ParallelsがARMアーキテクチャ搭載Macに仮想環境を提供へ、ARM on ARMのWin環境が現実的か

macOS上でx64(x86)版のWindowsやLinuxなど利用可能にするホスト型の仮想環境「Parallels Desktop」などを開発・販売しているParallelsは、WWDC20のアップルの発表を受け、アップルと協力してARMアーキテクチャを採用するApple Silicon搭載Macにも仮想環境を提供する計画であることを明らかにした。

同社のエンジニアリング・サポート担当シニアバイスプレジデントであるニック・ドブロボルスキー氏はプレスリリースで「Parallelsはこの移行時に、アップルと緊密に連携しており、Apple Siliconを搭載した将来のMacへサポートを提供していくことを楽しみにしています」と述べている。

プレスリリースでは、なんの仮想環境を開発していくのかは明らかにされていないが、常識的に考えればWindowsが動く仮想PC環境を指すと考えられる。となるとWindowsには、インテルやAMDのプロセッサーで動作する64ビットのx64版と32ビットのx86版、ARMアーキテクチャ上で動くARM版があり、ARM版のWindows環境であれば元は同じARMアーキテクチャのApple Silicon搭載Mac、つまりARM on ARMを実現するのはハードルが低いと考えられる。

ARM版Windowsは、マイクロソフトの2 in 1 PCであるSurface Pro Xなどに搭載されているOSだ。x86アプリのエミュレーション機能を備えているので、ARM版Windows用アプリはもちろん、32ビットのx86版Windows用(Win32)アプリもエミューレションで動くため、Apple Silicon搭載Macでも十分な処理速度になるだろう。古いWindowsアプリをMacで動かしたいというニーズにも応えられる。

一方で、64ビットのx64版Windowsで動作する最近のアプリをApple Silicon搭載Macで使いたいというニーズを実現するのはハードルが高い。Parallelsがホスト型の仮想環境の開発を計画している場合、ARMアーキテクチャ上で動くmacOS上に、プロセッサのアーキテクチャが異なるx64版のPC環境を構築する必要があるからだ。Parallels Desktopなどのx64 on x64のホスト型仮想環境に比べて処理速度の低下は避けられない。

WWDC20の基調講演のデモでは、Apple Silicon対応のプロトタイプのParallels DesktopDebian Linuxを稼働させ、その上でApacheサーバを稼働させていたが、DebianARM版もあるのでプロトタイプがx64ベースなのか、ARMベースなのかは判別できない。

MacがPowerPCを搭載していたころ、マイクロソフトに買収される前のConnectix(コネクティクス)が開発したVirtual PCというホスト型仮想環境上のWindowsをものすごく遅いながらも頑張って使っていた1ユーザーとしては、技術的ロマンを感じるのはもちろんx64 on ARMの仮想環境だ。もちろん私だけでなく、当時はVirtual PCのアップデータが配布されると日本からのアクセスが集中してFTPサーバーが落ちたことがあるほど、日本のユーザーの関心は高かった。とはいえ、早期の市場投入と実用性を考えるとARM on ARMに落ち着くのではないか。

ちなみにVirtual PCはマイクロソフトに買収されたあとの「Microsoft Virtual PC for Mac Version 7」シリーズでPower Mac G5対応を果たし、CPUのアーキテクチャーだけでなくリトルエンディアンとビックエンディアンのバイトオーダーの壁も乗り越えていた(ものすごく遅かったけど)。

詳細はParallelsに問い合わせ中で、追って記事を更新する予定だ。

 

投稿者:

TechCrunch Japan

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