楽天の2017年Q2連結業績によれば、売上収益は前年同期比20.9%増の2280億円、営業利益は同8.6%増の282億円だった(国際会計基準)。
そのほか、今回の決算から読み取れるサマリーは以下の通りだ:
- 楽天が手がけるEC事業の流通総額は、国内外ともに増加。特に、近年減少傾向だった国内ECの営業利益が上昇に転じている。
- 楽天市場での買い物で最大7倍のポイントがもらえるという「スーパーポイントアッププログラム(SPU)」がEC事業における流通総額の成長を加速した。
- フリマアプリの「ラクマ」と「フリル」を合わせたC2Cビジネスも堅調。ラクマの流通総額は前年同期比で2.3倍に、一方のフリルは3.7倍に拡大している。
- 楽天のFintech部門では、楽天カードと楽天銀行が部門全体の成長を牽引した。楽天カードの売上収益は前年同期比17%増の398億円、楽天銀行は前年同期比11.4%増の186億円だった。
- 台湾での楽天カード会員数は、2017年6月に30万人を突破。
- 一方で、全体的に好調なFintech部門のなかで、売上収益が減少したのが楽天生命と楽天証券だった。
2014年に買収した「Viber」、楽天流の使い道
本決算のサマリーをお伝えしたところで、楽天傘下のコミュニケーションアプリ「Rakuten Viber」について取り上げて見たいと思う。
TechCrunch Japanの読者のなかには、紫色のアイコンが特徴のViberを利用したことがある人もいるだろう。実はこのアプリ、日本で普及する「LINE」よりも早くサービスを開始したアプリだ。(Viberのリリースは2010年10月で、LINEは2011年6月)。
ここで少し個人的な話しをすると、Viberが登場した当初、僕は大学生だった。当時、交際相手との長電話による通話料に悩んでいて、無料で電話できる(通話のクオリティは驚くほど低かったけど)Viberに感動したのを覚えている。
でも、そのうちに周りがみんなLINEを使い始め、僕もそれに合わせるかたちでLINEに移行した。
ぼくの中では完全にViberが「過去のアプリ」になっていた2014年、楽天はこのアプリを約900億円で買収している。それを受けて、「ECの楽天がなぜコミュニケーションアプリを買収したのか?」というトピックでメディアが取り上げたりもした。
でも、楽天はこのViberと主軸のEC事業とを結びつける使い道を見つけたようだ。
楽天の傘下となったViberは、つい先月の2017年7月にシリコンバレー出身のスタートアップChatterCommerceを買収している。ChatterCommerceが手がけるのは、「ShopChat」と呼ばれるショッピング機能が付いたキーボードアプリだ。
ShopChatは、WhatsApp、iMessage、Facebook Messengerなどのメッセージングアプリ上で利用できるキーボードアプリ。メッセージングアプリのなかに埋め込まれたこのキーボード上で、直接買い物ができることが最大の特徴だ。
この買収により、楽天はViberを単なるコミュニケーションアプリではなく、ショッピング・プラットフォームに進化させようとしている。
すでにViberにはShopChatのキーボードが搭載されていて、そこから楽天市場での買い物もできる。また、同社は2017年9月から楽天とViberのIDを統合することも発表した。
ショッピングプラットフォーム化を進めるときに問題になるのは、Viberが利用される地域では楽天市場の知名度が低いということだった。
そこで、楽天は世界的に有名なサッカーチーム「FCバルセロナ」とのパートナーシップを提携する。ViberをFCバルセロナ公式のコミュニケーションツールとすることで、Viber、ひいては楽天市場の知名度を上げることが狙いだ。
買収時に2億8000万人と発表されていたViberのユニークID数は、現在9億2000万人にまで拡大した。Viberが生み出した収益も、前年同期比で90.6%増と成長している。そのうち、コンテンツ売上は27%だ。
2014年の買収時点で、楽天がコミュニケーションアプリでショッピングするという構想をもっていたのかどうかは分からない。でも、チャットを様々なサービスのUIとして利用するという流れの中が誕生したおかげで、ViberとEC事業が上手くつながったと言えるのではないだろうか。