欧州委員会(European Commission, EC)が今日(米国時間3/6)、MicrosoftのInterenet Explorerブラウザの配布形式をめぐる反トラスト法違反に対して5億6100万ユーロ(7億3100ドル)の罰金を科す、と発表した。そしてMicrosoftは謙虚にも、これに対する公式声明として、 その違反の原因となった“技術的エラー”に対して“全責任”を負う、控訴をしない、と述べた。
これまでMicrosoftは反トラスト法違反に関して欧州委員会の決定をことごとく控訴してきたから、今回は180度の態度転換となる。その理由はおそらく、最近(7月)に行った控訴が不発だったことと、最近の同社が巨悪というイメージを払拭しようとしているからだろう。本誌TechCrunchも、今回、控訴は“ほとんどありえない”と見ている。判決に対する声明の全文は、こうだ:
“弊社はこの問題を起こした技術的エラーに関して全責任を負い、それに関した謝罪をした。弊社は委員会に、状況の完全かつ率直な評価を提供した。また弊社は、弊社のソフトウェア開発とそのほかの業務工程を強化して、このような過誤の再発を防ぐための施策を講じた。
今回の審判には数か月を要し、10月には公式の告訴状が委員会に提出されていた。
ECのこの判決は、ある意味では死に馬をむち打つようなものかもしれない。このところのヨーロッパでは、Internet Explorerはブラウザの首位の座をFirefoxに脅(おびや)かされていたし、また両ブラウザは昨年半ば以来、 Chromeに敗退している(グラフ)。いずれにしてもMicrosoftは、もはやユーザのマインドシェアにおいても支配力を失い、スマートフォンなどの新しい戦場では、はるか後方に取り残されていた。しかし今なおWindowsはもっともユーザ数の多いデスクトップPCのプラットホームであるため、今後とも、Microsoftがその地位を利用して自己製品の利用促進のために行ういかなる行為も、注視に値する。
今回の罰金刑は、Microsoftが今とは違う位置にいた2011年2月から2012年7月までの間に起きたことに、関連している。その頃はすでに、EUによる反トラスト法違反に関する調査は、ブラウザをオペレーティングシステムに同梱する同社のやり方にまで立ち入っており、そしてその調査により、同社がWindows 7を、Internet Explorerを選択肢の一つとしてユーザがオプトアウトできるための、分かりやすい方法を与えることなく、配布していたことが明らかとなった。ECによれば、およそ1500万人のユーザがこの欠陥の被害者となった。
しかし今やその欧州委員会も、Microsoftの時代が過ぎ去りつつあることを、一般的な世間知として認めているようだ。今日行われた記者会見で、委員会の競争政策担当主幹Joachin Almuniaは、違反…Microsoftの言葉では技術的な欠陥…が生じた期間について述べるとき、やや言葉を慎重に選びながら、“これは今後二度とないことであり、今回の判決に限ってのことだが、判決の財務的な受益者はMicrosoftだ”、と述べた。この判決でいちばん得をするのはMicrosoft自身だ、と。