大阪大学は3月16日、薬が効かない薬剤耐性菌を画像で判別できることを明らかにした。顕微鏡画像と深層学習により、耐性の獲得による形態の変化を検知し、さらにその特徴に寄与する遺伝子の紐付けにも成功した。薬剤耐性化の過程での細菌の形態変化、遺伝子や耐性化因子の変化が、機械学習によって複合的に理解できるようになるという。
抗菌薬に長い間さらされることで耐性を獲得した薬剤耐性菌による感染症が問題になっている。薬剤耐性菌が出現するメカニズムについては盛んに研究されているものの、耐性化の抑制に欠かせない総合的な理解は進んでいない。大阪大学産業科学研究所の西野美都子准教授、青木工太特任准教授、西野邦彦教授らによる研究グループは、複数の薬が効かなくなる多剤耐性に関する研究を行っており、その過程で、耐性を獲得した細胞は遺伝子だけでなく形も変化させていることを発見した。そこで細菌の顕微鏡画像と深層学習を用いて形態からの薬剤耐性菌・非耐性菌の判別を試みた。
研究グループは、薬剤耐性菌であるエノキサシンを用いて、急速冷凍固定法で凍結して電子顕微鏡用のサンプルを作り、細菌の細胞内部構造が観察できるようにした。これを1万枚以上撮影し、深層学習で判別したところ、90%以上の正解率で耐性菌と非耐性菌の判別ができた。Grad-CAM(勾配加重クラス活性化マッピング)法で耐性菌の形態学的特徴を可視化すると、外膜領域に注目領域が集中していて、目視の所見と一致した。さらに、抽出された画像的特徴量と遺伝子発現データとの相関を計算すると、外膜を構成するリポタンパク質など、膜の構成に関わる遺伝子との高い相関が認められた。
顔認証など深層学習による画像判別技術は発展しているものの、微生物(肉眼では見ることのできない生物)、特に薬剤耐性菌を対象にした研究は、ほとんど例がないという。将来的には、細菌の形態から薬剤耐性能を自動的に予測する技術の開発につながることが期待されると研究グループは話している。