資生堂オープンイノベーションプログラム「finabo」の採択企業3社が決定、Makuakeとの連携も

資生堂は8月29日、同社の新研究開発拠点である資生堂グローバルイノベーションセンター(GIC)が主導するオープンイノベーションプログラム「fibona」の採択企業を発表した。採択されたスタートアップは、3Dスキャニング技術を擁するDigital Artisan、スマートフットウェア「ORPHE TRACK」開発のno new folk studio、採取した尿を検査して最適な食事やサプリメントを提案してくれる「Vita Note」などのサービスを運営するユカシカドの3社。

GICのオープンイノベーションプログラムであるfibonaの名称は、フィボナッチ数列が由来。フィボナッチ数列の隣同士の数の比は,黄金比に近い値が並んでいることから名付けられたそうだ。fibonaの活動プランは、スタートアップ企業とのコラボレーション、生活者とのコラボレーション、スピード感のあるβ版の市場投入、新たな研究風土醸成の4つ。今回の3社との協業は「スタートアップ企業とのコラボレーション」(fibona with startup)にあたる。

資生堂のR&D戦略部長を務める荒木秀文氏

GICは、横浜のみなとみらいエリアである新高島駅前に建設された「S/PARK」(エスパーク)と呼ばれる施設に入っており、1階には「資生堂パーラー」とコラボした「S/PARK Cafe」、独自メソッドのオリジナルプログラムをS/PARK内のフィットネススタジオで試せる「S/PARK Studio」、パーソナライズされた化粧品の購入や資生堂の商品を試用できる半個室のパウダールームを備えた「S/PARK Beauty Bar」、2階には資生堂の最先端技術を展示する体験型ミュージアム「S/PARK Museum」が併設されている。1階、2階は一般に開放されており、2019年4月のオープン以来、4カ月でのべ1万人を超える来客があったとのこと。

Digital Artisan
Digital Artisanでは、同社が持つ人体の3Dスキャニングデータと、資生堂が持つ肌や健康に関するデータを掛け合わせ、新たなビューティー・ヘルスサービスを提供することを目指す。資生堂としては「我々が持ってないテクノロジーが魅力だった」と選考の理由が説明された。

no new folk studio
no new folk studioでは、ORPHE TRACKによって取得した走行・歩行データなどから、美しい歩き方をスコアリングして、美容に最適な走り方、歩き方を解析するとのこと。解析したデータを基にユーザーの歩き方を資生堂とともに提案していく計画だ。資生堂によると、すでに具合的な事業内容の提案も受けているとのことなので、サービスのローンチは早いかもしれない。

ユカシカド
ユカシカドも同社の保有する尿の分析データと資生堂が持つ肌や健康などのデータを掛け合わせたサービスを開発していく予定だ。同社はこれまでも多くの企業からコラボ提案が寄せられていたが、今回fibonaに応募した理由して「資生堂のグローバルに攻めていく気持ちを熱く感じた」とコメント。資生堂は「(外見や身体、心をトータルにサポートする)ホリスティックビューティ(包括的な美容)の観点からユカシカドのサービスとの連携に期待している」とのこと。

3社とも今後3カ月をかけて、資生堂のどのようなサービスやデータを連携できるかを検討して、サービスを具現化していく予定だ。

また、finaboの取り組みの1つであるスピード感のあるβ版の市場投入(fibona with incubators program)では、クラウドファンディング/テストマーケティングのサービスを提供するMakuakeと協業することも発表された。

具体的には、Makuakeの専門部署によるインキュベーション支援事業である「Makuake Incubation Studio」を利用して、資生堂社内の研究開発部門のアイデアをビジネスとして昇華させることを狙う。最終的にはMakuakeでのクラウドファンディングを利用したテストマーケティングを展開する計画だ。今後半年以上にわたって全9回のワークショップ形式のプログラムを実施するとのこと。

最近では大企業を中心にオープンイノベーションを掲げてスタートアップとのコラボを模索しているが、打ち上げ花火的なケースが多く、成功事例はまだまだ少ない。fibonaを成功に導くには、資生堂が自社の研究・開発のデータや事例、人材をスタートアップ企業とどれだけ共有できるかが成功の鍵となるだろう。Makuakeとの協業で、資生堂内で商品化できずに埋もれている技術がどれだけ掘り起こせるかにも注目だ。

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TechCrunch Japan

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