スタートアップとマーケットのニュースレター The Exchange(ザ・エクスチェンジ)へようこそ。ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話をお伝えする。
みなさんこんにちは、お元気でお過ごしだろうか。これが2020年最後のThe Exchangeだ。来週ちょっとした休暇に入る前に、何本かコラムをお届けする予定ではあるが、ポッドキャストのEquityの方はこの忌々しい年が終わるまでエピソードの公開を続ける。
ということで前振りも終わったので、今週の2つのトピックをご紹介しよう。これから誰が株式を公開するのか、そしてスタートアップの中で特定の集団がどれほど早く成長しているのかという話題だ。
この2つのトピックは、特に関連性の高い話題ではないが、だらだらとIPOニュースばかり話して、私が話したかったことを台無しにするつもりはない。ということで、まずはSECの話題をやっつけて、それから楽しい話題に進むことにしよう。
実際のIPOはこれから
先週はIPO関連ニュースで溢れていた、Coinbase(コインベース、未訳記事)とUIPath(ユーアイパス)の非公開申請、Poshmark(ポッシュマーク、未訳記事)の公開申請、そしてBumble(バンブル、未訳記事)が非公開申請をしたのではと伝えられた。要するに、IPO控室の出席簿に新しく4社が加わったということだが、その出席簿の中には公開を遅らせている(未訳記事)Affirm(アファーム)とRoblox(ロブロックス)もすでに含まれている。
そして、Chime(チャイム)、Robinhood(ロビンフッド)、Expensify(エクスペンシファイ)やその他の企業も、すでに公開に踏み切るのに十分な規模となっている。2021年のIPOブランドは、今年にひけをとらない豊作となりそうだ。
公開の場に出ていこうとしているユニコーンたちのおかげで、公開市場は過去最高の高値を更新している。今後数カ月の間に大きな資金の流れを目にすることになるだろう。これは、ベンチャーキャピタルのDPI(実現倍率)とTVPI(投資倍率)のメトリクス(Allen Latta氏ブログ)の総計が、より高騰することを意味する。すなわち現在の利回りに飢えた世界で、アセットクラス全体が、これまで以上に魅力的なものになることを意味する。
物語は続く。
ソフトウェアビジネスは一体どのくらいの規模なのだろうか?
先週の初めにTechCrunchはRamp(ランプ)の新ラウンドを取り上げた(未訳記事)。2月にローンチ(未訳記事)したRampは、当時は一部の人たちからは、Brex(ブレックス)のクローンとして軽視されていた。RampとBrexは、Divvyや他のスタートアップたち(現在はさらに2つ以上)と競合していて、顧客企業がリアルカードとバーチャルカード、およびソフトウェアを組み合わせて支出を管理することを助けている。
Rampは、いくつかの新しいソフトウェア機能とともに、そのプレスリリースの一環として成長指標を発表した。似たような指標に関してDivvyに問い合わせたところ、同じく提供を受けることができた。Brexは数字の提供を拒否したが、まあそれは仕方がない。そうそう、Airbase(エアベース)やPlate IQ(プレートIQ)といったいくつかの競合企業に言及することを忘れていた。
2020年3月に拡大シリーズAで2350万ドル(約24億3000万円)を調達した(未訳記事)ときに取材したのでAirbaseは入れておくべきだった(新しい資本は3倍の評価額で調達されたので、率直にいってシリーズBと呼んでもいいだろう)。Airbaseが重要なのはRampやDivvy、Brexと競合しているからだけではなく、ライバルと同じような製品を提供している一方で、そのソフトウェアにも課金しているからである。
これは私の知る限りでは、多くの企業と契約し、取引から収益を上げることに重点を置いているDivvyやBrexやRampとは対照的なやり方だ(カードの処理に使われているソフトウェアに課金しないやり方は、セールスをやりやすくして、理論的には顧客の成長率を高く保つ方法だ)。
しかし、Airbaseは法人顧客にソフトウェアに課金しているにもかかわらず、ものすごい勢いで成長を続けている。AirbaseのCEOであるThejo Kote(テジョ・コーテ)氏からのメールによると、スタートアップの年間経常収益(ARR)は2020年に2.5倍に成長し、取り扱う支払い額は「年率換算で7倍に増加している」とのことである。
それらはとても素晴らしい数字だ。まだ取材したことはないがPlate IQも成功している企業のようだ。有名投資家のGarry Tan(ゲリー・タン)氏はTwitter(ツイッター)上で、同社は「年間取引で5億ドル(約516億6000万円)以上を達成し、利益を上げている」と述べている。対照的に、比較的若いRampは、管理している支払い額の合計が1億ドル(約103億3000万円)を超えたことを発表したばかりだ。
今回の一連のレポートからわかることは、特定の企業が勝つということではなく、特定の企業が明確なリーダーであるということでもない。それどころか、今週は1つのソフトウェアのニッチ分野を探ってみて、ソフトウェア市場がいかに大きいかを思い知らされた。
これらの競合するスタートアップ企業が、同時にこれほど急速に成長できる余地はどのように生み出されるのだろうか?その答えは、世界経済が巨大であり、ソフトウェアはいまもなお、その重要度をどんどん増している最中だということだ。私の予想では、ここでとりあげた5社のうち3社が上場できる規模まで生き残り、民間のライバルや公開されている巨人に買収されるのは2社にとどまると思っている。
どうなるかはやがてはっきりするだろう。なにはともあれ、VCのツイッターにはタレ込まないように。
マーケットノート
今回は、扱いやすくするために、残りの知るべきことを2つのグループに分けてみた。最初はラウンドに至らなかったもの。2つ目はラウンドに至ったものだ。では始めよう。
- Slack(スラック)のベンチャーキャピタルファンドがさらに復活している(Slackリリース)。親会社が自己資金でプロジェクトを進めており、資本プールは倍増し5000万ドル(約51億7000万円)に拡大した。
- StockX(ストックエックス)がIPO規模に到達した(未訳記事)。TechCrunchは先週、その資金調達ニュースを取り上げ(未訳記事)、その古着グッズのマーケットプレイスがIPO候補になっていると書いていた。ということで、内容を見てみた。予想通りに、IPO候補だった。
- The Informationが今週、SoFi(ソーシャル・ファイナンス)が第3四半期に約2億ドル(約206億6000万円)の収益を上げ(The Information記事)、EBITDA(利払い前税引前償却前利益)がプラスになったと報じている。
- Axios(アクシオス)がクリエーター経済の成長を報じている。びっくりしないでほしい。十分に真剣に取り組む価値がある分野なのだ、ぜひ取り組んでほしい。もしジョーク満載のポッドキャストがお好きなら、Equityでもこの状況についても話し合っている。
- Crypto(クリプト)も再び話題にのぼるようになった。資産カテゴリの中での最近の価格上昇は誇大広告に基くものではない(未訳記事)。
- Robinhood(ロビンフッド)には大変な1週間だった(未訳記事)。IPOを狙う同社の願いは現在の批判の中では実現しないだろう。最近の四半期で、何らかの法的問題がある中で公開を目指しているのは同社だけではない。だがともあれ、この株式取引会社が望んでいた週とはならなかった。そして そのライバル企業のPublic.com(パブリック・コム)はRobinhoodが罰金として支払わなければならなかった額と同じ位の資金を調達した(未訳記事)。やれやれ。
- スタートアップの評価額は、少なくともシリコンバレーでは、COVID不況の対極にある(未訳記事)。
さて、大規模ラウンドたちを紹介しよう。
大規模で重要なもの
今回の「その他のことなど」コーナーはとてもその名前にはふさわしくない。ということで、今年最後の記事では名前を変えてみた。ご紹介するラウンドはいずれも大規模で重要なものだ。
- ブラジルのCreditas(クレジタス)が2億5500万ドル(約263億4000万円)を調達した(未訳記事)。TechCrunchはこのラウンドを、ラテンアメリカに焦点を当てたフィンテックラウンドの大きなうねりの中に位置付けたい。
- Microsoft(マイクロソフト)のご近所であるベルビューに拠点を置くZenoti(ゼノティ)は、1億6000万ドル(約165億3000万円)を調達しユニコーンとなった。何の会社かって? シアトル・タイムズ紙によれば、「スパやサロンを管理するためのクラウドコンピューティング・ソフトウェアを開発している」とのこと。笑っちゃいけない。産業特化型SaaSは巨大なのだ。理髪店業界に特化したSaaSプレーヤーのSquire(スクワイア)は先々週には2億5000万ドル(約258億3000万円)と評価されていた。
- さらにペイメントに焦点を当てたラウンドをとりあげよう。今回より多くの資金を調達したおかげでGoCardlessはほぼユニコーン(CNBC記事)に近付いた。
- さらにフィンテックの話を続けよう。若い顧客向けに「すべてのファイナンスのニーズに対応するオールインワンプラットフォームを目指す」フランスのLydia(リディア)は、Tech.EUによれば、今週シリーズBを8600万ドルに拡大した(Accelがラウンドを主導した。Public最新のラウンドも同様に主導した同社にとっては多忙な1週間だった)。
- TechCrunchは、ClickUp(クリックアップ)が10億ドル(約1033億円)の評価額の下に、1億ドル(約103億円)のラウンドをまとめたことを報じている(未訳記事)。同社は6月に3500万ドル(約36億2000万円)を調達した。なぜClickUpを気にするのかって?2020年にいくつかみられた2回ラウンドの一翼を担った企業だからだ。Ramp(ランプ)、Welcome(ウェルカム、未訳記事)、SkyFlow(スカイフロー)。リストはまだ続く。
- インシュアテックの世界では、デジタル生命保険プロダクトのBestow(ベストウ)が7000万ドル(約72億3000万円)を調達した(fin Ledger記事)。インシュアテックは最近活況で、このスペースのプレイヤーであるAgentSync(エージェントシンク)は、今年だけで2回の調達ラウンドを実施している(未訳記事)。
- 最後に、特にPayPalのための暗号化作業を請け負うPaxosが、巨大なシリーズCで1億4200万ドル(約146億7000万円)を調達した(Forbes記事)。暗号化ブームとしてこれを書き留めておこう。
さてそろそろJUUL(電子タバコ)の霧に巻かれつつ、Civ 6(シヴィライゼーション VI)の私の宿敵(Twitter投稿)に会いに行くことにしよう。ではごきげんよう。
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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:新規上場 / IPO
画像クレジット:Nigel Sussman
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(翻訳:sako)