[筆者: Navin Chaddha]
編集者注記: Navin ChaddhaはMayfieldの専務取締役、同社は起業の初期段階向けのベンチャーキャピタル企業だ。同社が今支えている企業には、Gigya、Elastica、Lyft、MapR、Poshmarkなどがある。
2014年も後半に入り、ビッグデータはいよいよメインストリームになってきた。たくさんの大型本、多様な業界分野への展開、消費者アプリケーション、そして巨額な投資。私はVCの世界に45年もいて、その間、主導的技術の変遷を何度も見てきた。PC時代の勃興、クライアント/サーバコンピューティングへの移行、それからWebベースのコンピューティング、さらにクラウドとSaaSモデルの登場…そしてどの段階でも、企業がスタートアップからその分野のリーダーに育っていくときの、一定のパターンを私は見てきた。
では、ビッグデータに関しては、長寿な企業を作っていくために何が必要だろうか:
1. プラットホームからエコシステムへ成長脱皮せよ
ひとつのテクノロジプラットホームが確立し定着したことの証(あかし)は、そのまわりにエコシステムが急速に育っていることだ。たとえばSaaSに関してはSalesforceが早々と巨人に育ったが、それはそのエコシステムが大きく成長したためだ。ビッグデータも、その点は同じだ。
今プラットホームからエコシステムへ移行しつつある好調なビッグデータ企業のひとつがMapRだ。同社のプロダクトはHadoopの一(いち)ディストリビューションにすぎないが、オープンソースの利点(コミュニティによるイノベーション、ポータビリティ、そして柔軟性)と、独自に強化したアーキテクチャを結びつけて、企業が安心して採用できる信頼性とセキュリティとパフォーマンスを提供している。
MapRのエコシステムはHadoopの盛大活発なオープンソースのコミュニティと、MapR App Galleryで急速に増殖しているパートナーたちのソリューションが合わさったものだ。このエコシステムの中で企業顧客は、自分たちのビッグデータ利用システムとそのためのユーティリティやアプリケーションを、容易に拡張ないし新規に実装できる。
未来のリーダー格を匂わせるもうひとつの例がMongoDBだ。オープンソースのNoSQLでは指導的な企業だが、今では多くの企業がさまざまなアプリケーションで利用している。MongoDBでは、複数の業界にわたるさまざまなパートナーたちにより、強力なエコシステムが育ちつつある。
2. 誰も手をつけない面倒で困難な問題を解決せよ
これは、ビッグデータの世界の中でも、あまり派手な話題ではない。しかしそれでも、ビッグデータ企業の多くがこの種の仕事に取り組むことで、成長してきたはずだ。クライアント/サーバの時代にはデータ統合化のパイオニアInformaticaが、フォーマットが雑多に異なるデータを統合するという、面倒でダーティーな仕事でトップに登りつめ、8年間ぶっ通しで、Gartner Data Integration Magic Quadrantのリーダーの座を維持した。
ビッグデータの世界で注目に値するのが、Trifactaだ。同社は、生データを技術的スキルのないアナリストでも理解でき、何らかのアクションに結びつけることのできる形へと、加工している。
3. ビッグデータのビジネスインテリジェンスはデータだけでなくインサイトを提供せよ
クライアント/サーバの時代にはBusiness Objectsなどの企業が、企業の役員たちに、彼らの力となるようなインサイトを提供して大きくなった。ビッグデータにおいても、Platforaのような企業に、同様の動きが見られる。Hadoopをエンジンとする同社は、さまざまなインサイトを視覚的に、そして継続的に提供している。〔*: insight,そのデータに何が見えるのか、そのデータから何が言えるのか、という、データの深い本質部分のこと。データそのものを物理層とすれば、インサイトはデータのアプリケーション層とも言える。〕
4. 各専門分野の知識や経験をプロダクトに埋め込め
さまざまな業界分野や技術分野の貴重な専門知識(domain expertise)を、ビッグデータの分析アプリケーションに必ず生かすこと。そうすると、その提供物は、顧客から重要視され、見ずに捨てられることがない。SAPがソフトウェア業界の巨人になったのは、それぞれ業界分野の異なるクライアント企業に対して、この手をフルに活用したからだ。
ビッグデータ分析に各業界分野等の専門知識を導入して成功しているPalantirなどの企業は、不正行為対策やサイバーセキュリティなど具体的なユースケースや、防衛、保険、医療、法の執行など専門的業界分野にむけて、人間とマシンの合作によるソリューションを提供している。またSplunkなどは、マシンデータをインサイトに変換して顧客に提供している。
5. わかりやすいインタフェイスで顧客に喜ばれよ
顧客企業のIT部門や現業部門のユーザたちに、データと対話できるための、説得力の強いインタフェイスを与えよ。ユーザがそのアプリケーションとどのように対話するのかを理解し、分かりやすくて楽しいユーザ体験を築くための細部に注力せよ。たとえばDropboxが大きくなったのは、ファイル共有のためのシンプルでわかりやすい方法をユーザに提供したからであり、そのおかげで同社は今や、全世界のユーザ数が2億を超えている。
わかりやすいインタフェイスを提供しているビッグデータ企業のひとつが、Tableauだ。同社は企業ユーザにとって分かりやすく、そしてインサイトを取り出しやすいデータ視覚化を提供している。またElasticsearchは、高速でリッチな検索体験を提供しているオープンソースのソリューションだ。
そして次に来るものは?
もうひとつ注目すべきは、物のインターネットが、あらゆる種類の、そしてあらゆる形のデータをビッグデータの世界に放り込むことによって、業界を大きく変えていくことだ。今それは、サーモスタットや電話機やウォッチや水飲み用のグラスなどだが、明日は、今のわれわれが知らないありとあらゆるところから、データの奔流が訪れる。データの所有権やライフサイクルや摂取について、考え方が変わり、新しい企業が続々と生まれる。それは明日以降に訪れるイノベーションの大波であり、これまでありえなかったプロダクトやサービスが新しい企業から生まれていく。また既存のそれらも、形を変えられる。そういう次の時代の想像力と創造力の主人公が、一人々々のあなたなのだ。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))