暫定CEO(iCEO、Interim CEO)と言えば、1996年にアップルに復帰した故スティーブ・ジョブズ氏を思い浮かべる読者が多いことだろう。実は日本のスタートアップ業界にも暫定CEOとして活躍していた人物がいる。その人物が所属するムスカは4月23日、新経営体制を発表した。
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同社は、45年1100交配を重ねた超抜イエバエを駆使して、通常は2〜3週間かかる生ゴミや糞尿の肥料化を約1週間で処理できる技術を擁する、2016年12月設立のスタートアップ。廃棄物を肥料化するのはイエバエの幼虫だが、その幼虫はそのまま乾燥させることで飼料にもなる。2026年に到来すると予想されている飼料としての魚粉の供給限界に向けて、このタンパク質(=幼虫)はその代替として注目されている。
ムスカはこれまで、広報部門の責任者だった流郷綾乃氏が代表取締役暫定CEOに就任していたが、新経営体制では暫定CEO職を廃止。流郷氏は新たに代表取締役CEOに就任する。これまで「できるだけ短い期間で暫定CEOの座を降りて、次のリーダーに託すのが私の目標」と話していた流郷氏だが、事業化フェーズへの移行に伴って、経営執行体制の明確化と意思決定の迅速化を図るため方針を転換したようだ。
また、代表取締役会長だった串間充崇氏はファウンダー/取締役会長ヘ、元三井物産の安藤正英氏は取締役暫定COOから取締役COOヘ、元ゴールドマン・サックスの小高功嗣氏は取締役から取締役CFOにそれぞれ就任する。串間氏は、ムスカのハエ技術を駆使した工場建設に注力。そして流郷氏、安藤氏、小高氏の執行体制により、事業を推進していくという。
この発表に併せて、これまではコワーキングスペースを間借りしていた東京オフィス(東京事業所)を西麻布に移転。海外での工場立ち上げ経験がある人材の募集も開始している。
詳しくは別記事で報じているが、伊藤忠商事と戦略的パートナーシップ締結も発表した。これは3月1日に発表された丸紅に続く大手商社との提携だ。伊藤忠商事は、ムスカのバイオマスリサイクル施設の1号プラントの参画を予定しており、十数億円をムスカに出資する見込み。今回の人材募集は、1号プラント建設後を見据えたものだと考えられる。
2018年に11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルで100社超の企業の頂点、最優秀賞を受賞したムスカ。それから5カ月あまりで経営体制を大幅強化し、大手商社と組んで事業を大きく拡大させることになる。