これまで日本の携帯電話のエコシステムは高度に発達した無数のフィーチャーフォンのおかげで「ガラパゴス島」と揶揄されるような特異な状態にあった。それが最近ついにAndroidとiOSを中心とする方向に本格的に動き出した。日本人がこれまでモバイル・アプリとゲームに非常に高いレベルの支出を続けてきたことを考えると、世界のAndroidとiOSデベロッパーにとって見逃せない動きといえる。
たとえば、昨年秋、日本はアメリカを抜いてGoogle Playで「いちばん儲かっている市場」になった。
北京に本拠を置くモバイル・アプリの市場調査会社、App Annieが日本市場に関する詳しいレポートを発表した。この10年間日本は世界でも最高レベルに携帯電話が普及している地域であったにもかかわらず、皮肉にもスマートフォンへの転換の速度は比較的遅かった。2011年末のスマートフォン利用率はわずか23%にとどまった。
日本ではNTT、DoCoMo、Softbank、KDDIといったキャリヤの影響力が決定的に強い。他の国でもそうだが、キャリヤは配信されるコンテンツを全面的に管理し、収益の分配を受けている(Appleの30%ほどの高率ではないが)。これによりフリーミアム・タイプのビジネスモデルを持つモバイル・ソーシャルゲームのGREEやDeNAが、アメリカ市場より早く何十億ドルもの売上を誇る大企業に成長させた理由だ。
しかしこれも世界の他の地域でと同様、iPhoneがキャリヤの影響力を弱めつつある。NTT DoCoMoはiTunesストアを通じたコンテンツ販売をコントロールできないことをを嫌ってAppleと提携していない。重要な収益の柱を失うことを恐れているわけだ。その代わりにDoCoMoはむしろAndroidに集中し、ポータル、dmenuをプロモートしている。こにはインターネット・ベースのコンテンツに加えてビデオ、書籍、アプリなどの有料コンテンツを販売するdmarketが用意されている。
一方、KDDIとSoftbankはiPhoneを販売しており、DoCoMoからユーザーを奪うことに成功している。
こうした市場の力学から日本のスマートフォン市場の3分の2はAndroidで占められ、残りの3分の1がiPhoneとなっている。ただし売上高ではAppleのAppStoreがGoogle Playよりはるかに多い。しかしその差は世界の他の地域同様、縮まりつつある。
もう一つ日本市場の特徴は、外国企業の参入が極端に困難であることだ。トップの5社(すべて日本企業)が全市場の3分の1を占めている。フィーチャーフォンでの日本メーカーの成功はそのままスマートフォンにも持ち越されている。こと売上に関しては日本市場は日本企業のほぼ完全な独占といってよい。例外は韓国系のメッセージ・サービスNHN、フランスのモバイル・ゲーム・デベロッパー、Gameloft、それにAppleくらいのものだ。
売上をカテゴリー別にみると、他の国と同様やはりゲームが圧倒的なトップだ。アメリカでもゲームはトップだが、売上のシェアとしては59%と比較的少ない。
滞在時間ではゲームとソーシャル・ネットワーキングがトップだが、売上に関しては日本ではFacebookはトップ・アプリではない。トップはメッセージ・サービスのLineだ。このサービスは最近1億ユーザーの大台を達成した。現在のところ収入はステッカーやチャット用絵文字の販売によっている。このビジネスモデルで昨年1月から9月の間に383%の売上増を実現している。
Facebookの日本における売上は、主として広告によっているので、金額の推定は難しい。Appleはアプリ経由の広告売上に関する情報を発表していないのでアプリ・ダウンロードの順位から推定することも困難だ。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)