NASAの科学者たちは、最近チューンナップした世界最強クラスのコンピューターを使って、“星はどこから来たのか”、という疑問に答えようとしている。今度子どもにそれを尋ねられたら、あなたもこんなお利口なことを言えるかもしれない: “超高密度な伸長型ステラフィラメント(stellar filaments)だよ”、なんて。
NASAのメインのスーパーコンピュータPleiadesは、最近の数か月でハードウェアを一新した。酷使され古くなった16ラックのWestmere Xeon X5670sに代わって、1008基のBroadwellノードが、理論的ピーク時性能6.28ペタフロップスをたたき出す。これはHöchstleistungsrechenzentrum StuttgartのHazel Henや、Swiss National Supercomputing CentreのPiz Daintよりも上だ。〔これらの表(別表)にはチューンナップ後のPleiadesは載っていない。〕
もちろん、研究者たちにとっては速い方が良い。複数の望遠鏡や観測機器から集めたデータと理論的モデルを使って、星の誕生をシミュレーションするORION2プロジェクトは、NASAのニューズリリースによると、“重力、超音速乱流、流体力学(分子ガスの動き)、放射線、磁界、高エネルギーガス流出”など、さまざまな力を組み合わせた計算を行う。
そういう膨大な計算の結果を、NASAのAmes Research Centerの視覚化チームが処理すると、目もくらむような画像や映像ができあがる。たとえば下のビデオは、ORION2がシミュレートした90万年間にわたる“巨大分子雲”の生成過程だ:
これのズームイン・バージョンが、NASAのブログにある。
UC Berkeley(カリフォルニア大学バークリー校)とLawrence Livermore National Laboratory(ローレンス・リバモア国立研究所)を経てNASAに来た天体物理学者Richard Kleinが、星の形成の研究を指揮している。
ニューズリリースの中で彼は、“NASAの莫大な計算機資源がなければ、これだけ巨大で複雑なシミュレーションは不可能だっただろう”、と述べている。
そして彼らは一体何を学んだのか? それは、二つの空域の星間ガスがお互いに激しく愛しあうと、彼らは重力に屈して乱流になり、やがて崩壊して星状クラスタの連鎖になり、星の新生児たちが生まれる、という過程だ。
以上は実際の観測結果ともほぼ一致しているが、人間が宇宙に開けた窓は当然ながら限界があるので、100万年かかると言われる原始星の形成を実際に見ることはできない。モデルとシミュレーションが、それを補う。
次の課題は、解像度の向上だ。もっと精細なシミュレーションが可能になれば、たとえばステラディスク(stellar disk)の形成を研究できる。そのディスク状の構造体が合体して惑星になる、と考えられている。
Kleinは曰く、“星の形成を理解することはとても大きな課題であり問題だ。いずれは、われわれが今やっているシミュレーションの結果が、恒星と惑星の起源を知るというNASAの科学的目標に寄与し、宇宙全体の起源を知るというより大きなチャレンジにも貢献するだろう”。