OneConnectのIPO評価額の急下落から見える急成長急燃焼企業の危うさ

先週、OneConnect(ワンコネクト)が米国でIPO(株式上場)を計画しているという話が我々のもとに飛び込んできたが、それは無理のある話だった。この会社の株式公開は興味深く、同時に重要なものだった。そこで、私たちが見落としている問題とこのIPOが気になる理由を理解するために、ちょっと考えてみよう。

新規株式公開を行ったOneConnectは、中国の銀行や選ばれた海外企業にサービス近代化のための金融技術を売る企業だ。OneConnectの収益の大半は製品の使用料であり、APIコールを含む商取引による収益の4分の3を占める。

ソフトバンクビジョンファンドが支援するこの企業は、新規公開株価を1株あたり10ドルに設定したが、先週は、1株10ドルと変わらない株価で取り引きを終えた。

OneConnectは、米国内ではほかと特段変わらないIPO上場を果たした中国企業であり、大勢の中のひとつに過ぎない。なのに、どうしてこんなにその上場が問題視されているのか?

理由はいくつかある。この上場により、ソフトバンクとビジョンファンドにまたしてもリクイディティ(市場流動性)問題が増えるためでもある。2つめのビジョンファンド(ビジョンファンド2)のエンジンを盛んにふかす日本のこの複合企業体には、その勝者を選ぶ能力の見返りと証明、そして資本投入で自らに燃料を注ぐことが鍵となる。だから、OneConnectが公開企業として成功することがとても重要なのだ。

そして我々、市場のオブザーバーにとって同社の上場は、金融の観点から2倍の興奮をもたらすものだった。いや、OneConnectは儲かっていない(むしろその逆だ)。興味がそそられるのは、投資の誘いをしている間に、売り上げが大きく下落していたことだ。WeWork(ウィワーク)後の世界では、それは流行遅れとされているはずだが。では、どれだけの評価額になったかを見てみよう。

OneConnectの価値は?

OneConnectは、株式公開価格を9ドルから10ドルを目指していた。なので、実際の価格はその最高値ということになる。とはいえ、最初から幅が非常に狭かったこともあり、大きな効果は得られなかった。OneConnectが当初は12ドルから14ドルとしていた株式公開価格(こちらのほうがずっと標準的だが)から下げた価格帯であることを思うと、なおさら効果は薄かった。そうして、同社は期待されていた最高値を実現できたのだが、あくまで価格帯を下げたうえでのことだ。

結果として、ニューヨーク・タイムズが株式公開価格から計算したOneConnectの評価額は、およそ37億ドル(約4050億円)だった。TechCrunchが独自に計算したところでは、ややマシな38億ドル(約4160億円)だった。いずれにせよ、がっかりする額だ。

Crunchbaseのデータによれば、2018年の初めにOneConnectがソフトバンク・ビジョンファンドから資金調達をしたときは、投資前の企業価値68億ドル(約7450億円)に対して6億5000万ドル(約712億円)が投資されている。それにより、この中国平安グループの企業の投資後の価値は74億5000万ドル(約8160億円)となった。現状で株式公開価格を下げなければならなかったことは、OneConnect自身にも、中国平安にもソフトバンクにも痛手だ。

なぜこんなに安いのか

最初に、ちょっと考えてみようと言ったからには手短に話そう。OneConnectは事業で大幅な損失を出したが、同社の不採算性が深刻なだけに、一般投資家への影響が思っていたより大きかったのだ。

OneConnectは、2019年の第1四半期から第3四半期までの間に、なんとか70%以上の増収を果たし、その時点での総収入は2億1750万ドル(約238億円)を記録した。ところが、その期間の売上高はわずかに7090万ドル(約77億7000万円)と、営業経費を賄える程度だ。だが、この会社の費用構造の規模はその売上高をずっと上回る。

その同じ9カ月の間、OneConnectでは、セールスとマーケティングの経費だけで総利益を上回った。そんなわけで、OneConnectの2019年の第1から第3四半期の営業経費は2億2760万ドル(約250億円)にのぼり、その時期の営業損失は1億5660万ドル(約17億2000万円)となってしまった。

つまりOneConnectは、成長すればするだけ大量の現金を燃やすことになる。今もまだ投資を求めて精力的に動いているものの、収益性の改善からはほど遠い状態というのが流行っているらしい。ある意味、OneConnectがそれを裏付けている。独立するためには、急激な評価額の下落に耐えなければならなかった。その事実ひとつだけでも、市場のムードは一変してしまった。

画像クレジット:Roberto Júnior on Unsplash

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。