401K?、ストックオプション?フリーランサーには、何もありません。私たちは、Gigsterのために働いてくれるフリーランスの人たちを、スタートアップ企業で働いているような状態に近づけたいと思っているのです」こう語るのは創業者でCEOのRoger Dickeyだ。彼のスタートアップであるGigsterは、フリーランスのプロダクトマネージャー、エンジニア、そしてデザイナーをコーディネートすることによって、顧客のアイデアを本格的なアプリに仕上げる会社だ。そして、同社は今日、その最高のフリーランス契約者たちを引き留め、インセンティブを調整し、顧客のためにさらに熱心に働いて貰う、革新的な方法をスタートした。
GigsterがローンチするのはGigster Fundである。リミテッドパートナーとしてのBloomberg、Felicis、China’s CSCからの70万ドル、そしてこれにGigster自身の資本の1パーセントが加えられて構成されている。同ファンドはGigsterのトップ顧客の1つに、企業評価額500万ドルに対しその1パーセントの5万ドルをキャッシュで毎月投資する。Gigsterは顧客に対して、アドバイス、コネクション、ファンドレイジンクの支援、トップフリーランサーへのアクセスと自社への雇用の機会も提供する。
Dickeyは、Gigster Fundによるアレンジに対するスタートアップへのチャージは、ブートキャンププログラムは提供しないものの、1ドルあたりY Combinatorに比べて3分の1、500 Startupsに比べて2.5分の1の資本で済むことを強調した。これまでに対象となったポートフォリオ企業のいくつかには、スタンフォード出身者による医療機器会社、Techstars出資で元Google従業員がスタッフとして勤めるスタートアップAdHawk、ある公開企業ならびにIshqr for Muslimsという名の出会い系アプリの創業者による開発ツールなどが含まれている。
しかしここで特別なのは、Gigsterはファンドの潜在的利益の全ては保持し続けないということだ。投資収益の最初の70万ドルは投資家たちに戻されるが、その後は、投資家たちとGigsterは余剰利益を分割し、Gigsterはフリーランサーたちにシェアを与える。
毎月、Gigster Fundから得られるGigsterの収益の一部が、その月のアクティブフリーランサーの間で均等に分配される。よって、もしファンドが1年運用され、Gigsterが最終的に(投資家の取り分を除いて)1200万ドルの収益を挙げたならば、毎月の収益は100万ドルということになり、よってもし100人のフリーランサーがアクティブならば、それぞれが月に1万ドルを受け取ることになる。
基本的に、Gigsterのフリーランサーたちは、もし顧客が成功して、かつ自身もしばしGigsterでの活動を続けたならば、おそらくDickeyが言うところの「退職金の一部」を受け取ることができるだろう。「成功した会社は皆、株式を通してその従業員に報いています」とDickeyは説明する。SECはGigsterがフリーランサーたちに株式を直接渡すことを許さない、そこで「そうしたたやりかたを真似る一番の方法は、彼らが仕事をしている顧客の株式を介して報酬を与える方法なのです」。
もちろん、これはすべて、Gigsterとその顧客が成功することに依存している。Gigsterは正しい方向に進んでいる。2015年7月にGigsterは、大企業や起業家たちに、個々のフリーランサーを自分で管理する必要がなく、アプリケーション全体の開発プロセスをアウトソースできるサービスをローンチした。最初の2週間には100万ドルを売り上げ、そのわずか4ヶ月後にはGigsterはアンドリーセン・ホロウィッツ率いるシリーズAで1000万ドルを調達した。今では、マスターカード、IBM、そしてペプシコといった顧客と契約しながら、企業向けの売り上げは前の四半期に比べて9倍に伸びている。
その急速な成長は何らかの混乱を引き起こす可能性がある。私はGigsterがプロジェクトコストを過小に見積ったために、追加予算が必要となって腹を立てている顧客の話を聞いたことがある。また、顧客は自分のアプリの保守と更新を継続するためには、Gigsterとのやりとりを繰り返さなければならない。こうしたプロセスが、あまりにもでこぼこ道(too bumpy)であることが判明したときには、将来のGigsterの顧客を落胆させてしまう可能性がある。
しかし、ソフトウェアが世界を食い、全ての企業がテックカンパニーを目指している現在、需要は屋根を突き抜けるほど積み上がっている。アプリを必要とはするものの、どうやってそれらを開発すればよいかわからない企業たちは、そのよく吟味されたタレントと、苦労の少ないソリューションに惹かれて、Gigsterを選んでいる。
顧客、フリーランサー、そしてGigsterの潜在的な利益を超えて、ファンドはまた、他の企業が契約労働者を支援するために何ができるかについてについて語ることもできるかも知れない。「多くのスタートアップがこれに踏み切ることを怖れています、なぜなら『働きに応じて支払われる』クラス分け問題に突き当たることを怖れているからなのです。従業員の処遇に対してのアプローチを考えることほど、スタートアップを疲弊させるものはありませんからね」とDickey。
Uberのような、オンデマンドギグ(gig:一時的な仕事)エコノミー世界のスタートアップたちは、「1099」独立契約者(米国では個人請負業者のためにForm 1099という申請用紙が用意されている)を、よりコストのかかるフルタイム従業員として扱うようにさせようとする訴訟と、戦ったり回避の努力をしたりしている。Gigsterのフリーランサーたちは、ホワイトカラーの知識労働者であるため、Dickeyは、この特典を提供すれば訴訟を回避できると考えている。そのリスクにもかかわらず、Dickeyは「私たちは、私たちが思う正しいことをやるのだ、という重い決断を下しました」と言う。
もしこのスキームが上手く行った場合には、Gigsterは、株式収益を通じて、フリーランスの独立性と柔軟性という利点と、フルタイム雇用者の潜在的な利点をうまく組み合わせることができることになる。このことは、優れたプロジェクトマネジャーたちや、開発者たち、そしてデザイナーたちに9時から5時の拘束から抜け出して、Gigsterとギグを行う決意を促すことにもなるだろう(ギグには「一時的な仕事」」という意味の他に「音楽ライブ」という意味もある)。そして、自分自身ではそれほど良いチームを集めることのできない顧客の前に、その才能をぶら下げることができるようになるのだ。
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(翻訳:Sako)