NASAが月面用新型宇宙服を開発、人体3Dスキャンでジャストフィット、HDカメラ搭載で高速通信も可能に

次に月面に足を下ろす米国人は、まったく新しい宇宙服を着て行くことになる。それは1970年代に最後に月面を歩いたオリジナルのアポロスーツをベースにしながらも、大幅に改良されたものだ。簡単に装着でき、楽に動けて、コミュニケーション能力も向上する。体が自由に動かせない制約の大きかった過去のものとは雲泥の差があるが、それでも家の中を着て歩けるような代物ではない。

Exploration Extravehicular Mobility Unit(xEMU、探査船外活動移動ユニット)と呼ばれるこの新型宇宙服は、まだ開発初期段階だが仕様はほぼ固まっている。すでに水中でのテストが行われ、2023年には軌道上でテストされる予定だ。

一からまったく新しいものを作る代わりに、NASAのエンジニアは、従来の実績あるデザインで苦痛だった部分(文字どおり本当に痛いところも含め)を改良する方式を採用した。そのため、外見は私たちがよく知っている、宇宙飛行士たちが月面を飛び跳ねていたときのあの宇宙服によく似ている。元のデザインなら、高真空と宇宙放射線から体を守ることが比較的簡単だからだ。

NASAでは、宇宙服は「過酷な環境からの保護と、地球とその大気がもたらす基本的な資源のすべてを模倣するパーソナルな宇宙船」だと言われている。そのために必要な空間しか確保されていない。

しかし、昔からほとんど変わらない部分もあるものの、大きく改良される部分もある。最初にして最大の改良点は、安全性とミッションの目的を両立させるための、動きやすさが大幅に改良される。

NASAの新しい改良型xEMU宇宙服の図解

上図の左上から左下へ、高速データ通信、HDビデオと照明、情報ディスプレイと制御装置、統合コミュニケーション(スヌーピーキャップは廃止)、自動スーツ点検、強化された上半身の可動性、環境保護下着(EPG)防塵機能付き、歩きやすい。右上から右下へ、29647.5から56537パスカルの気圧変動に対応、緊急帰還1時間、真空再生二酸化炭素除去システム、薄膜蒸発冷却、モジュレーター/ORU PLSSデザイン、後方脱着。xEMUは、月面を歩く最初の女性、そして第二の男性が着用する宇宙服です。新世代のテクノロジーと能力がこの宇宙服に投入され、新宇宙での宇宙遊泳(EVA)、月面、さらに火星表面の探査を可能にする

ひとつには、既存の宇宙服に新しい関節が導入されて可動域が広がった。よく言われる宇宙飛行士の立ち方はアポロスーツの動き辛さを示唆した言葉だが、自由度が高い新しいxEMUのユーザーにはもう縁のないものになる。通常の範囲の動きが楽になるばかりでなく、自分の胴体の反対側に手を伸ばしたり、頭上に何かを持ち上げることも可能になる。

柔軟になった膝と、靴底が柔らかいハイキングスタイルのブーツにより、しゃがんだり、立ち上がったりも楽にできる。そんな基本的な動作もできないまま、よくもここまで来たものだ。

xEMUのデジタル・フィッティング・チェック。体を3Dスキャンして(点で表示)、スーツの各部分や部品がどのようにフィットするかを確認する

xEMUのデジタルフィッティングチェック。体を3Dスキャンして(点で表示)、スーツの各部分や部品がどのようにフィットするかを確認する。

宇宙服の体へのフィット感も向上する。NASAは人体計測、つまり体を3Dスキャンして、それぞれの宇宙飛行士ごとに、各部分がぴったり体に合うようにするのだ。

フィットと言えば、宇宙服の各部分はモジュラー式になっていて、簡単に交換ができる。例えば下半身は、宇宙遊泳と地表探査のときで、それぞれに適したものに交換できるようになる。ヘルメットのバイザーは“犠牲”防護式なので、ダメージを受けたら新しいものと簡単に交換できる仕組みになっている。

ヘルメットの中は、マイクなどを内蔵した、馴染み深いが明らかにみんなが嫌っているスヌーピーキャップが廃止され、現代的な音声起動式マイクとヘッドホンが組み込まれた。これで音質がずっと良くなり、汗をかくことも少なくなった。

さらに、通信スタック全体が新しいHDカメラと照明に置き換えられた。これは高速無線データリンクで接続される。月面からのライブ映像などはもう古臭い感があるが、1969年の荒いモノクロ映像とはちょっと趣が違って見えるはずだ。

最も重要な改良点に、背後からの着脱方式がある。昔のEVA宇宙服の着脱はかなり厄介な作業で、広い空間と人の手が必要だった。新しい宇宙服は、背後のハッチから中に入る仕組みになっているため、肘の位置決めなどが自然に行えるようになる。これはおそらく、宇宙服の着方を変えるものだ。宇宙服がエアーロックのような役目を果たすことは、誰でも簡単に想像がつく。背中から中に入ると、密閉されて、そのまま宇宙に出ることができるという感じだ。実際はそれほど単純ではないのだが、背後の着脱用ハッチは、その工程をずっと楽にしてくれるはずだ。

関連記事:NASAは月面用の宇宙服を将来的には民間企業にアウトソーシングへ

NASAはこの宇宙服のデザインと認定を行うが実際の製造は手がけない。NASAは先週、民間宇宙産業に宇宙服の製造を委託するもっともいい方法について意見を求めた。

これは、2024年の有人月面着陸に向けて、請負業者や民間企業の依存度を高めていくというNASAの決定の一環だ。もちろん、アポロ計画でも請負業者は重要な役割を担ったが、現在のNASAはさらに自由度を高め、民間の打ち上げサービスの利用も考えている。

今後ももちろん、宇宙服に関する最新の情報をお届けする。NASASuitUpタグも要チェックだ。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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