つい先日、経済産業省からキャッシュレス社会実現に向けた「キャッシュレスビジョン」が公開された。その中では「未来投資戦略2017」で設定したキャッシュレス決済比率40%という目標を前倒しし、将来的には世界最高水準の80%を目指していくという数値目標も掲げられている。
この目標を達成するためには「(注目されがちな)B2Cだけでなく、B2B向けの取り組みも行っていく必要がある」と話すのが、クラウドキャストで代表取締役を務める星川高志氏。クラウド経費精算サービス「Staple(ステイプル)」を提供する同社では、キャッシュレス化推進に向けて法人向けプリペイドカードを使った実証実験を始めた。
今回の実証実験ではスタートアップや中小企業向けに「Staple カード」を発行し、導入企業の社員が実店舗やオンライン店舗で会社経費として使用できる環境を提供する。プリペイドカードのため与信審査がなく、企業の実績や設立年数に関わらず発行できるのが特徴。特に法人向けクレジットカードを発行したい気持ちはあれど、与信審査などがネックとなって実現に至らなかった企業にとっては新たな選択肢となりそうだ。
特定サービスや小売店のみで利用できる一般的なプリペイドカードとは異なり、タクシーやカフェ、小売店など通常のクレジットカードが使用できるほとんどのシーンで利用できるという。
またStapleカードをクラウド経費精算サービスのStapleと組み合わせることで、管理者側と従業員側の経費精算業務を効率化する狙いもある。たとえば派遣社員や契約社員、アルバイトスタッフなどのメンバーにも発行できるので、全員にStapleカードを発行し、交通費の精算をキャッシュレスに、そしてその処理をクラウド上でスムーズに行うことも可能だ。
「(Staple上に)プリペイドカードの履歴がたまり、画面上からそのまま経費申請ができる。管理側も従業員側も手打ちで対応する必要がないし、使用金額や用途の確認も楽になる。また社員が立て替えた経費を精算する際の振り込み手数料なども一切必要ないため、バックオフィスのコスト削減にもつながる」(星川氏)
現在すでに複数の企業で試験的に導入しているが、従業員側からは新しい決済手段となり、経費申請業務を効率化できることに加え、企業に対する所属感や安心感が得られるという反応もあったそう。クラウドキャストには外国人の社員も多く、メンバーからは好評だという。
星川氏の話では実証実験はだいたい3ヶ月くらいの期間を考えていて、その期間内でユーザーの反応も見つつ予算申請の仕組みや精算フローの改善などに取り組む。ビジネスモデルの検証なども本格的な事業化を見据えて、進めていく方針だ。
「法人クレジットカードは利点が多いものの、今まではエスタブリッシュな企業などしか使えなかった。これを中小企業やベンチャーでも使えるように、そしてそこで働くすべてのスタッフが使えるような仕組みを作っていきたい」(星川氏)