産総研が地震計データからコロナ禍における人間活動の観測に成功、経済・余暇活動の縮小を可視化

産業技術総合研究所(産総研)は、首都圏に設置された地震計のデータから、新型コロナウイルス感染症が感染拡大した時期に人の社会活動が低下したことを明らかにした。これにより、地震計は地震動だけでなく、人間活動のモニタリングにも応用できることが示された。

産総研活断層・火山研究部門地震災害予測研究グループの二宮啓研究員と、九州大学地球資源システム工学部門の辻健教授、池田達紀助教による研究チームは、首都圏地震観測網の101台の地震計で得られた4年分のデータから新型コロナ発生後の変動を調べた。調査では、観測点ごとに振動の強さを示すパワースペクトル密度(PSD。Power Spectral Density)を計算した。それにより、次のことがわかった。

101台の地震計の設置場所と池袋の観測点(E.IKBM)

101台の地震計の設置場所と池袋の観測点(E.IKBM)

2020年4月、1回目の緊急事態宣言が出されたとき、PSDがもっとも大きく低下した。緊急事態制限が解除されると、平日のPSDは回復し始めたものの、日曜日はしばらく低いままだった。Go Toトラベルキャンペーンが始まって、平日、日曜日ともに例年の水準に戻った。第3波の到来で、日曜日のPSDは再び減少したが、2回目の緊急事態宣言時は、平日の日中のPSDは減少しなかった。そして2回目の緊急事態宣言が解除される前から、平日、日曜日ともにPSDが増加に転じた。

つまり、最初の緊急事態宣言の直後は、経済活動はすぐに回復したものの日曜日は余暇活動を控える人が多く、Go Toトラベル中も日曜日は多くの人が余暇活動を自粛していたと想像される。しかし2回目の緊急事態宣言時には、新規感染者数が減少したことからPSDが増加し、社会意識に変化が表れたと産総研では推測している。

地震計が観測する振動は、地震のような大きな揺れの他、風や海の波などの自然現象による振動や人の活動によるものもある。自然の振動は1秒に1回程度とゆっくりなのに対して、人間の活動に由来するものは1秒あたりの振動数が多いのが特徴だ。そのような人為的な振動は、地震観測の際には不要なノイズとして除去されるのだが、これを逆に活用しようという、今回のような研究も各方面で行われているとのこと。

人の活動由来の振動は、交通機関や工場などさまざまな要素が混在しているため、振動源の特定が難しい。また、曜日や季節による変動があるため、そうした要素の影響を取り除かなければ詳細なPSDの変化が掴めない。この研究でも、2017年4月から2019年3月までのデータで曜日と時間帯別にPSDの季節変動を計算し、それをコロナ禍の期間のデータから差し引いている。

ただ人為的な振動は局所的なものなので、狭い範囲を観測することで振動源が特定できる。産総研ではそれを応用して、「振動情報を用いた防犯システムや交通量調査など、人為的な振動を利用したモニタリングや物理探査」を進めるとしている。

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TechCrunch Japan

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