アメリカのクラウドファンディングは”寄付”から本格的な”株式投資”へ; VCの淘汰も始まるか

【抄訳】

締切りを数百日も過ぎた今日(米国時間10/23)、SECの専門委員たちは全会一致で、スタートアップの株式クラウドファンディング(equity crowdfunding)の一般化/大衆化認めるにあたっての規則案を作成し公開諮問することになった*。これまでは株式クラウドファンディングは、SECから認可されている富裕な投資家にのみ許されていた。その規則案は長期の公開意見聴取を経てから、SECがあらためて正式に票決することになる。〔*: これまでのKickstarterなどで行われているクラウドファンディングは、法律的分類としては“寄付行為”。投資家がリターンを期待する株式投資ではない。〕

本格的なクラウドファンディングは、JOBS Actの三つのSEC対応項目の一つだ。それに関して今年の初めには、スタートアップに対し従来よりも簡便な報告義務を認めていたが、先月になってやっと、スタートアップや投資ファンドによる一般勧誘*(general solicitation)を禁じていた長年の禁令が撤去された。〔*: 非公開企業である小企業は、家族親戚友人など知人圏の25名に対してしか投資勧誘ができない。投資を広告などで一般的に募ること(一般勧誘)は不可だった。〕

SECの5名の委員が全員一致で採択した株式クラウドファンディングの規則案は、いくつかの制約を抱えたまま意見公募に向かうことになる。

まず、企業がクラウド(crowd)から調達できる資金は1年で100万ドルまで、となっている。また、年収20万ドル未満の者は、年収の一定率までの額しか投資できない。たとえば年収10万ドル未満の者は、その最大5%までまたは2000ドルまでしかクラウドファンディングできない〔10万ドルの人は5%==5000ドルではなく2000ドルまで〕。ただし現行案では、企業がクラウド投資家の収入を検証せよ、とはなっていない。しかしながらこの事案は、今度の意見公募における意見聴取案件の一つとなっている。

また、すべてのクラウドファンディング投資はCircleUpのようなクラウドファンディングポータル上で公開登録されなければならない。外国のクラウドファンディングポータルは、事前にSECの検査を受けなければならない。企業は投資家たち全員の正確なリストを記帳しなければならない。

【中略】

クラウドファンディングはママパパ投資家たちに危害を及ぼすこともありえる。だから、今回の規則案は制約を設けている。しかし実際には、クラウドファンディングが最大の危害を与えるのは、粗悪なベンチャーキャピタリスト(VC)に対してだ。この規則が成立すれば、スタートアップはそういうお粗末なVCたちにペコペコして物乞いならぬ金乞いをしなくてもすむようになる。これまでの身内だけと違って、一般勧誘ができる。そして誰でも(無認可の投資家でも)クラウドファンディングできる。この二項があることによって、スタートアップは自分たちのビジョンへの投資を、万人に求めることができるのだ。

以下はSECの規則案の全文だ:

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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