手ぶらで観光を
せっかくの旅行なのだから、身軽に観光したい。しかし、旅行には手荷物がつきものだ。ホテルのチェックインまでの時間や観光の合間、荷物を預けておくことができればもっと満喫できるのに。確かに、駅にはコインロッカーがあるが、都合よくコインロッカーが空いているとも限らない。本日ローンチしたecbo cloakはこうした手荷物の問題を解消する。ecbo cloakは店舗の空きスペースを可視化し、ユーザーが荷物を預けられるようにするサービスだ。
ecbo cloakにはカフェやレンタサイクルといった店舗が空きスペースを登録している。ユーザーはエリア別に空きスペースが検索可能だ。店舗までのアクセス、店舗で預かれる荷物の個数や営業時間など詳細情報を確認し、必要事項を入力して空きスペースが予約できる。
お店に着いたら、店舗側は預る時に荷物をスマホで撮影して「預かり証明」を発行し、ユーザーと共有する。写真を撮るのは、荷物の引き渡し時に荷物を間違えないためでもある。用事や観光が終わってユーザーが荷物を受け取ったら、承認ボタンを押して、引き渡しが完了だ。
このサービスを利用するにあたり、ユーザーは氏名、電話番号、メールアドレス、クレジットカードの決済情報を予め登録しておく。荷物の引き渡しが完了した時点で、決済が自動で行われる。ユーザー登録があれば、ユーザーが荷物を預けっぱなしで取りに来ないといった問題も減りそうだ。預かり料金は一律でバッグサイズが1日300円、スーツケースが1日600円だ。
サービスのローンチ時点で、すでに渋谷のカフェを中心に100店舗以上がecbo cloakに登録しているという。ただ、登録店舗は運営の様子を見ながら順次公開していく予定だとecboは説明している。現時点ではウェブブラウザでのみサービスを展開しているが、今後iOSとAndroidアプリもリリースする計画だ。
店舗がecbo cloakに登録するメリットとしては空きスペースの活用で副収入を得られることと観光客へのPR効果とecboの代表取締役社長の工藤慎一氏は説明する。ユーザーは荷物を預ける時と引き取る時に必ずその店舗を訪れることになり、その店のサービスにも興味を持つきっかけになるだろう。ecbo cloakではカフェやレンタサイクル店の他に、レンタル着物といった観光客向けにサービスを提供する店舗の登録も進めていく計画だという。
50年ぶりのコインロッカー革命
工藤氏はUber Japanにインターンとして立ち上げ初期から関わり、2015年6月に自分でもシェアリングサービスの立ち上げを考えecboを創業したという。当初は、オンデマンドの収納サービスを手がけていたが、渋谷駅で訪日外国人旅行客のコインロッカー探しを手伝ったのがecbo cloackを開発するきっかけになったと工藤氏は話す。その旅行客はスーツケースを預けられる場所を探していたが、渋谷にはそのような場所が少なく困っていたそうだ。工藤氏がその後調べたところ、渋谷駅のコインロッカーの数は1400個程度で、そのうちキャリーケースも収まるサイズのものはたった80個程しかなかったという。
2016年は訪日外国人旅行客が2000万人を突破し、政府は2020年には4000万人に伸ばす計画でいる。2020年には東京五輪も控えている。「初めて日本を訪れる旅行客にとって、どこにあるか分からないコインロッカーを探すのも手間ですし、行ってみるまで空いているか分からないのも問題です」と工藤氏は指摘する。訪日旅行客が荷物に煩わされず、旅行や観光を存分に楽しんでもらうためにも、ecbo cloakは店舗の空スペースのシェアリングでこの手荷物の課題を解消したい考えだ。
日本でコインロッカーが普及したのは、1964年の東京五輪の時なのだと工藤氏は話す。観光客の増加を見込み、荷物預かりの体制を整えるために駅などでコインロッカーの導入が進んだ。ただ、それ以降50年間、コインロッカーはさほど進化していない。2020年には再び東京五輪が開催されるが、今回はこのシェアリングで荷物の預かりに革新的な変化を起こしたいと工藤氏は話している。