BMWは過去数年間、電気自動車、自動運転など状況がめまぐるしく変わり、顧客の期待が高まる一方である時代におけるラグジュアリー車メーカーであるというのは何を意味するのか、という疑問に向き合っている。結局のところ、その疑問は人がやがて運転しなくなったときの“究極のドライブマシーン”とは何か、ということになる。
BMWにとってこの問いへの答えは、高パフォーマンスの車という遺産も踏まえ、テクノロジーと乗車体験に改めてフォーカスする、ということになる。車という製品だけでなくビジネスモデルという点も含めて、この会社がどう変わりつつあるのか。率直にものを言うBMWデジタルプロダクト・サービスのヴァイスプレジデントDieter Mayに、同社が最新の車内オペレーティングシステムを発表した直後に話を聞いた。
「我々は、これまでの主力商品の車とは異なる、そして収入につながるようなデジタルロダクト・サービスをつくる」とMayは語る。「これらのデジタルプロダクトというのは、販売先の顧客と直の関係を築き、直接語れるようなチャネルや接触点を有するものだ」。
車産業において、こうした販売チャネルというのはディーラーに頼っていた。ディーラーというのは、客が車を購入し、サービスを受ける場所だ。あなたがどうした人物なのか、何を欲しているのかを把握しているのは(理想的には)ディーラーなのだ。このビジネスモデルでは車メーカーの役割というのは車を製造することだ。おそらく顧客が車の価格について何かしら情報を得るという点でオンライン上では少しは中心的な役割を担っているかもしれない。そのスタイルから抜け出すのだ。
しかしながら、それは、Mayが描いている未来の姿ではない。その姿とは、ドライバーやユーザー体験を持っているAppleやGoogleといった大テック企業のものとも違う。
「我々は車におけるデジタルプロダクトを作ろうとしているのであり、と同時にチャネルや接触点としての車を手掛けようとしている」とMayは言う。「アプリやパーソナルアシスタントを用意するだろうが、それらをもって我々はユーザーのプロフィールをつくり、セールス部門に提供する。今日、どの車メーカーも顧客と直接やりとりをすることはほとんどできない。というのも顧客はディーラーに属していて、その後のセールスやファイナンシャルサービスといった各ビジネスは束ねられておらず、それぞれが別々に顧客に連絡をとっている」。
だからこそBMWにとって車におけるデジタル体験というのは意味のあることなのだーおそらく今後数週間、数カ月以内に何かしらの発表があるだろう。しかしBMWは、この変化をいかに新たなビジネス機会をつくるのに生かすかという視点で先を見ている。そのビジネス機会とは、数ドルの車内Spotify購読の販売だったりする。しかしここで最もMayが興奮しているのは、同社の車を所有している限りそのオーナーとつながれることにある。「これは素晴らしいことだ。というのも、製品である“車”を常にフレッシュな状態にでき、デバイスのように管理できるからだ」と語る。
ここで Mayが示唆することは、BMWが車販売に専念するというのではなく、車が使われている限りユーザーから何かしらの収入を得るモデルを作る、ということだ。一例として、MayはBMWが充電パッケージ付きのMiniを、また均一料金で充電できる購読付きで販売するかもしれないと述べた。「ここではたくさんのチャンスがあるが、車の購入前後でスマートに行わなければならない」。
しかし、もしBMWが顧客をカバーしたいのなら、それはディーラーシップに変化が生じることを意味する。「ディーラーは今後、違う役割を模索しなければならない」とMayは認める。「我々は、ディーラーとデータを共有し、またディーラーも我々とデータを共有することを想定している。大きなケーキのほんの一部分だとしても、ないよりはマシだ」。
客は今後もサービスを受けるためにディーラーに足を運ぶだろう。ゆえにBMWはそれを完全にやめさせようとは思っていない。しかし顧客との関係面で大部分を自社で掌握したいと思っている。結局のところ、車メーカーを代表するのは、テストドライブを提供したり車を自宅まで届けたりするディーラーなのだ。
「誰もが自動運転や電気自動車などについて語るが、我々にとって最も重要なことは、顧客重視の企業にならなければ、我々は必ず失敗するだろうということだ。顧客の生活、そして車の中でもデジタル要素は今後も増えるだろう。それを理解していなければ、我々は問題を抱えることになる」。
最新の車載システムに関して、BMWはのConnectedDrive systemの登録ユーザーが現在300万人超であることをMayは明らかにした。しかしさらに重要なのは、ユーザーインタラクション数がユーザー数を上回るかなりのスピードで増えていることだ。興味深いのは、こうしたユーザーは消費者向けインターネット企業とかなりうまくやっているというふうにBMWが考えていることだ。チームが月ごと、週ごと、そして毎日のアクティブユーザーを追跡した場合、チームはその数がアップデートするごとに増えるよう取り組んでいる。
車メーカーが長らく格闘してきた問題の一つに、車はスマホよりもずいぶん長く使うものであるために、車に搭載したテクノロジーがすぐに“廃れて”しまうことがある。現在はクラウドにいつもつながるようなコネクテッドカーの開発に専念しているので、BMWは(平等に言えば競合する他のメーカーも)車載ソフトウェアをアップデートできる。これは新しい車については当てはまるが、古い車ではそうではなく、その差は残るーBMWとMiniブランドの標準化されたモデルに関して言えば、2、3年前から直近にかけて発売されたものであれば問題はないようだ。
「車産業において、多くの人がすべては20年前のものにさかのぼって互換性があるようにするべきと考えている。しかし私の考えでは我々はスマホベンダーのようになるべきだ」とMayは言う。
ソフトウェア産業について言うと、BMWはミニマルで有能な製品に類似した新機能をしばしば発表する。その新機能は必ずしも、ラグジュアリーな車を買う人が慣れているというものではないが、こうすることで新機能をテストし、使用されるようになるにつれ機能を拡大させることができる。
BMWにとっての次の確実なステップは、顧客のことをよく知っているインターラクティブなパーソナルアシスタントを車に搭載することだ。この機能はかなり使われるようになるだろう、とMayは確信している。詳細についてはまだ明らかではないが、BMWチームは今秋より多くのことが明らかになるとヒントをくれた。
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(翻訳:Mizoguchi)