誰よりも起業家に近い伴走者目指すーー元East Venturesの廣澤氏が10億円規模のファンド「THE SEED」設立へ

The Seed Capitalの廣澤太紀氏

「大学1年生の時に初めて『シード投資家になりたい』と思ってから6〜7年、その思いはずっと変わらなかった」——前職のEast Venturesから独立し、8月にシードラウンド向けのベンチャーキャピタル「The Seed Capital」(以下 THE SEED)を立ち上げた廣澤太紀氏はファンド設立への思いについてこう語る。

シード投資家を目指すようになったきっかけは、関西学院大学の1年生時にEast Venturesの松山太河氏のインタビュー記事を読んだこと。

「(記事を読んで)『若い人たちが結果を出して活躍していて、その人たちがコミュニティや次の若い世代に対してノウハウやお金を供給していく仕組み』があるということを知って。そういう環境自体に憧れがあったし、自分もその場に参加してコミュニティを作る人間でありたいなと思ったのが最初のきっかけだった」(廣澤氏)

その後少し時間を置いて、大学3年生時の2015年2月にEast Venturesへ参画。Skyland Venturesへの出向も経験し、VC2社でトータル約3年半ほど働いた後、26歳でTHE SEEDを立ち上げた。

ファーストクローズではマネックスグループ代表執行役社長CEOの松本大氏、メルペイ取締役兼CPOの松本龍祐氏、デザインワン・ジャパン代表取締役の高畠靖雄氏、ユナイテッド、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ無限責任組合員の村口和孝氏(適格機関投資家として出資)からの出資により数億円を調達。今後も引き続き出資者の募集を継続し、最大で10億円規模のファンドを目指す。

THE SEEDという名称の通り、投資の主な対象は創業初期のスタートアップ。1回の出資額は500〜1000万円の範囲がベースになるそうで、既存投資先への追加出資(フォローオン)も積極的にやっていきたいとのこと。領域についてはEコマースやtoB向けのビジネス、ブロックチェーンなどいくつか注目しているものはあれど、特に何かに限定することはないという。

実際すでに投資契約を締結した会社が1社、現在投資を本格的に検討している会社が2社あるそうだけど、どれも創業前後のステージ。登記をするところから手伝っている会社もあるようだ。

投資を決めた1社は大阪大学に在学中のエンジニアが立ち上げたスタートアップ。なんでも小学生から父親の影響でハードの開発をはじめ、中学生の時にロボカップ世界大会で入賞。高校時代はWeb受託事業を展開していた起業家なのだという。

廣澤氏の話では「全体の20〜30%をギークなエンジニア起業家に出資したい」と考えているそう。Ethereumのヴィタリック・ブテリン、Oculusのパルマー・ラッキー、Facebookのマーク・ザッカーバーグなど、世界を変えるプロダクトは若いエンジニアによって産み出されてきた歴史がある。THE SEEDでも世界を変えるプロダクトのはじめの一歩を共にすることを目標にしている。

起業家に寄り添う伴走者へ

もう少し廣澤氏の経歴について紹介しておきたい。ベンチャーキャピタリストとしてVC2社で働いていた約3年半のうち、前半の2年ほどはSkyland Venturesへ出向して2社を兼務。コワーキングスペース「HiveShibuya」の立ち上げや80〜100本ほどのミートアップの企画・運営といったコミュニティ作りを担いつつ、500名を超える起業家予備軍とひたすら会い続けていたという。

後半の1年半はEast Venturesに戻りPopshootやフラミンゴといった投資先のサポートに力を入れた。この期間は投資先のアプリマーケティング業務に取り組んだり、CEOと一緒にファイナンスのストーリーを練ったりなど、頻繁に起業家と顔を合わせながら現場に出て働く時間が長かったそう。

「それまではシード投資家になりたいという思いは強かった一方で、どうすれば起業家に貢献できるのか、どんな投資家になりたいのかが明確ではなかった」(廣澤氏)が、この3年半の経験を通じて自身が目指すべき方向も少しずつ見えてきたと言う。

「僕自身できる限り現場に立っていたいし、プレイヤーでいたい。起業家が最初の一歩を踏み出す所、起業の入り口から共にして、一緒に泥臭いことをやったり辛い時に話を聞いたり。誰よりも起業家に寄り添う“伴走者”のような存在を目指していきたい」(廣澤氏)

THE SEEDのテーマは「起業家に伴走する」ことだ

THE SEEDでは8月から投資先や投資候補先との個別相談会「THE SEEDトーク」を実施。並行して以前から廣澤氏がやってきた、スタートアップ界隈のコミュニティ作りにも取り組んでいくようだ。

たとえば関西の学生がスタートアップや起業に触れる入り口を作るコミュニティ「スタートアップ関西」は今後も続けていく方針。廣澤氏自身が関西の大学出身だからこそ「(東京と比べると)大阪や京都ですら情報格差がある」と感じていて、この格差をミートアップや情報発信を通じて少しでも埋めていきたいという思いがあるそう。THE SEEDとして関西拠点の開設も考えているという。

「スタートアップのコミュニティに対して自分ができることがあるとすれば、それはコミュニティの外にいる優秀な同世代や若い人たちを巻き込み、起業やスタートアップ業界に定着するサポートをすること。自分がこれまでやってきたことも活かせるし、一方で他の人がそんなにやっていない領域。このコミュニティをもっと広げていきたい」(廣澤氏)

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TechCrunch Japan

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