Faceboookは新たなイニシアチブのもと、人道支援団体に対して被災地域のユーザーの位置情報を提供することを決めた。これにより、各団体は災害発生時に市民の避難場所や避難元となる地域を把握できるようになる。このFacebookの決定からは、ユーザー追跡データの大きな可能性を感じることができる一方で、同社はこのデータを使って他にどんなことができてしまうのかという問いが再び頭をよぎる。
Facebookで公共政策リサーチマネージャーを務めるMolly Jackmanは、ブログポストと動画の両方で新たな”ディザスターマップ”について説明しており、関連情報はまずUNICEFや国際赤十字赤新月社連盟、国連ワールドフードプログラムと共有されることになる。
提供情報は大きく以下の3つのカテゴリーに分けることができる。ちなみに、全てのデータはGPSのほか、ユーザーがFacebook上で何かしたときに生成される位置情報から収集されていると考えられる。
地域別人口密度マップ(Location density maps)からは、直近でユーザーがどこにいたかについての大まかな情報を掴むことができるので、時系列で並べたり他の情報と比べたりすることで有用な洞察を得られる。
ムーブメントマップ(Movement maps)は、近所内であれ異なる街のあいだであれ、ユーザーがいつ、どのように移動したかということを示すものだ。この情報があれば、その時々の避難場所や障害にリソースを集中させることができる。
安全確認マップ(Safety Check maps)には、どこでユーザーがFacebookの安全確認機能を利用したかが表示される。もしもユーザーが一か所に密集していれば、その場所は洪水の影響を受けにくい、もしくは地震の影響をそこまで受けなかったところだと考えられる。
どこに水を輸送し、どこに避難用のシェルターを設置すればいいかといったことを考える上で、上記のような最新情報がどれほど役に立つかはすぐに想像がつくだろう。もちろん全ての位置情報からは個人情報が取り除かれ、ひとつの塊として扱われる上、パートナーシップを結んだ各団体は「Facebookのプライバシースタンダードを尊重」しなければならないとJackmanは記している。
その一方で、今回のようにFacebookがユーザーデータを使って社会の利益になるようなことをしようとすると、同社は他に何ができるのかと疑わずにはいられない。
一体Facebookはユーザーの移動に関し、他にどのような情報を(恐らくは広告主のために)追跡しているのだろうか? 今回のような実験的な試みに自分のデータが使われているとユーザーはどのように知ることができるのか? 利用される情報にはFacebookのプラグインやクッキーから拾い集めたデータも含まれているのだろうか? 誰がデータにアクセスすることができ、データの粒度と匿名性はどの程度なのか?
Facebookには上記のような問いに回答する法的な義務はなく、私も同社に悪意があるのではと疑いたくはない。しかし、人道的な目的と私的な目的の両方を簡単に満たせるようなツールが誕生すると、なぜか前者の話しかきかないというのは気になる点だ。
いつもの通り、FacebookやGoogleのように大量のデータを保有している企業が「集めたデータは〇〇の目的では使いません」と明言しない限り、あなたのデータはまさにその目的でも利用されていると考えた方がよいだろう。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)