物議を醸し出している顔認識ソフトウェアのメーカーであるClearview AIが、こちらも物議を醸し出している米国の政府機関ICE(移民・関税執行局)と新たな契約を結んだ。Clearviewはトランプ政権における厳しい移民政策の実施で強く批判されている国土安全保障省の下部組織に協力していることですでに知られている。新しい契約は両者の関係が継続していることを明確にしており、同社は、テクノロジー企業が連邦政府との契約を獲得するための収益性の高い取り組みに、一役買っているだけではない。
テクノロジー業界の監視役を自称するTech Inquiryが最初に見つけたその契約(Twitter投稿)は総額22万4000ドル(約2400万円)に上るが、契約内容は「Clearviewのライセンス」としか書かれていない。同社のソフトウェアサービスにアクセスするという意味だろう。同社の落札通知(米国総務局リリース)によると、資金の出どころはHomeland Security Investigations(HSI、国家安全保障捜査)となっているが、これはICE内部の部局でドラッグや人身売買を含む「国境を越えた犯罪行動」にフォーカスしている。入札に参加したのは4社だ。
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Clearviewは論争の的になっている。同社の謎めいた顔認識技術(The New York Times記事)では、クライアントが誰かの写真をアップロードすると、ソーシャルネットワークを含むオンラインソースからかき集めた大規模な写真データベースと照合する。人権グループは、Clearviewの技術をプライバシーの悪夢と呼んでいるが、人を調べることが仕事である法執行機関にとっては夢のような技術だ。
それまで無名に近かったClearviewは、2020年1月に全国紙の記事になって(The New York Times記事)からは、プライバシー保護団体や大手テクノロジー企業から絶えず批判されている。Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、Linkedin、Twitter(ツイッター)それにYouTubeなどは揃ってClearviewを批判し(Gizmodo記事)、自分たちのプラットフォームからデータを勝手に流用していることを非難した。一部の企業は、利用規約に違反しているとして停止命令の書簡を送った。
2020年5月にACLU(アメリカ自由人権協会)は、プライバシー侵害でClearviewを訴えていると発表した。訴訟ではイリノイ州のBiometric Information Privacy Act(生体認証情報私権法、BIPA)を同社に適用しているが、以前にはこの同じ法律で、イリノイ州住民がフェイスブックとの5億5000万ドル(約586億2500万円)の和解を引き出したこともある。
ACLUの上級常勤弁護士であるNathan Freed Wessler(ネイサン・フリード・ウェスラー)氏は、その訴訟について「Clearview AIのような企業は私たちのプライバシーをなきものにしてしまうため、止めさせなければならない」と述べている。
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