Fujitsuのシニア向けスマートフォンはAndroidを賢く使って複雑さを隠している

日本の電子機器メーカーFujitsuは、国内スマートフォン市場からの脱皮に慎重だった。同社はその細身で洗練されたハイエンド機で知られているが、今月ヨーロッパ進出を発表し、そこでは混み合っている高級機市場を避け、カスタム化Androidベースのスマートフォンでシニア層のニッチを狙う。 Stylistic S-01は、年長の人たちが使いやすいようにデザインされている。Fujitsuは、同機をFrance Telecom/Orangeと提携して6月にフランスで発売する予定だが、今回モバイル・ワールド・コングレスでお披露目し、本誌も手に取ることができた。

ちなみに、シニアモバイル分野に参入するのはFujitsuが最初ではない。実績のあるところで、Emporiaはもっぱら簡素化した多機能電話を作っているし、Doroもさまざまな端末を作っている(タブレット用ソフトにも手を出している)Doroは、昨年のMWCで独自のAndroidベースのシニア向けスマートフォンを発表している。

本体は持ちやすいようにラバー地でコーティングされ、〈今日の〉スリムで洗練されたハイエンド機よりも曲線的で手になじみやすく、通常の板状電話よりも落としにくい。前面には4インチのタッチ画面の下に明瞭に表記されたホームボタンが置かれている。ボタンはわずかに出っぱっていて押しやすい。側面には、電源、音量の上下ボタンがあり反対側には専用のカメラボタンがついていて、それぞれラベルがついている(ただしアイコンによる)。これらのキーはわずかに出っぱっているが、うっかり押してしまうほどではない。

Fujitsuは、静電容量タッチスクリーンの感度を意図的に低くすることによって、ターゲットのユーザー層が誤ってキーを押す可能性を減らしている。私がいじっている間、レスポンスが悪いと感じたことはなかったが、画面上のボタンを意識的に強く押さなければならない場面はあったが、これは狙っている機能を再確認させるものだった。

ハードウェア面にはいくつか奇妙な点が見られた。Micro USBポートにはカバーがかかっていて、爪で開いてやる必要がある。このカバーは防塵防水のためと思われるが、充電が簡単ではないことを意味している。

本機は、非常時のためのアラーム機能も備えている。これは、持ち主がトラブルに見舞わらた時に近隣に大きな音の警報を鳴らすと同時に、事前に選んでおいた相手に自動的に電話がかかるしくみだ。アラームボタンは本体背面のカメラレンズの左側にある。この機械式ボタンはやや小さい上に、これまた爪などで引っぱり出す必要がある。もちろん、誤ってアラームが鳴るのは困るが、非常時に鳴らすのは少々難しそうだ。

AndroidであってAndroidでない

ソフトウェアに話を移そう。ここはまさしくこの端末が他のAndroid集団と一線を画している部分だ。簡易化されたカスタムUIは、キーを前面に押し出し、複雑さを奥にしまい込み、持ちやすさがよく考えられている。ヘルプボタンとガイドの他、説明書も電話機に内蔵されている。ホーム画面には大きくはっきりと名前を付けられたアイコンが並べられ、下方へスクロールして使用頻度が少ないと思われる機能になるとアイコンが小さくなる。2つある大きなボタンは、「発信」と「電話帳」(”phonebook”。”contacts”[連絡先]よりもシニアに優しい表現)だ。

メッセージとメールもホーム画面のトップにあり、他に1~3の数字がついたプリセットできるボタンがある。ずっと下までスクロールすると、最新ニュースと天気を表示する情報ウィジェットがある。その下には、様々な機能が格子状に配置されていて、これも明確に名前が付いている。インターネット、カメラ、マップ、ビデオ、ギャラリー、ヘルプフォーラム、マニュアルなどだ。唯一やや地味で目立っているのが「Play Store」と書かれたボタンだ(ありがとうGoogle)。

Androidアプリは、Play Storeまたは「アプリをダウンロード」ボタンを使ってダウンロードできる。他のプレインストールされたアプリは「その他のアプリ」と「Orangeのサービス」の下に隠されているので、簡易化されていると言っても機能そのものが削除されているわけではない。むしろ、利用者が少し堀り下げてみる勇気がでるまで危険を回避している。

デザインにはよく考えられた小さな工夫が数多くある。電話帳アプリは伝統的ファイロファクスに似せてあり、「私の電話番号」というボタンが自分の番号を覚えられない人を助けてくれる。ギャラリーにも「写真を撮る」ボタンがあり、カメラを探してギャラリーに行った人を正しい方向へ導いてくれる。バックボタンにもはっきり”back”と書かれていて、暗号めいたシンボルで混乱させられることがない。そしてブラウザーのトップには “?” ボタンがあり、初めてのモバイルウェブ利用者にブラウズ方法を説明してくれる。

他のアプリもうまく削ぎ落として簡易化されわかりやすく表示されている。例えばカメラアプリにはカメラボタンとフラッシュのオンオフ切換ボタンしかないし、電話アプリにはダイアルオプションと通話履歴のフォルダー型タブが2つあるだけだ。FujitsuのUIデザイナーたちは長い時間をかけ、シニアユーザーがスマートフォンに慣れるための小さな一歩を心地よく踏みだせるよう、見事にAndroidを隠している。

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(翻訳:Nob Takahashi)

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TechCrunch Japan

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