映画やゲームの舞台を月面に設定したいと思えば、見栄えのする画像を探すのは、それほど難しくない。しかしNASAは、単に美しいだけでなく、さまざまな用途に使えるデータをクリエーター向けにリリースした。画像だけでなくデプスデータを含んでいるので、非常に詳細な月面の3Dマップも簡単に作成できる。
これは「CGI Moon Kit」と呼ばれるもので、NASAのゴダード宇宙飛行センターが公開した。科学的なデータの視覚化の専門家、アーニー・ライト(Ernie Wright)氏が、元は別の目的で構成したものだが、3Dアーティストの注目を集めることが分かったため、公開することにした。
元のデータは、ルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter=LRO)に取り付けられた2つの測定器から得れたもの。このオービターは、すでに10年以上にわたって月の軌道を回りながら、ずっと写真を撮り続け、測定を継続している。
LROが搭載するカメラは、写真を撮影するという点では、高品質の「伝統的」なカメラだが、実際には精密なマルチスペクトルの撮像装置だ。それを使用して、驚くほど高品質な月面のマップを作成してきた。一度にキャプチャできるのは、ほんの小さな領域だけだが、LROの軌道がシフトしていくので、月の明るい部分については、ほぼ全域を撮影することができた。しかし、影の領域については、その上空を何千回通過しても、撮影できない部分が残っている。
とはいえ、素晴らしい写真はマップデータの一部にすぎない。月面を忠実に再現するには、表面のトポロジー情報も必要となる。そしてそのデータこそ、LROのレーザー高度計が収集しているものなのだ。
このレーザー高度計は、一般的に使われているレーザー距離測定器と原理的には同じもの。軌道上からレーザーのパルスを月面に向けて照射し、それが戻ってくるまでの時間と強度を同時に計測する。それによって、月面とどれだけ離れているか、つまりそのときの高度を、2分の1メートルの精度で測ることができる。それと同時に、月面の状態についても、たとえば硬い岩なのか、あるいは柔らかい粉のような表土なのか、といったことが分かる。
そうしたデータを組み合わせて、いわゆる変位マップとして組み立てる。一種の地形図のようなものだが、高さが実際に変化する代わりに、色の違いで高さが分かる。このマップには、いくつかのバリエーションがあるが、基本的なユースケースは同じ。変位マップを写真のマップに重ね、それによって球体を包み込むようにすれば、地形学的な仮想の月球儀ができる。
上のGIFアニメの遅いバージョンをムービーで見てみよう。
こうしたデータ使って、一人称ゲームで月面を探検して月面コロニーを建設したり、宇宙船で月面スレスレを飛びながら空中戦を展開する、というのは本当に楽しいだろう。あるいはアーティストなら、月の精巧なモデルを作成することもできるはずだ。
この「CGI Moon Kit」は無料でダウンロードできる。どのリソースにも、いろいろなオプションがあるが、3Dアーティストなら問題なく理解できるだろう。詳しい情報とダウンロードは、ここから。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)