Blue Originは月着陸船のSpaceX発注に抗議し連邦裁判所でNASAと一騎打ちに

億万長者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が率いる宇宙企業Blue Originが、NASAを法廷に引っ張り出そうとしている。米国時間8月17日に同社は米連邦請求裁判所に、月着陸船の契約をライバル企業のSpaceXにのみ与えたとして同政府機関を告訴した。

裁判所が受け付けたその訴状は、有人着陸システムの提案に対するNASAの評価が「違法で不適切」であるとしている。

同社の広報担当者はTechCrunchに次のように語っている。「Blue Originは、有人着陸システムのNASAの取得過程に見出される欠陥を修復する試みとして、米連邦請求裁判所に訴状を提出しました。この調達過程と結果に見られる問題は、対策が講じられ、公正が回復され、競争が作り出され、米国の月への帰還が確実に安全になるべきです」。

その有人着陸システム(HLS)は、NASAが次に予定しているアルテミス計画の基幹的な部分であり、Apollo(アポロ)の時代以降初めて、人類を月面に帰還させるものである。NASAの計画では、2024年に人類を月の南極に着陸させることを目指している。

2021年4月、NASAはその契約を、29億ドル(約3170億円)で入札していたSpaceX1社だけに与えた。従来からリスクヘッジを重視してきたNASAが、今回に限って最初から1社に絞ったことは驚きだった。わずか数週間後にBlue Originと、同じく着陸船に入札していた国防関連の契約企業Dyneticsが、それぞれ別々に米会計検査院(GAO)に抗議した。GAOは後にNASAの決定を支持し「契約の発表は、複数の落札または単一の落札、または落札なしとする権利を留保している」と主張した。

GAOがNASAを支持する理由の詳細は、TechCrunchのDevin Coldeweyの記事にある。

関連記事
米会計検査院が月着陸船開発契約をめぐるBlue Originの抗議を却下
連邦政府はSpaceXがNASAの月着陸船建造を受注したことに対するBlue OriginとDyneticsの異議を退ける

GAOの決定が発表されて、本件はSpaceXの勝ち、Blue Originの負けで一見落着したかに思われた。しかし連邦請求裁判所に提出された今度の新しい訴訟は、ジェフ・ベゾス氏の会社がそれを納得していないことの証拠だ。

NASAとしては、広報担当者がTechCrunchに、申立を受理し「目下、その詳細を調査中」と述べただけだ。

連邦裁判所に提出された書類がBlue Originの厳重な抗議を表しているとすれば、同社はソーシャルメディアに対しても別の攻撃を行っており、SpaceXのStarshipの信用を落とすことを目的とした一連のインフォグラフィックや、月へのミッションに使用するというNASAの決定を発表している。

画像クレジット:Blue Origin

そのインフォグラフィックスの1つはStarshipを指して、画像の横の赤い大きな文字で「あまりにも複雑でリスクが大きい」と指摘する。またその下には「これまで一度も軌道まで飛んだことがなく、まだ設計途上の打ち上げ船」とある。

今回の訴訟番号は1:21-cv-01695-RAHだ。現在、TechCrunchは、NASAにコメントを求めている。返事が届き次第この記事をアップデートしたい。

関連記事
ブルーオリジン初の有人宇宙飛行後、ベゾス氏とクルーが記者会見「より重大なミッションの練習」
SpaceXの大型ロケット「Super Heavy」と宇宙船「Starship」が初めて合体、全高120mは史上最大
SpaceXが初の買収、衛星ネット接続のSwarm Technologiesを全額出資子会社に

カテゴリー:宇宙
タグ:Jeff BezosBlue OriginSpaceXNASA裁判アルテミス計画GAO

画像クレジット:Joe Raedle/Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。