生時に指定された性別と一致する人。
  • Culture fit(カルチャーフィット:職場で同じ目標や熱意を持てること。
  • Diversity report(ダイバーシティレポート:テック企業が従業員の人口構成を示す年に一度の報告書。
  • Equality(平等):差別の構造的障壁に関係なく、すべての人を同じように扱うこと。
  • Equity(公平性):制度的な差別やその他の構造的な障壁を考慮した、公平公正な方法で人々を扱うこと。
  • Gender nonconforming(ジェンダー・ノンコンフォーム):特定の性別を認めない人々。
  • Imposter syndrome(インポスター症候群:個人が自分の価値や業績に疑いを持ち、自分を過小評価してしまう傾向。
  • Intersectionality(インターセクショナリティ):人種、性別、階級、性的指向など複数の要因によって、人々がさまざまな差別に直面するという概念。女性や有色人種のトランスジェンダーの人々にとっては、人種差別、性差別、同性愛嫌悪、トランスフォビア(性同一性障害やトランスジェンダーに対する嫌悪)といったなどが該当するが、個別の問題に分けて考えることが難しい。
  • Microaggression(微小な攻撃):特定の人種、性別、セクシュアリティ、またはその他の特徴についての根底にある偏見によって生まれた、何気ないコメント、行動、行動のこと。典型的な例としては、黒人に対して「あなたはとても聡明だ!」とか「あなたは私が知っている中で最も白人的な黒人だ!」などと言うことが挙げられる。前者は、黒人が聡明であることが珍しいことを暗示し、後者は、黒人の行動が社会の固定観念に合わないことを暗示している。
  • Performative(パフォーマティブ):行動を起こさずに発言をすること。
  • Pipeline problem(パイプライン問題):テクノロジーの多様性がないのは、テクノロジーに興味を持つ黒人やラテン系の人々が少なすぎるためだという誤解。
  • Transgender(トランスジェンダー):出生時に決められた性別と性自認が一致しない人。
  • Unconscious bias(無意識のバイアス):暗黙のバイアスとも呼ばれ、特定のグループについて人々が持っている根底にある信念のことで固定観念を原動力とする。しかし、長年にわたり、これらのバイアスはすべて無意識のものではないと主張する人もいる。
  • White privilege(白人の特権):社会の中で白人であるという理由だけで人々が持つ利点。詳細はこちら(TEACHING TOLERANCE記事)。
  • Woke(覚醒):社会における社会正義や人種的正義の問題を認識していること。

多様性、機会均等、公平性の背景

多様性、機会均等、公平性とは、黒人や褐色人種の雇用や採用だけを意味するものではない。これは、ベンチャーキャピタルやギグエコノミーを含むテック業界のあらゆる側面に影響を与えるもので、労働者の多くは黒人、先住民、または有色人種である。

一般的には、スタートアップの多様性と機会均等への取り組みには、遅れるよりも早く着手したほうがいいというのが常識だ。そして「すぐに」というのは「いますぐ」という意味だ。

以下に、この分野で活動している組織の概要を紹介する。採用活動の強化、無意識のバイアスや同調関係のトレーニングの実施、メンターシップの模索、資金調達、ほかのギグワーカーとのつながりなど必要な情報が見つかるはずだ。

画像クレジット:TechCrunch

このガイドは包括的なものではないが、どこから始めればいいかわからない読者のための出発点となるように設計されている。次のステップとして、あなたの興味を引く上記の組織のいずれかに連絡を取ることをお勧めする。

関連記事
The future of diversity and inclusion in tech(未訳記事)
A diversity and inclusion playbook(未訳記事)

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。