「オン」と「オフ」など、何らかの状態を示すスイッチとして利用できるIoTデバイスは、身の回りでもときどき見られるようになってきている。3月18日にオープンしたランドロイドカフェに採用されている店員呼び出し用デバイス「noodoe」なんかもその一例だろう。
3月23日にソニックスが発表した「FlipCast(フリップキャスト)」も“ひっくり返す”ことでオン・オフや満室・空室などの情報を通知するIoTデバイスだ。FlipCastは2択でさまざまな情報を通知できる汎用型デバイスとして、同日より法人向けの販売をスタートした。
ソニックスは2010年創業で、当初は法人向けにスマートフォンの導入・活用を推進するコンサルティングと開発を行っていた。「大手ファストファッションメーカーやタクシー会社、物流企業など、いずれもスマホ活用ではそれぞれの業界で一歩先を行く企業が取引先だ」とソニックス代表取締役社長の吉澤武則氏は言う。
また、Androidアプリやサイトのテストを150機種以上のさまざまな端末でできるクラウドサービス「Scirocco Cloud」も提供。データセンターに約300台の実機をマウントし、テストを可能にしているという。
創業以来7年間、モバイルに特化してソリューションを提供してきたソニックス。なぜ今回IoTへシフトした製品を出すことにしたのか。「IoTが社会のトレンドになる中で、モバイルは広義のIoTの一部だと2016年初から意識していた」と吉澤氏は話す。また、取引のあった大手企業から、先端技術を活用した開発を依頼されていたことも、IoTソリューションへの進出の背景にあると吉澤氏は言う。
「日本の最大手メーカーや社会インフラ系企業、システム・ソフト開発などの大手数社から、HoloLensやウェアラブルデバイスなどのVRツール、ドローン、360度カメラなどの活用や、AIとビッグデータに関する取り組みを依頼されてきた。各企業が先端技術を実用化し導入したい、というニーズを持つ中で、まずはアナログからタブレットなどのモバイルへの移行が進み、さらにそこからセンサーやIoTの分野の開発にも及んで、2016年からはIoTデバイス開発にも取り組んでいる」(吉澤氏)
そして2016年8月には、以前からIoT分野で協業してきたインディゴと共同でFlipCastを特許出願した。
FlipCastには正直なところ、“コレ!”というとがった機能があるわけではないのだが、太陽光で作動するので電池交換が不要であることと、オン・オフ以外にも何にでも使える汎用性がポイントだという。吉澤氏は「IoTデバイスは保守性、特に電池を定期的に交換する必要があるという課題を抱えていた。これを太陽光発電を利用し、Bluetooth Low Energyなど省電力の通信規格やセンサーを採用することで解決した」と説明する。
FlipCastには3軸加速度センサーが備わっている。吉澤氏によれば「傾斜センサーだけではできることが限られている。VRデバイスなどの活用経験も生かし、3軸センサーの採用となった。ボタンに変わるシンプルで新しいユーザーエクスペリエンスを提供したい」ということだ。
発表された筐体は50mm×24mm×7.6mmの小さな板状のものだが「デザインについては、サイコロ型など、今後たくさん出てくる予定だ。人の“意思”や“状態”を伝える汎用型デバイスとしてFlipCastを提供し、通知を受けたい“状態”に合わせて顧客ごとにアプリを開発していく。また顧客とサービスを一緒につくる、ということもあり得るだろう」と吉澤氏は話している。
FlipCastの活用方法について、吉澤氏はこんな例を挙げる。「在席・離席を表示する場合、今までならグループウェアを開いて状態を変更して、と何ステップかの手間がかかっていたところを、デスクの上にあるFlipCastの筐体を倒すだけでステータスを変えることができる。複数のフロアがある大企業では、出向いてから相手がいないことが分かる、ということがなくなるのは大きなコストカットになる。また、物流業なら、集荷の有無を客先へ行ってから確認するのでなく、マグネット式のFlipCastであらかじめ分かるのも便利だろう」(吉澤氏)
「すでに数社から引き合いが来ている」と言う吉澤氏は、FlipCastについて「2017年に10プロジェクトを提供し、5000万円から1億円の売上を目標としたい」と話している。