NASAの有人火星探査計画、一歩進む―スーパー・グッピーがOrion探査機を空輸

2016-02-04-superguppy

昨日(米国時間2/2)、人間を火星に往復させるプロジェクトのためにNASAが開発中の宇宙探査機、Orionが組み立てを終わり、テストのためにケネディー宇宙センターに到着した。驚くべき点は、到着のつい数時間前までこの巨大な宇宙船はニューオーリンズにあるNASAのミックハウド組み立て施設内あったことだ

Orion宇宙船をルイジアナ州ニューオーリンズからフロリダ州ケープカナベラルまで運ぶためにNASAは所有するスーパー・グッピーを使った。 スーパー・グッピー輸送機の貨物室は高さと幅が25フィート〔7.6m〕、長さが111フィート〔33.8m〕ある。この巨人機は最大26トンの貨物を搭載することが可能で、NASAでは陸路、海路では時間がかかりすぎるとか、そもそも運ぶことが不可能な大型のパーツを空輸するのによく利用している。

スーパー・グッピーの歴史は長く、アポロ計画の時代にまでさかのぼる。1960年代にサターン5型ロケットの部品をカリフォルニアの組み立て施設からフロリダまで空輸していた。NASAはロケットをまるごと船に載せて、パナマ運河経由で運ぶこともできた。しかしこれは空輸に比べて数週間、場合によっては数ヶ月も余計に時間がかかるという大きな欠点があった。

Super Guppy with 2 supersonic jets / Image courtesy of NASA

実験用超音速機2機を輸送するスーパー・グッピー /画像:NASA

最近では国際宇宙ステーションの大型モジュールなどを運搬するのにスーパー・グッピーが用いられている。

World's largest heat shield in the Super Guppy / Image courtesy of NASA

世界最大の熱遮蔽装置を運ぶスーパー・グッピー / 画像:NASA

火星探査機Orionはまだ完成しているわけではないが、きわめて高価な貨物であることに変わりはない。この有人宇宙飛行モジュールはNASAの人間による火星探査計画の実現に不可欠の要素だ。完成したときにはOrionは(SLS=Space Launch System)の一部となり、ロケットの先端に取り付けられ4人の宇宙飛行士を載せて火星に向けて飛びたつことになる。

Orionの初期モデルは2014年に初飛行を実施している。EFT-1(Exploration Flight Test 1)と名付けられこのミッションでは、Orionは地表から3600マイル〔5800km〕の彼方まで飛行した。この高度は国際宇宙ステーションの軌道よりも15倍も遠い。

ミックハウド組立施設ではエンジニアがOrionの基本的なモジュールとなる与圧室の組み立てを終えた。そこでさらに現実的なテストを実施するためにOrion与圧モジュールをケネディー宇宙センターに運ぶ必要が生じたわけだ。

Orion pressure vessel at NASA's Michoud Assembly Facility / Image courtesy of NASA

Orion与圧室モジュール。NASAのミックハウド組立施設にて / 画像: NASA

Orionにはこの後さまざまなサブ・システムが取り付けられる。すべて順調に進めば、Orionには 2018年に2回目のフライトが待っている(SLSの一部としては最初のミッションとなる)。残念なことにこれは前回のEFT-1の飛行成功から4年も後のことになる。

公衆の意見はNASAの計画にとって非常に重要だ。〔大統領選で〕政権が変わる際には特にそうだ。大きな打ち上げイベントは公衆の関心を呼び起こすのに絶好のチャンスではある。しかし大型モジュールの打ち上げには多額のコストを要するのでNASAは慎重に計画しなければならない。

NASAの計画に大きな変更が加えられなければ、 Orionの最初の有人宇宙飛行は2023年に予定されている。NASAでは2030年代にOrionを使って火星に人間を送り込みたいとしている。

〔日本版〕スーパーグッピーはボーイング社最後の大型プロペラ旅客機、ボーイング377ストラトクルーザーをベースにしたターボプロップ広胴輸送機。初期のエアバスの組立で大型パーツを輸送していたことでも有名。詳細はこちらに

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。