米国ロサンゼルスに本拠地を置くマインドフルネスと瞑想の事業を展開しているHeadspace(ヘッドスペース)は、のメンタルウェルネス界のリーダーの座をめぐるCalm(カーム)との競争が膠着状態となり、ポールポジションを奪おうと新たな資金調達に出た。
同社は、多数の投資家からエクイティー(第三者割当増資)とデット(融資)の形で9300万ドル(約102億円)の調達を決めた。これをもとに、マインドフルネスや瞑想の有効性に関するなんとも曖昧な主張を科学的に実証するための、複数の臨床研究を行う。臨床的に効果が実証されれば、さまざまな疾患の治療に活用でき、マインドフルネス治療に政府から補助金も受けられるようになる。さらに、同社がこれを従業員の福利厚生プログラムの有効成分として企業に売り込む際の説得力が増す。
Headspaceは、カーネギーメロン大学、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、スタンフォード大学など学術界のパートナーと共同で、70もの臨床研究を行うパイプラインを強く売り込んでいた。
Headspaceへの新たな投資には、投資会社blisceを筆頭に、Waverly Capital、Times Bridge(インドのTimes Groupの投資部門)、The Chernin Group、Spectrum Equity、Advancit Capitalが参加している。この5300万ドル(約58億円)のエクイティにには、Pacific Western銀行からの融資4000万ドル(約44億円)が上乗せされている。
「Headspaceは、マインドフルネスの力が、ストレス、不安、その他日常的な問題の緩和に役立つことを数百万もの人々に証明し、同時に、臨床的な有効性の研究によりその分野を発展させてきました」と、Headspaceの共同創設者で最高責任者のRichard Pierson(リチャード・ピアソン)氏は声明の中で述べている。「次の10年、そしてその先を見越して、私たちはこの力を応用し、会員の生活のほかの領域にも適用して、一生続けられる健康的な習慣を身につけさせることに注力しています。それはHeadspaceの消費者向けアプリや、数百名の雇用主を対象に現在行っているワークを通して、または、より身近な窓口として私たちが期待する医療提供者との協力で進めていきます」。
今のところ、同社のアプリは190カ国で6200万回以上のダウンロードを記録している。すでに200万人以上の有料サブスクリプション契約者があり、600以上の企業がHeadspaceの職場用メンタルウェルネス・ツールを利用している。
今回調達した資金は、企業と医療関係者への売り文句を実現するため、そして海外市場への進出のために使われると、同社の声明には書かれていた。同社にはすでにドイツ語版とフランス語版のアプリがあり、Apple(アップル)の経営幹部であったRenate Nyborg(ルナート・ニボーグ)氏を欧州の事業展開責任者に任命した。
新たな資金を手に入れたHeadspaceは、Calmとの顧客争奪戦に予算を投入できるようにもなった。Calmは1年と少し前に8800万ドル(約96億6000万円)の投資を受けている(企業価値を1000億円以上と評価されてのラウンドだった)。
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TPG Capitalとエンターテインメント代理店CAAの支援を受け、Calmは、ロサンゼルス・レイカーズ所属のプロバスケット選手であるレブロン・ジェームズといったセレブとの大きな契約も交わしている。彼はCalmの出資者でもある。
Calmのアプローチは、消費者向けの直販戦略に重点を置いている。ジェームズの他にも、ジョン・マッケンロー、マシュー・マコノヒー、イギリスのコメディアンであり俳優であり作家でもあるスティーブン・フライなどのセレブを起用しているのはそのためだ。
画像クレジット:Joe Maher / Stringer / Getty Images
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(翻訳:金井哲夫)