Axonに名前を変えたTaserが警察に対して無償でボディカメラを提供

スタンガンメーカーのTaserはAxonになった。旧来のブランド名は、(テイザー銃などで)長年親しまれてきていたが、同社はそのイメージを離れて、ボディカメラとエビデンスマネジメンへビジネスを注力すべきときだと感じたのだ。その動きの一環として同社は、問い合わせがあった警察署にはどこにでも、ボディカメラとソフトウェアを無料提供することにした。そのとおり。奢りのビールのように無料で、「どこにでも」という言葉通りどこに対してもだ。

この同社を動かした、ポリシーとテクノロジーの大きな変化について、私は創業者のRick Smithに話を聞いた。

「私たちは弾丸を時代遅れのものにするために23年前にガレージで創業しました」と彼は言う。「しかし、Taserブランドの力はひとつのものに注がれます。私たちはこの力を、カメラに注ぐことにしました。ノスタルジーもあり、社内には大きな抵抗がありました。しかし、組織はいつか変化しなければなりません」。

Taserのブランドは私たちのよく知るスタンガンとして残るが、親会社はAxonとなる。株式取引所のティッカーシンボルはAAXNだ。

覚えているひともいると思うが、AxonはTaserが数年前にウェアラブルカメラに力を注ぐために立ち上げた部門だ。当時テクノロジーが使えるようになってきていて、Taserはそれを警察などに持ち込むことのできる絶好のポジションにいた。それは大きな成功を収めてきたが、導入の利点(いくつかは明白で、議論の余地のあるものもある)に照らすと、普及は皆が考えるほどには急速には進んでこなかった。現在警察の20%ほどがボディカメラを利用している。

「それは単に慣習の問題なのです」とSmithは言う。法整備の遅れ、予算の制約、ならびに単なる懐疑的な見方が物事の進み方を遅くしている。なので、Axonのソリューションは、ストレートに製品を提供することになった。少なくとも期間限定で。

手続きはとても簡単だ、申請すればAxon Body 2カメラを全ての警官のために入手することができて、同時にソフトウェアやそれを扱うインフラ、そして使用法に関するオンライントレーニングも提供される。1年間無償で全てを義務なしに利用することができる。

「1年後に物品を返せば、ダイム(10セント硬貨)1枚すら払う必要もありません」とSmithは言う。「これは双方に益のあるやり方だと思います」。

需要をさばくことは本当に可能なのだろうか?会社は「何十万台もの在庫を持っています」と彼は答えた。「私たちはこの計画をそれなりの期間温めてきましたし、昨年多くのサポートスタッフも追加しています」。

さて、これがAxonの企業としての良心のもとに行われているわけではないことを、わざわざ指摘する必要はないだろう。同社は警察のカメラシステムのデファクトであることで、多大な利益を得る立場にある。そして無償の提供は個々の警察にとって抗うことは難しく、1度そのメリットが広く知られるようになれば、それを止めることはさらに難しくなる、ということは指摘しておくことにしよう。

こうした状況から私はこれをトロイの木馬の一種として形容することもできるが、ボディカメラは、警察活動の質を高めるために、私たちがとることのできるおそらくとても有益な1歩だというのが、私個人の(そして明らかにSmithの)意見だ。

ボディカメラはすべてのやり取りの貴重な記録を提供するだけではなく、膨大な時間とお金を節約してくれる。

「警官はその3分の2の時間を、データ登録職員として過ごしています」とSmithは言う。「そしてデータが入力されたとしても、誰もその報告を信じていないのです!カメラからははるかに良い情報を得ることができます。それは報告書に書かれるような内容を全て含んでいるのです」。

「私たちはそうした官僚的負荷を削減できると考えています、そしてもしそれが実現されたなら、私たちは世界の警察力を3倍にすることができるのです」。

まあ大言壮語だが、少なくともその口には自分の金を詰め込んでいる。このプログラムはAxonにとって当初はとてもコストのかかるものになるが、どうなるにせよ長期的には良い方向に進むこと以外は想像できない。そしてその一方で、多くの警察署が、予算のせいで長年持つことのできなかった彼らに役立つテクノロジーを手にすることになる。もしそのためのコストが、1つの会社をその領域で優位なものにするというものならば、私はそれは合理的なトレードオフだと思う。

もちろん、現在の報告書の代わりに使われるようになるには、Axonのソフトウェアはもっと洗練される必要がある。現段階ではボディカメラは一種の補完証拠であり、苦労の多い報告書書きが一般的である。しかし、物事を迅速化するために、情報をビデオから抽出することの自動化が計画されている。

例えば、システムはGPSや他の統計情報と共にイベントにタグ付けを行い、ビデオ内の任意の会話をテキスト化することが可能だろう。そうすれば、警察官がある人物が通行止めの最中に何を言ったかをチェックするために、2時間のビデオを舐め回す必要はなくなる。単に会話やナンバープレートを検索すれば良いだけだ。またAIシステムを用いて、画像にボカシを入れたり、見物人の顔を不明瞭化することができるだろう。これによってビデオを公開したり公判に提供することも可能になる。

データの発掘は不気味なほど迅速に行うことができるようになる、SmithはAxonが何百万時間もの映像の集積と考察によって、一種のメタ監視データベースとして用いられるのではという考えは即座に否定した。

「私たちは、社外の専門家とAIの倫理委員会を形成しています」と彼は言う。「テクノロジーを正しい考慮のもとに構築することは重要ですから」。

新しい名前を得た会社には大いなる1年となることだろう。そしてそれが装備に向かう警察にとっても大いなるものになることを祈ろう。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。