Bitcoin 2.0とユーザ体験のトークン化

[筆者: Lisa Cheng]

編集者注記: Lisa ChengはVANBEXのファウンダで、同社はデジタル通貨とブロックチェーンプロトコル、および分散化技術に特化したマーケティングとリサーチの企業だ。

Bitcoinはまだ市場開発の初期段階だ。しかしわれわれは今、進化の次のステップのために必要なデータの集積を、徐々に実現しつつある。そのために私は、Bitcoinと、Bitcoinのブロックチェーン技術関連の仕事をこれまで継続し、アプリケーションとネットワークとユーザが均質に融合して、自律的で持続可能な宇宙を維持している未来の実現に向けて、貢献してきたつもりだ。

持続可能な技術によるこの未来の環境は分散的であり、リソースは循環性を持ち、さまざまな距離と、さまざまな依存関係にまたがって広がる。そしてそのベースとなるユーザは、さまざまなプラットホームやアプリケーションとのダイレクトな対話を通じて、自分の技術的ニーズを実現していく。このような次世代の進化相を、私は“ユーザ体験のトークン化”(tokenizing the user experience)と呼んでいる。

この進化を進めるトークンはBitcoin 2.0のエコシステムの一環であり、Bitcoinのブロックチェーンを使って作られる。それらはブロックチェーンのプロトコルのメタレイヤ(メタ層)に所在するから、“メタコイン”(metacoins)とも呼べる。Bitcoinコミュニティのメンバーの中には、それらがアプリケーション固有であるため、“アプリケーションコイン”(app coins)と呼ぶ人たちもいる。

MaidsafeStorjFactomなどは、分散アプリケーションと分散インフラストラクチャを暗号化トークンでサポートできることを示した最初の例だ。ブロックチェーンのオープンで透明な台帳を利用することに加えて、暗号通貨を使ってこれらのメタコインを作るプロジェクトは、グローバルな規模でトークンを容易に記録、利用追跡、および配布できる。すなわちどんな時点においても、プロジェクトはどれだけのトークンが使われているか、どのアドレスがそれらを保持しているか、どこがそれらの起源かを確認できる。それは新しい形のユーザとの対話であり、そこではトークンが、プロジェクトへの市場の関心や、ユーザの活動そのものを表現する。

セキュリティを確保するためにBitcoinは、一連のアルゴリズムを使って開発され、そのアルゴリズムはBitcoinやトークンを含むすべての暗号通貨に、情報が数学の法則に即していることを確認する能力を与える。オンラインのコマースでは、従来の決済方法が簡単に贋造されるため、本人性の確認がとくに重要であり、しかもそれが迅速容易であることが求められる。暗号通貨の利用は、それ自体が商業的対話の新しい形であり、マネーの贋造はそこに存在しえない。

このモデルは、国境や領土や言語を超えた多様なシステムの分散ネットワークを作るときに真価を発揮する。そしてネットワークトークンへのこのアプローチはまだ新しいので、トークンモデルを利用するプロジェクトが今後ますます登場し、新しい革新的なアイデアを数多く持ち込むだろう。そこで最近では、イデオロギーとコインが結びついているような政治的モデルのブロックチェーンを追求するプロジェクトも、現れている。

Storjのトークンは、同社のクラウドネットワーク上のストレージスペースを買うために使われている。逆に言えばユーザも、自分の余分なコンピュータのハードディスクスペースを、DriveShare(Storjネットワークのアプリケーションパート)に貸し出して、これらのトークンを稼げる。トークンはすべてほかのユーザへ転送可能であり、しかも、どのトランザクションでも追跡できる。トークンそれ自身のトランザクションのフローに基づいて、Storjのチームは、ユーザによるネットワークの使われ方を判断し、ユーザの活動に基づいてネットワークリソースの最適配分をすることができる。

ネットワークアクセストークンというコンセプトは古くからあり、いまでもRSAの形でセキュリティアクセスのために日々使われている。それはソフトウェアの購入者にライセンスキーとして与えられたり、ゲームのコードを事前に購入したゲーマーに配布されたりしている。それらはユーザのアクセスを許すための標準的な認証方法であり、ネットワークの許可証を与え、本人性を証明する。このような形での暗号化の利用は、ソフトウェア企業が従来から使ってきた購入証明にイミュータブル(immutable, 不可変)のトークンを組み合わせる。それによってアプリケーションは、円滑なユーザとの対話を積極的に進められるようになる。

ここで重要なのは、ブロックチェーン上のトークンからローンチするプロジェクトが、分散化とオープンソースによる開発と透明性を助長することだ。実質的にトークンは分散ネットワーク全体にわたって利用され、ユーザは複数のシステムやアプリケーションにまたがってコインを稼得/支出できるようになる。そのアドバンテージは、それが検証可能で贋作不可能なデータであることだ。このような、証明可能で転送可能なトークンはネットワーク資産のひとつの形としての価値があり、ユーザ間の交換/取引や、コモディティとしての稼得が可能だ。

オープンソースのプロジェクトがブロックチェーンを使う独自のトークンを発行するようになると、分散アプリケーション開発の新時代が訪れる。そこではシステム全体が自分自身の資産により稼働され、それによってネットワーク全体を保護し活力を与える。このようにしてトークンを利用するプロジェクトの開発は、ユーザ獲得とライセンシングの過程を自分が保有することからの利益を得る。クレジットカード処理の失敗や、銀行送金の遅れ、詐欺的なトランザクション、といったサードパーティの問題が、ユーザベースの成長の障害になることは、もはやない。

Satoshi Nakamotoという別名を持つ作者が書いていたように、Bitcoinは、フォールトトレラント(過失を許容する)なロギングによる分散システムと、グローバルに一貫性/無矛盾性のあるシーケンシングという特徴を持つ。Bitcoinのオリジナルのペーパーを書いた当人は予想していなかったと思うが、ブロックチェーンは、草の根のアプリケーション開発をサポートできるスケーラビリティと分散化のモデルとして提示されるようになったのだ。

このシステムによってわれわれは、ユーザの信頼がトークンで運ばれる様相を目撃している。それは通貨としてのBitcoinの理解を、プラットホームとしてのBitcoinとブロックチェーンへと連れて行く。暗号通貨の利用は単純なピアツーピアのトランザクションを超えて、検証可能なデータの積極利用へ向かう分散化のモデルに進化する。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。