今年は、大部分を、あるいは実質的に、中国の大企業に所有されている多くのテック企業が株式公開を果たしている。例えばBaiduのiQiyiサービス、Xiaomiの支援を受けたHuamiやViomiの名前などが挙げられる。そして今度は沢山の予想が出される中で、Tencentの音楽部門であるTencent Music が公開の動きを見せ始めた。
TME(Tencent Music Entertainment )が、突然米国での公開に向けて最初の書類を提出したのだ(取引所は指定されていない)。最初の調達目標額は10億ドルだが、それは変更される可能性がある。今年初めのSpotifyのIPOのデータから考えれば、Tencent Musicは少なくとも120億ドルの評価額が付くはずだ。このため現在の目標学から、どれほど高い目標額が設定されることになるかが興味の対象となる。
Tencentの4つのストリーミングサービスであるQ Music、Kugou Music、Kuwo Music、そしてWeSingを擁し、Tencentの子会社でもあるTMEを、スタートアップと呼ぶことははばかられる。これらには、オーソドックスなストリーミングサービスやカラオケアプリ、そしてライブストリーミングサービスなどが含まれている。それらは一般に、中国トップ4の音楽アプリであると認識されており、月間ユーザーは8億人以上だと言われている。
Apple MusicやSpotifyあるいはPandoraとは異なり、TMEは収益性の高いビジネスであるが、その総売上額や収益化の方法はそうした「西洋の兄弟たち」とは全く異なったものである。Spotifyやその類似サービスたちは、サブスクリプションと広告付き無料サービスで成り立っているが、Tencent Musicはその売上の大部分を、ソーシャルアクティビティ、広告、そして楽曲販売から得ている。
Tencent Musicの2017年の売上は17億ドル(110億人民元)で、1億9900万ドル(13億人民元)の利益をもたらした。既に2018年上期には、13億ドル(86億人民元)の売上と、2億6300万ドル(17億人民元)の利益が計上されている。サブスクリプションの比率は売上のわずか30%であり、残りはライブストリーマーに送られるバーチャルギフトや、プレミアムメンバーシップから得られている。
この成功の大部分は、Tencentのサービスとの連携に由来するものだ。特に10億人のユーザーを抱えるWeChat、そしてQQなどの寄与が大きいが、Tencent Videoの存在も大きい。これはTencent Musicのサービスたちがユーザーにリーチするための手段を提供し、友人グラフやネットワークを通しての拡散を可能にする。それによってマーケティング費用は抑えられ、最終的な利益を上げるのに役立っている。売上に対するTencent Musicのコストは60%で、これはユーザーを呼び込むために、より多くの仕事を行わなければならないSpotifyの75〜80%とは対照的だ。
興味深いことに、Tencent Musicはその目見書の中で、サブスクリプションによる売上が、時間とともに増加することを期待していると指摘している。
「2018年第2四半期の課金率は3.6%であり、これはiResearchによって挙げられている、中国のオンラインゲームやビデオサービスや、世界的にみたオンラインミュージックサービスに対する課金率の数字に比べて遥かに低い。このことが意味することは、この先大いに成長する余地があるということである」と同社は書いている。
だが、中国内における違法コピーの氾濫を考えると、それを額面通りに受け取ることは難しい。業界関係者は、その状況は変化していると主張している。それは自分たちのための発言ではあるが、Tencent Musicの代替「ソーシャル」収益モデルが、この先のサブスクリプションベースのサービスと食い合いになるかどうかは明らかではない。
いずれにしても、同社は西側からも学ぶことができるかも知れない。Spotifyは昨年の株式交換を通してTencentの9.1%を保有していて、反対にTencentはSpotifyの7.5%を保有している。このことによって、Spotifyは東南アジアでTencentの所有するJoox(TMEの一部ではない)と競合はしているものの、双方からのシナジー効果が期待される。
現段階での重要なポイントは、Tencent Musicが中国のトップストリーミング企業であり、それが中国の主要なメッセージングプラットフォームであるWeChatに依存しているということだ。 それは幸先が良い事実だが、目論見書の中で何度も繰り返されているように、音楽の収益化は中国の中ではまだ新しい概念であるため、参考にできる事例はほとんど存在していない。
それでもこれは、中国のテック企業にしては珍しく大量に現金を失っていないIPOの例である(大量の累積赤字を抱えたままIPOを行ったNioの例を考えて欲しい)。Tencentとのコネクションを考えると、人気が出る可能性は高い。
[原文へ]
(翻訳:sako)