OpenStackがパンデミックで大幅成長、稼働コア数が1年で66%増加し24度目のメジャーリリース

大企業やパブリッククラウドプロバイダーが、自社のデータセンターでAWSのようなプライベートクラウドを運用するためのツールを提供するオープンソースプロジェクトOpenStackは米国時間10月6日、「OpenStack 24」のリリースを発表した。コードネーム「Xena」と名づけられた今回のリリースでは、特にシステムの周辺部分を磨き上げている。

現在、OpenInfra Foundationの傘下にあるOpenStackプロジェクトが浮き沈みを繰り返していることは周知の事実だ。そのため、最近の利用者数が大幅に増加していることは、多くの人にとって驚くべきことだ。財団が発表したとおり、OpenStackで管理されている総コア数は、2020年の1年間で66%増加している。

OpenStackは現在でも多くの通信企業のバックボーンであり、最大手通信企業10社のうち9社がOpenStackを利用している。最近Verizonで5Gの通話をした人は、OpenStackがその通話を支えたのだ(なおVrizon傘下のVerizon MediaはTechCrunchのオーナーだったが、最近そうでなくなった。明らかにそれは、同社の損失だ)。通信以外にも、例えばWorkdayとWalmartは、OpenStackをデプロイして動かしており、その総コア数は100万を超えている。しかしそれでも、たとえばChina Mobileは、独自に突出して600万コアを抱えている。

OpenInfra FoundationのCOOであるMark Collier(マーク・コリアー)氏は次のように語っている。「これまでで最大の飛躍だと思います。パンデミックの影響でインフラへの需要が大幅に増加したことはよく知られています。また、ハイパースケールのパブリッククラウドについても多くの記事が書かれていますが、彼らは突然、より早い成長を必要とします。私は、このことがOpenStackの需要を確実に促進していると考えています。私たちは1年で1000万コアを追加しました。これはすごいことです。この1年で100の新しいクラウドが構築されました。現在、7つの組織が100万コア以上を稼働させています」。

画像クレジット:OpenInfra Foundation

さらに注目すべきは、数週間前にMicrosoftが、年会費35万ドル(約3900万円)という最高位のプラチナ会員としてOpenInfra Foundationに参加したことだ。同社を迎え入れる既存のプラチナ会員は、Ant Group、AT&T、Ericsson、Facebook、FiberHome、Huawei、Red Hat、Tencent CloudそしてWind Riverなどとなる。

OpenStackはリリースを24回も重ねており、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキングなど、プライベートクラウドを動かすために必要なコアツールはすでに完備している。しかしそれでも、ありとあらゆるPCIデバイスをサポートするためには欠けている機能がある。たとえば企業は、OpenStackのコンピュート部位NovaとネットワーキングサービスNeutronに、プログラマブルなネットワーキングデバイスであるSmartNICsを接続することを求めている。

OpenStackで、上流開発のデベロッパーたちに対応しているKendall Nelson(ケンダル・ネルソン)氏は次のように説明する。「この度のリリースにおける特定のテーマとなるのは、1つは複数のプロジェクトの統合です。ハードウェアアクセラレーターをサポートするOpenStack CyborgやNova、Neutronなどでは、このPCIデバイスを中心とする周辺的部位の相互接続をサポートする柔軟性という部分で作業量がとても多くなり、OpenStackはその各部を組み合わせて総合的に使う方がベターであることを証明しようと努めました」。

これには、統合されたOpenStackコマンドラインツールに、より多くのコンポーネントから、より多くの機能のサポートを追加することも含まれる。

関連記事:Open Stack FoundationがOpen Infrastructure Foundationに改称、AntGroupなど4社がプラチナティアに追加

「これまでは、1つのサービスに対して個別のクライアントという対応でした。彼らはAPIに近い位置にいて、個々のプロジェクトごとにそのメンテナンスをしました。特に過去2回のリリースでは、OpenStackのクライアントとその下のOpenStack SDKにフォーカスしていたため、プロジェクト固有のクライアントを大量に取り去ることになり、ユーザーがたった1つのコマンドラインでインタラクティブな操作をし、何でもできるようにしました」とネルソン氏はいう。

その他のアップデートも多いが、それらに関しOpenInfra Foundationのエンジニアリング担当副社長Thierry Carrez(ティエリー・カレス)氏は、それらのアップデートはハードウェアの新しい要件が契機になっているものが多く、OpenStackのユーザーの多くが現在運用しているスケールに対応するためのものもあると述べている。

「興味深いことに、開発のプライオリティが最近は変わっています。現時点においては、コア機能はかなり安定していますが、今回の開発で忙しかったのはハードウェアの有効化の部分でした」とティエリー・カレス氏はいう。

また、この開発サイクルでは、過去10年間に蓄積された技術的負債に対処するために、長い間使われていなかったAPIのサポートを削除するなどの取り組みも行っている。

Kata Containers、CI/CDプラットフォームのZuul、エッジ・コンピューティング・プラットフォームのStarlingX、ライフサイクル管理ツールのAirshipなどのプロジェクトを支援しているOpenInfra Foundationは、本日、対面式のカンファレンスを再開することを発表した。6月7日から9日までベルリンで開催される。それに先立ち、2021年11月にはバーチャルイベント「OpenInfra Live: Keynotes」を開催する。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。