2018年、ようやく我々はスクリーンタイムを真剣にとらえ始めた

今年初め、私がCatherine Priceによる“How to Break Up With Your Phone”のカバーを見たのは、iPhoneを使ってAmazon上で新作をブラウズしていたときだった。私はそれをKindleにダウンロードした。というのも、私は純粋にスマホ使用時間を減らしたかったからだ。しかしそれはまた、スマホと決別することについて書かれた本をスマホで読むのはおかしいと考えたからだ(バカでしょ、わかってる)。しかしながら何章か読むうちに、私はPriceがお勧めしているスクリーンタイム追跡アプリMomentをダウンロードするべきだと考えた。そしてこの本を印刷された本として再購入した。

“How to Break Up With Your Phone”の初めの部分で、Priceは読者にDavid Greenfieldによって作成されたSmartphone Compulsion Testを受けるよう呼びかけている。David Greenfieldはコネチカット大学で精神医学の教授を務めていて、Center for Internet and Technology Addiction(インターネット・テクノロジー中毒のためのセンター)も立ち上げた。テストには15の質問があり、しかし私は最初の5問を答えるだけで壁にぶち当たった。公にするのはためらわれるのだが、屈辱にもかなりのハイスコアで、私はスマホ使用を短くすることに真剣に向き合うことを決めた。

Priceの本の中でも、“Putting the Dope in Dopamine” という章が私が最も共感するものだった。彼女は「電話やほとんどのアプリは、我々が十分に使用したときでも“流れを止めること”がないように故意的にデザインされているーこれが、ふとしたことから簡単に度を過ぎてしまう理由だ。あるレベルで我々は、自分たちがしていることはひどい気分にさせている、と気づく。しかし、使用を止める代わりに、我々の脳は解決策はより多くのドーパミンを模索することだと決めつける。そして我々は再びスマホをチェックする。そしてまたチェックする。その繰り返しだ。

ひどい、というのはまさしく私が感じていたことだ。私が最初にiPhoneを購入したのは2011年のことだ(その前にはiPod touchを持っていた)。それは、私が朝まず一番に見るものであり、夜最後に見るものでもあった。それは、仕事の状況を確かめるため、と言うこともできるが、実際には自動的なものだった。もし、頻繁にスマホに注意をひきつけられていなかったら過去8年間に自分が何を成し得ただろうと考えると不安な気持ちになる。また、脳のフィードバックループがどうなっていたかとも思う。砂糖が好みを変えてどんどん甘いものが欲しくなるというふうに、私は増えるばかりのスマホ使用が、本当の喜びや満足というものを感じる能力を失わせてしまうのではないかと憂慮した。

Priceの本は2月に出版された。テック企業が最終的に長すぎるスクリーンタイムについて責任がある(少なくとも、言葉だけでなく何かしら行動を伴う対策をすべき)と認識し始めたと思われる今年初めのことだ。iOS 12でスクリーンタイムが導入されたのに加えて、AndroidのデジタルウェルビーイングツールFacebookInstagram、そしてYouTubeもユーザーが何時間そのサービスやアプリを利用したか追跡できる機能を立ち上げた。

今年初め、Apple株を保有する有力な投資家もまた、Appleに対し同社のデバイスが子どもにどのような影響を及ぼしているかに関心を払うよう要求した。Appleへの書簡で、ヘッジファンドJana Partnersとカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)は「オリジナルクリエイターの多くが公にしているように、iPhoneとiPadがデフォルトゲートウェイとしているソーシャルメディアサイトとアプリは通常、中毒になるよう、そして可能な限り時間を潰すようにデザインされている」とし、さらに「子どもの親にこうした問題に対処するよう尋ねるのは非現実的で、満足するような長期的ビジネス戦略とはいえない」と書いている。

累積する研究データ

そして11月、ペンシルベニア州立大学の研究者は重要な新レポートを発表した。このレポートは青年期層におけるソーシャルメディアの使用と鬱を関連づけている。心理学者Melissa Huntが率いたこの実験研究では、大学が貸与したiPhoneを手にした143人の学生を3週間にわたってモニターした。学生は2つのグループに分けられた:1つのグループはFacebookやSnapchat、Instagramといったソーシャルメディアの利用時間を1日あたり10分に制限するよう指示された(彼らのiPhone使用状況はiOSバッテリー使用をチェックすることで確認された)。もう一つのグループは普段と同じようにソーシャルメディアの利用を続けた。研究の初め、まずは鬱、不安、社会的サポート、他の問題を測る標準的なテストが行われ、それぞれのグループは実験期間を通してテストによる評価を受けた。

専門誌Social and Clinical Psychologyに発表された結果は驚くべきものだった。研究者らは「使用を制限されたグループは、もう一つのグループに比べ、3週間にわたって孤独感や気分の落ち込みの大幅な減少を示した」と書いている。

ソーシャルメディアの使用を完全に制限されたわけではなかったにもかかわらず、コントロールされたグループは恩恵を受けた。「どちらのグループも、最初に行なった評価テストでみられた心配や不安について著しい低減がみられ、これは自己監視の高まりの効果を意味している」と研究はまとめられている。「我々の研究でわかったことは、1日30分ソーシャルメディアの使用を減らすことで健康面で明らかな改善につながる、ということだ」。

今年発表された他の学術研究でも、スマホやモバイルアプリがユーザーの心身の健康に著しい害を及ぼすという、いくつもの証拠を示している。

プリンストン大学、ダートマス大学、テキサス大学オースティン校、そしてスタンフォード大学の研究者らは、写真やビデオ撮影を含むスマホの使用が記憶の形成能力を低減させているという研究結果を専門誌Journal of Experimental Social Psychologyに発表した。また他の研究は、スマホをベッドルームから遠ざけることや、仕事中に机からも遠ざけるよう注意喚起している。トレド大学の視覚研究者は、デジタルデバイスが発するブルーライトが網膜で分子レベルの変化を引き起こし、黄斑変性を加速させる可能性があるとしている。

だから過去12カ月、私はスクリーンタイムを減らすのに、十分すぎるほどのモチベーションを持っていた。実際、私は携帯でニュースをチェックするたびに、スマホ使用にかかる危険についてのヘッドラインを目にしていた。私は、自身の累計スクリーンタイムを追跡するため、そしてそのスクリーンタイムがアプリごとにどうなっているのかを追跡するのにMomentの使用を開始した。私はMoment内のコース2つ、“Phone Bootcamp”と“Bored and Brilliant”を使った。また、このアプリで毎日のスマホ使用時間制限を設け、その日それまでにどれくらいの時間をスマホに費やしているかを通知する“小さなリマインダー”をオンにした。そして“Force Me Off When I’m Over” (制限を超えた時は強制終了する)機能も使った。この機能は、その日の制限を超えたときにスマホをオフにするというもので、基本的にあなたを悩ますものとなる。

最初、私はなんとかスクリーンタイムを半分にすることができた。Priceの本に書かれていたような、注意力が持続するようになるなどメリットのいくつかは出来すぎた話だと考えていた。しかし私は、スマホ使用を制限し始めてわずか1週間後に自分の集中力が実際かなり改善しているのに気づいた。私は長文の記事をよく読み、テレビ番組をいくつか観て、幼子のためのセーター編みを終わらせた。さらに重要なのは、自分の時間の費やし方について1日の終わりに感じていたしつこい感覚が消えたことだ。なので私は、それ以降、クリックベイトややり直しのレッスンなどで自分の人生を浪費していない、という心地よい認識の中で幸せな時間を過ごした。

冗談だ。

数週間もすると、私のスクリーンタイムは増え始めた。最初に私はMomentの“Force Me Off”機能をオフにした。なぜなら私のアパートは電話線をひいておらず、夫からのテキストメッセージをチェックできるようにする必要があったからだ。小さなリマインダーは継続していたが、徐々に無視するのが簡単になった。特に考えもなくInstagramやRedditをスクロールしさえし、私は自分の人生のいい時間の誤った使い方をしているという、実存主義の恐怖を感じた。スクリーンタイムを制限するのはなぜ難しいのだろう。

スマホをやめる方法を知っていたらよかったのに

私はMomentのCEO、Tim Kendallに識見を求めて尋ねることに決めた。UIデザイナーでありiOSデベロッパーのKevin Holeshによって2014年に設立されたMomentはつい最近、Androidバージョンも立ち上げた。スクリーンタイムを減らすためのForestFreedomSpaceOff the GridAntiSocialApp Detoxなどを含むこの分野で、Momentは最も名の通ったものの一つだ。

Kendallは、私に悩んでいるのはあなただけではないと告げた。Momentはユーザー700万人を抱えていて、「過去4年、平均スマホ使用時間は毎年増えている」と彼は語る。全データをみることで、MomentのチームはMomentのツールやコースがユーザーのスクリーンタイムを減らすのに効果があることを把握している。しかし、多くの場合で、スクリーンタイムが増え始める。新たな機能でその問題に対処するのが、来年のMomentのゴールの一つだ。

「我々は、こうしたカテゴリーに入る人々をいかにして手助けするか模索するため、R&Dにかなりの時間を費やしている。彼らはPhone Bootcampを実践し、いい結果を得て、メリットを実感する。しかしどうやってそれを維持するかを理解できないのだ」とKendallは話す。Momentはすでに新しいコースを定期的にリリースしていて(最近のテーマは睡眠、集中する期間、家族の時間だ)、最近では購読制の提供も始めた。

「習慣と長く続いた行動を変えるのは本当に難しい」とKendallは言う。Kendallは以前Pinterestの代表を務め、Facebookでは収益化を担当するディレクターだった。しかし彼は楽観的だ。「これは扱いやすい問題だ。人々は実行できる。成果はかなり大きいと考えている。我々はこれらのコースを継続し、人々を手助けするために多くの異なる方法の開拓も行なっている」。

ヘッジファンドJana Partnersとカリフォルニア州教職員退職年金基金(CalSTRS)は手紙の中で、特に重要な問題は絶えずデバイスにアクセスできるティーンエイジャーと若年成人で構成される第一世代がいかに過度なスマホ使用で影響を受けているかだ、と述べている。Kendallはティーンエイジャーの自殺率が過去20年間で劇的に増えたと指摘し、ペンシルベニア州立大学の研究にみられるように、スクリーンタイムと鬱の関連性はすでに何年にもわたって取り上げられている。

しかし希望はある。Kendallは、スマホ使用時間を減らすために毎日のエクササイズを提供するMomentのコーチ機能が特にミレニアル世代で有効のようだ、と話す。この世代は、病的にスマホから離れられない場合が多い。「20代、30代というのはコーチを取り込むのにさほど苦労はしないようで、それゆえに40代、50代よりもスマホ使用を減らしている」と話す。

Kendallは、Momentがスマホ使用について「使用するか、しないか」と位置付けているわけではないと強調する。そのかわり、彼は人々がソーシャルメディアのような脳にとってのジャンクフードとなるものを、オンライン語学コースや瞑想アプリのようなものに置き換えるべきと考えている。「慎重なスマホの使用は、手にするものの中で最も素晴らしいことの一つだと本当に考えている」と話す。

私は、自身のスマホ使用のほとんどを制限し、Kindleのようなアプリにかえようと試みたが、最もいい解決策は自分自身の気が散らないようオフラインの選択肢を探すことだった。たとえば、私は新しい編み物とかぎ針編みのテクニックを試みた。これは、スマホをもちながらこうしたことはできないからだ(ポッドキャストやオーディオブックは聞いたが)。また、これはスマホを離れた時間を触覚ではかることにもなる。というのも、スクリーンタイムをカットするこの時間は編み物で完成させる列の数に関係するからだ。特定のアプリの使用を制限するために、私はiOSのスクリーンタイムに頼った。しかしながら、“Ignore Limit(制限を無視する)”をタップするのは本当にたやすく、私はMomentの機能に頼り続けている。

いくつかのサードパーティのスクリーンタイム追跡アプリデベロッパーは最近、Appleのより精密な調査対象となっていることを認識しているが、KendallはScreen Timeの運用開始はMomentの事業やサインアップにさほど影響していない、と述べている。Androidバージョンの立ち上げではまた、新たなマーケットを切り開いている(Androidでは、タイマーをセットしている間は特定のアプリにのみアクセスできるなど、iOSでは展開できていない新機能を加えることができた)。

iOSのScreen Timeの短期的な影響は「ニュートラルだが、長期的には有用だと考えている」とKendallは話す。「長期的には注意を喚起するのに役立つ。ダイエットの例になぞらえていうと、Appleは素晴らしいカロリー計算機とスケールを作った。しかし、残念ながら彼らは栄養のガイドラインや摂生方法を提供していない。もし行動の経済学者に話をする機会があれば、数字は人々のモチベーションにはつながらないことがわかる」。

罰を与えるのも、少なくとも長期的にはうまくいかない。なので、Momentでは“同情的な声”手法をとっている、とKendallは語る。「これは我々のブランドや会社、気風の一部だ。もしユーザーが我々のプロダクトを使用した時に審査されていると感じれば、我々がユーザーの役に立つとは思えない。ユーザーは自分たちがケアされ、そしてサポートされていると感じる必要があり、そして彼らはゴールは完璧さではなくゆるやかな変化だということも知っている」。

多くのスマホユーザーがおそらく私と同じような状況にあるだろう:スクリーンタイムによってアラームが鳴り、無駄にした時間について不機嫌になり、しかしまたデバイスを手放すことはとても難しいと感じている。我々は注意をそらしたり、ソーシャルメディアの「いいね」で興奮したりすためだけにスマホを使っているわけではない。仕事を管理したり、友達と連絡を取り合ったり、予定を立てたり、本を読んだり、レシピを調べたり、面白い場所を探したりするのにスマホを使う。私はこれまで何回もYondrのバッグ購入や、夫に私のスマホを隠すようにお願いしたりすることを考えた。しかし、それらが究極的な解決策にはならないことを知っている。

安っぽく聞こえるかもしれないが、変革の勢いは内側から出てこなければならない。大量の学術論文、スクリーンタイムアプリ、分析どれもそれにとって代わることはできない。

私が自分自身に言い聞かせていることは、デベロッパーが我々ユーザーに行動を改めることを強制するような方法を見つけるか、モバイルコミュニケーションにおいて大きなパラダイムシフトが起きるかしなければ、私のスマホとの関係性は堂々巡りだろう、ということだ。時々私は自分のスマホ使用についてハッピーになり、それから堕落し、そして別のMomentのコースをとるか、新たなスクリーンタイムアプリを試して、願わくば元の軌道に戻る。しかしながら、2018年、スクリーンタイムはようやく、是が非でも急を要するものだと認識されるところとなった(そしてその間私は、親指で#knittersofinstagramとタイプするだけの代わりに、実際にいくつかの編み物を完成させた)。

イメージクレジット: Ocipalla/ Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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