建設テックへ興味を示す投資家の勢いが増している

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建設産業は、最もセクシーな産業とは言えないが、注目すべきは、この業界は2018年に注目を集めただけではなく、投資家たちから多くの資金を引き寄せたことだ。

歴史的に見た場合、この数兆ドル規模の産業セクターは、新しい技術の採用には時間がかかっていた。これは業者たちが、プロジェクト管理に対して全く互換性のない様々なシステムや、家を建設するための旧来の手法、そしてスマートではない材料などに頼っていたためである。

しかし、スタートアップたちの波が、このセクターの中の機会を利用しようと押し寄せている。プロセスの合理化と効率性の向上を目的とした、ソフトウェアソリューションを開発する企業の数は、ますます増えてきている。プレハブ建設は、その世界の革新によって進化してきたし、3Dプリント技術は家を数日で作り上げることができる

投資家たちも注目している。Crunchbaseのデータによれば、米国を拠点とする建設テックスタートアップの調達額は、2017年の7億3100万ドルに比べて、324%増加した31億ドル近くになっている。2018年の数字は印象的なものだが、昨年は大きなラウンドがいくつか行われたために、結果が歪められていることに注意しておくことが重要だ。Menlo Parkに拠点を置くKaterraは、昨年1月のシリーズDラウンドで、1社だけで8億6500万ドルを調達している。これにはSoftBank Vision FundRiverPark VenturesFour Score Capitalが参加している。そして、スマートガラス会社Viewは、11月に11億ドルのシリーズHを終了している。また、クラウドベースの施工管理アプリケーションの(ユニコーン)プロバイダーであるProcoreは、12月にTiger Global Managementから、シリーズHラウンドで、7500万ドルを調達した

最初に挙げた2つの大きなラウンドがなければ、建設セクターが2018年に調達したのは11億3500万ドルだけとなる。これは2017年の調達額にくらべると、55%増加という控えめな数字となる。

業界はM&Aに注目し続けている。大規模なソフトウェア会社は、自社内で車輪の再発明をしようとするよりも、この分野の企業を買収する方が理にかなっていると考え始めている。例えば、昨年の第4四半期に、3次元デザインソフトウェアのプロバイダであるAutodeskは、この分野のクラウドベースの2つのソフトウェアスタートアップを買収する計画を発表した:PlanGridは8億7500万ドル、BuildingConnectedは2億7500万ドルで買収する計画だ。上場ソフトウェア開発企業Trinbleは、昨年7月に施工管理ソフトウェアスタートアップのViewpointを、12億ドルで買収した。

Greylock PartnersのパートナーであるJerry Chenは、この分野に対して強気であり、2019年にはより多くの資金調達と買収が見込まれると予想している。彼の会社は、サンフランシスコに本拠を置くRhumbixに投資した。この会社はその建設作業者たちのためにデザインされたモバイルプラットフォームを成長させるために、2860万ドルを調達した。顧客とユーザーの観点からみて同社にとっては「記録的な年」になった、とChenは語っている。

「2018年は建設テック業界の変革点でした」と、ChenはCrunchbase Newsに語った。「大規模なベンチャー投資と、老舗企業による戦略的M&Aが続いています…そして、2019年には他の大手エンタープライズソフトウェア会社たちが、建設業界に対して、より多くの投資を始めるところを目にすることになるでしょう」。

シカゴに拠点を置く建設テック、IngeniousIOの創業者であるNick Carterは、こうした大きな数字にもかかわらず、真のスタートアップの成長という意味ではまだ先は長いと考えている。その理由の一部は、ある1つのことに由来している:この分野に対してテック創業者や投資家たちが自信を持っていないからだ。

「この分野を理解できている人は多くはありません」と彼は言う。「学習曲線は厳しいものです。企業たちは何百年もの間同じやりかたで建物を建設してきましたが、誰もがその複雑さを理解しているわけではありません」。

また建設業の世界に無秩序な部分が多いという事実も要因の一つだと、Carterは考えている。

「市場の純粋な規模大きさのおかげで、最終的にはお金が建設セクターへと流れ込むことでしょう」と彼はCrunchbase Newsに語った。「そこにはお金があります。あらゆる方向からこの分野に参入しようとしているVCがいますが、彼らは適切な機会を探しているのです。この分野には、たくさんのスタートアップがいるわけではありません」。

建設もまた景気の周期に敏感なビジネスであり、一般的には潜在的な景気後退は投資家を一時的に思いとどまらせるのではないかと、考えなければならない。しかしCarterにとってみれば、景気後退は彼の会社が構築しようとしているような製品の必要性を、さらに生み出すだけである。IngeniousIOのプラットフォームは、人工知能を使用して、Carterが「統合データ駆動アプローチ」と表現する手法を取り込み、建設プロジェクトのプロセスを再定義する。

「予算が厳しいほど、私たちのような会社がより良い仕事をすることができるのです」と彼は言う。「世の中の企業は、管理、拡張、導入に多大なサポートを必要とする、古いアプリケーションの無駄な部分を、この先抱えることはしないでしょう」。

建設業界は、他のようにTwitterで話題になるようなセクターではないかもしれないが、新しい機会を求めて参入しようとしている投資家たちにとって、とてつもない大きさと可能性を秘めている場所なのだ。

画像クレジット: Bill Oxford (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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