昨日、Y Combinatorは今までにない印象的なスタートアップの数々を発表した。医薬品、金融、マーケットプレイスを大きく変えるようなアイディアをそれぞれが持っている。私たちは、各企業のデモを精査し、ファウンダーたちに話を聞いて回った。著名な投資家にもそれぞれのお気に入りを聞いた結果をまとめ、 YC Demo Day2に登場した2015年冬期クラス47社から、TechCrunch が注目する10社のスタートアップのリストを作成した。
これが、そのリストだ。順番は特に関係ない。
Campus Job:大学生のパートタイムの仕事やインターンシップ探しを助ける。
学生はプロフィールを入力し、企業の応募条件を確認したら、すぐに応募ができるプラットフォームだ。Campus Jobには既に、登録している2200の大学と10万人の学生にリーチしたい1300社の企業が有料で利用している。
注目理由:大学生は、もう公式プロフィールサイトを必要としていない。彼らは成果がほしいのだ。この場合は「仕事」だ。Campus Jobsは、単純明快なニーズを埋めることができるので、多くの人を惹き付けた。LinkedInのようにプロフィールを入力して、仕事のオファーがあるのを祈るだけではないのだ。
Seed: 中小企業向けのオンライン銀行。
Seedは、ユーザーの情報を持って、ローンを受けられるかの事前審査を行う。ユーザーは、わざわざ自分で承認されるローンを探さなくても良くなる。Seedには、今まで通りの銀行業務を担うパートナーがいる。このパートナーとはレベニューシェアでの提携をしている。彼らは、バンキングAPIを公開し、クライアントソフトウェアを近々ローンチする予定だ。
注目理由:ローン選びは人生でも大きな決断にも関わらずどれを選んで良いのかは分かりづらい。Seedがユーザーの味方となってガイドすることで、多くの人が適切なローンを選んでお金を節約し、それを貯蓄に回すことができる。
Atomwise:新しい医薬品を開発するソフトウェア。
Atomiseは、スーパーコンピューター、人工知能と特殊なアルゴリズムを使用して、何万通りにも及ぶ分子構造の配列から、今後医薬品として使用できる可能性のあるものを予測する。新しい医薬品を開発するコストと時間を削減することを目指している。医薬品の開発には、何ヶ月、あるいは何年にも及ぶ期間と何百ドルもの資金が必要だ。Atomwiseは、人工知能と機械学習を駆使し、何千ドルもかかっていた調査を一日で行うことができる。
4ヶ月前には、エボラ出血熱に対抗する医薬品の研究に乗り出した。Atomwiseによって導きだされた2つの医薬品は、エボラ出血熱の治療薬として使用されることになるかもしれない。これを見つけ出すのにかかった費用は1000ドル以下で、期間も1週間程度であったとこのスタートアップは報告している。
注目理由:製薬会社は、何万ドルもかけて新薬の開発を行っている。Atomiseはこの技術の特許を持つか、発見した医薬品を直接マネタイズするかは分からないが、いずれにしろ彼らは私たちの健康を守りながら、莫大な利益を手にすることができるだろう。
簡単に言うと、クリック一つで医療大麻が届く。Meadowの事業は週に20%のグロースが見られ、月のリテンション率は56%だ。他のオンデマンド医療大麻の宅配アプリとは違い、Meadowは医療大麻を保有しなければ、触りもしない。彼らは薬局に、配送手段、商品の販売場所、そして在庫管理のソフトウェアを提供している。これは27億ドルの市場で、2019年には110億ドル規模に成長すると見込まれている。「医療大麻がこんなに利益が出るなんて、誰も知らなかっただろう」と共同ファウンダーのDavid Huaは、YC Demo Dayに来ていた聴衆に話した。
注目理由:Meadowは他のどの医療大麻の宅配サービスとも一線を画している。私たちの中で彼らが高評価なのは、彼らは医療大麻を扱う薬局に特化したバックエンドの管理ツールと商品の販売場所を提供しているからだ。そして、市場への卓越した正攻法でのアプローチは、Meadowを医療大麻市場で確固たる地位へと押し上げることになるだろう。
Notable Labs:がん治療をパーソナライズする。
病と対抗するのに、医薬品の調合は有効な手段だ。しかし、一人の患者に最適な医薬品を探すにも、医薬品の調合のバリエーションが多すぎるのだ。Notable Labsは、患者のがん細胞を研究室へと持ち帰り、どの医薬品の配合が効果的かを実験して探すことができる。そこで得られた結果は、患者の担当医師へと伝えられる。これにより、米国食品医薬品局からの指摘リスクを軽減し、さらに大手製薬企業の特許薬を使用しなくても良くなる。
注目理由:寿命が延びるほど、がんによる死亡率が高まるだろう。しかし患者に新しい医薬品を投与するのは危険でもあるし、高額でもある。がん治療の一環にテクノロジーを取り込むことで生存率があがるかもしれない。家族の健康を守るのに、お金を出さないという人もいないだろう。
Akido Labs: ヘルスケア用の統一API。
Cleverが教育関連のデータを開放したように、Akido Labsはヘルスケアの情報を開放しようとしている。彼らは、病院のベンダーにプロダクトを販売する。ベンダーは、病院のバックエンドシステムを開発するのにその病院ごとのカスタマイズを施さなければならない。Akidoは、そのベンダーと病院の間に立ち、病院から提供されるデータの規格を決めることで、ベンダーが簡単にシステムを構築することを助ける。Akidoのテクノロジーは医療用のシステムを簡単に安く構築することができ、患者に良い治療を施すためのプラットフォームを作るのに役立つだろう。
注目理由:非効率的なシステムにコストがかかっているのは理不尽だ。患者は通院する病院の古いデータ設計のために余分に料金を支払っていることになる。Akidoは、病院とベンダーの問題を解決して利益を得るだけでなく、医療の分野で幅広く使用できるソフトウェア開発のプラットフォームにもなりうる。
DroneBase:オンデマンドドローンサービス。
ユーザーがボタンをクリックすると、DroneBaseは近くにいるドローン操縦者とドローンをユーザーの元へと送り届ける。例えば、建築やインフラ建設のようなプロジェクトで、画像、動画、地図を撮影したい場合にドローンは適している。このサービスは、民間企業がドローンを購入し、操縦者を雇うことや、あるいはサプライヤーに代金を支払うことがなくなる。DronBase は、衛星、飛行機、ヘリコプターの代わりになることでコストを削減しながら、利用する企業に彼らが求めるデータをすぐに届けることができる。
注目理由:ドローンは、一般的に危険で、コストも時間もかかる工事現場での仕事ができる。問題は、ドローンを扱うのは手間がかかるということだ。DronBaseには、ドローンを民間企業が簡単に利用できるようにし、彼らがコストを掛けずに、手間なく使えるメリットがある。
MashGin:機械が商品を認識するセルフレジ。
MashGinの小売り店鋪用のセルフレジは、カメラと画像認識を活用して、商品をスキャンして判別し、レジに代金を登録する。リンゴや缶ジュースといった商品を、MakerBotの3Dプリンターのような機械に置くだけでいい。店員が情報を入力したり、バーコードを読み取ったりする必要はなく、機械が自動で商品を認識し、ユーザーはクレジットカードを機械に通すだけで支払いが完了する。MashGinは、FacebookとBell Labsにいた2人組みのチームだ。MashGinは、人の目による確認に依存していた多くのビジネスで取り入れられるかもしれない。彼らは、大手小売店から月々5000万ドルでサービスを使いたいという内容の連絡を受けたばかりだ。
注目理由:MashGinは、様々な小売店のレジを置き換える可能性を秘めているが、これは小売店だけに留まらないだろう。人の目で行われていた品質管理のような仕事も、この機械が取って代わることになるかもしれない。
Bonfire :提案依頼書による提案内容の管理。
提案依頼書を受けたベンダーから提出される各提案を吟味し採択する方法(RFP システム)で、年間3兆ドルもの金額が動いている。企業が5万ドル以上する物を購入する際は提案依頼書を作成し、潜在的なサプライヤーからの提案を待つ。その中から最適な提案を採用するのだが、この提案から採択までのプロセスには何ヶ月もかかる。Bonfireは、企業の提案依頼を管理し、どの提案が最も良いかバイヤーに伝えるのだ。Bonfireは、大企業や政府に年間5000ドルでサービスを提供しているが、集めたデータを基に、どのバイヤーにはどのサプライヤーが適しているかなどの解析を行うことで、さらに大きなビジネスになることを計画している。
注目理由:RFPを経験した者なら分かると思うが、これはうんざりする方法なのだ。ただ、この方法で驚くほど莫大な金額が動いていることも事実だ。提案の標準形式を設定し、Bonfireに情報が集約するほどBonfireは優秀な意思決定を下すことができるようになる。最終的に、サプライヤーが提案を出す前から、どこのサプライヤーと組むべきかが分かるようになるかもしれない。
何兆ドル分の重機が使用されるのを待っている。常時、全重機の75%が待機しているのだ。EquipmentShareでは、土建業者が使用していない重機を貸し出すことができる。このスタートアップは料金の20%を手にするが、これは貸し出し業者から重機を借りる場合に比べると30%も安い値段であり、土建業者は年間で平均90万ドルを重機を借りるのに費やしている。EquipmentSharedは小さい土建業者でも彼らが必要とする重機をお手頃な値段で購入したり借りたりすることができるようになる。また、使用していない移動クレーンやコンクリートミキサーを貸し出すことで、継続的な副収入を得られるようにもなる。
注目理由:仲間内で物の貸し借りを行うようなシェアリングビジネスは、家や交通手段の分野ではとても利益が上がるビジネスであるということが証明されている。次は建築業界で、同業者が保有する資産を効率的に循環させることにより、古くからある業界から利益を出すことにつながるかもしれない。
他にも気になったスタートアップ
Transitmix:効率的な交通網のためのソフトウェア。
街を走るバスの路線や時刻表を作成するのに、まだ紙を使用している主要都市はいくつもある。Transitmixは、都市計画において交通システムをどのようにすべきかを考えるのを助けるソフトウェアだ。Transitmixはアメリカとカナダの20の主要都市において、既に契約を交わしている。人口統計データとコスト分析を行うこのソフトウェアは、世界中のどの都市でも使用することができ、都市計画を楽にする。彼らの販売サイクルは60日で、ランレートは100万ドルとなった。このスタートアップの街の運用を良くするために開発したソフトウェアは、40億ドルの市場を狙うことができると彼らは話した。
注目理由:都市部での交通渋滞は年々酷くなっているにも関わらず、自治体が交通システムを変えるのは難しい作業である上に時間もかかる。Transitmixを導入するには費用がかかるが、交通渋滞を緩和するために必要な技術を活用することで、結果的に納税者の負担を減らすことになるだろう。
製薬会社は特殊な化学薬品を生成するのに、莫大な費用をかけている。20^nが開発したソフトウェアでは、どの遺伝子を使用すれば、有用な化学薬品を生成できる遺伝子組み換え生命体を生み出せるかを予測する。彼らは、医薬品タイレノールの有効成分であるアセトアミノフェンを生み出す方法を発明することができた。また別の化学薬品を200万倍安く生成する方法も見つけた。20^nは、米国防総省高等研究計画局や大手化粧品会社から、1700万ドル以上の契約を結んでいる。彼らは幅広い化学薬品を生成できるようになること目標としている。
注目理由:20^nの登場は、Y Combinatorが科学的な根拠に基づいたアイディアで、ニッチなコンシューマー向けのプロダクトにも注目していることの表れとも言える。このような化学薬品を生成する生命体が、実際に有用な化学薬品を生成できるのかは時間が経ってみないと分からない。ただ、このような大きな野望を持つスタートアップも、次にバズリそうな写真共有アプリと同じくらい注目を浴びるべきだと思う。
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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ facebook)