慢性のアレルギー患者は、説明されなくても季節性アレルギーや環境アレルギーの不快感をよく知っている。アレルギー注射についても、知っているかもしれない。それは、毎週または毎月診療所へ行って注射をしてもらう治療法だ。しかし、まだ知られていない治療法もある。あまり手間がかからないアレルギー滴剤だ。Y Combinatorの現在のコースを受講しているWyndlyは、アレルギー滴剤の普及を目指している。
耳鼻咽喉科の医師であるManan Shah(マナン・シャー)博士はパンデミック以前に、患者に診察を受けてもらい、アレルギーの誘因と戦う免疫システムを訓練するために、パーソナライズされたアレルギー滴剤を処方ししていた。新型コロナウイルス(COVID-19)が大流行して以降、シャー博士はアレルギーで悩む患者を遠隔医療で診療するようになった。それがうまくいったため、シャー博士と彼のいとこであるAakash Shah(アーカシュ・シャー)氏は、アイデアをY Combinatorに持ち込んだ。彼らのやり方がコロラド州デンバーで成功したことを話し、全国に広めたいと希望を述べた。
Wyndlyでは、シャー博士がアレルギーの検査と治療の両方を遠隔医療で行う。アレルギー滴剤は、アレルギー注射と違い自宅で施薬できる。Wyndlyが現在、猫や犬、チリダニ、花粉、木、芝生、雑草などが原因となる環境アレルギーの治療を対象としている。
「他の方法があることを知らない人がとても多い。ほとんどの人が、アレルギーの治療法として注射と、毎日、抗ヒスタミン剤を服用することしか知りません。うちではみんなにこんなにすばらしい、そして簡単便利な治療法があることを伝えています」とシャー博士はいう。
Wyndlyはまず、患者のアレルギーを評価する。患者は最近のアレルギー検査の結果をWyndlyに提出してもいいし、Wyndlyの患者が自宅でやる指さし検査を利用してもよい。その後、Wyndlyは患者のためそれぞれに合わせてアレルギー滴剤を作って患者の自宅に送る。滴剤は1日に1回、舌の下に5滴垂らす。シャー博士によると、滴剤を毎日6カ月間、滴下するとほとんどの患者の症状が軽くなるという。
Wyndlyの滴剤治療は1カ月99ドル(約1万400円)で、6カ月では合計594ドル(約6万2300円)になる。治療を受ければアレルギー検査は無料だが、Wyndlyの患者にならず、検査だけだと200ドル(約2万1000円)となる。
アレルギー滴剤治療は簡単だが、アレルギー注射と違い保険の対象にならない場合が多い。Wyndlyは、保険でカバーされた場合のアレルギー注射と関連治療での費用と同額程度にしたいという。
なお、このアレルギー滴剤はFDA(米食品医薬品局)の承認まだ下りていない。使っている薬剤はFDAがアレルギー注射で承認しているものと同様だが、それらの複合剤としての薬剤は未承認だという。
Wyndlyは将来的に、食べ物アレルギーも治療したいが、シャー博士によると、まだその安全性に関する十分なデータがないそうとのことだ。
「研究を進めて、食べ物アレルギーの分野でも安全性のコンセンサスに到達したいと考えています」とシャー博士はいう。
WyndlyはY Combinatorに在籍してから1カ月ほどで、現在、サービスを徐々に拡大している。医師とのパートナーシップを通じてWyndlyは全米38州でサービスを提供しているが、2022年末までに同社は50州すべてに進出したいと考えている。
カテゴリー:ヘルステック
タグ:Wyndly、遠隔医療、アレルギー
画像クレジット:Wyndly
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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hiroshi Iwatani)