ここ数年、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の動きが熱く、SAPやIBM、ServiceNowなど投資やM&Aが盛んだ。UIPathは2021年4月に大型のIPOを実施し、時価総額は300億ドル(約3兆3000億円)を超えている。Salesforceはいつこの動きに加わるのかと筆者は思っていたが、米国時間8月2日、同社はドイツのRPA企業であるServicetraceを買収する意向を発表し、RPAの世界に足を踏み入れることになった。
Salesforceは2018年に65億ドル(約7104億5000万円)でMulesoftを買収したが、SalesforceはServicetraceをこのMulesoftの一部にする意向だ。両社は買収額を明らかにしておらず、それほど大きな金額ではない模様だ。Servicetraceが加わればMulesoftのAPI統合とは良い組み合わせで、Mulesoftのツールキットにオートメーションのレイヤーを追加できるだろう。
MulesoftのCEOであるBrent Hayward(ブレント・ヘイワード)氏は買収に関するブログ投稿で「MuleSoftにServicetraceが加わることで、優れた統合、API管理、RPAプラットフォームを提供でき、どこからでもつながれるエクスペリエンスを実現するSalesforce Customer 360が大幅に強化されるでしょう。新しいRPA機能はSalesforceのEinstein Automateソリューションを拡張し、サービスや販売、製造などのあらゆるシステムでエンド・ツー・エンドのワークフローオートメーションを可能にします」と書いている。
SalesforceのAIレイヤーであるEinsteinを使うと企業はモダンなツールで特定のタスクを自動化できるが、RPAはもっと旧来型の業務に適している。この買収は、Salesforceが古いオンプレのツールとモダンなクラウドソフトウェアの切れ目を埋めるための新たなステップになるかもしれない。
CRM Essentialsの創業者で首席アナリストのBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、この買収によってSalesforceのDXツールが新たな局面を迎えるという。同氏は次のように説明する。「Salesforceがこれまでの最大規模であるSlackの買収をしてから次の買収までにそれほど時間はかかりませんでした。しかし増加する多様な情報源から得られるリアルタイムのデータによって有効性を発揮するプロセスやワークフローのオートメーションは、DXで成功するための鍵になりつつあります。今回の買収はSalesforceとMuleSoftにとって、このパズルに欠かせないピースです」。
Salesforceの市場参入は遅かったように思えるが、2021年5月にTechCrunchが掲載した投資家に対するアンケート記事の中でCapitalGのゼネラルパートナーであるLaela Sturdy(ラエラ・スターディ)氏は、我々はRPAの可能性について表面をすくっているにすぎないと語っていた。
スターディ氏はアンケートに次のように回答した。「この分野の成熟について考える段階にはまだまだ至っていません。実際、RPAの計り知れない可能性を考えると、採用は始まったばかりです。さまざまな業界に存在する膨大なユースケースを探り始めた企業がほとんどです。RPAを取り入れる企業が増えれば、多くのユースケースが見えてくるでしょう」。
ServicetraceはRPAの概念が生まれるよりもかなり前の2004年に創業した。資金調達についてはCrunchbaseにもPitchBookにも掲載されていないが、同社のウェブサイトからは充実した製品群を有する成熟した企業であることがうかがえる。同社の顧客には富士通、Siemens、Merck、Deutsche Telekomなどがある。
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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Salesforce、Servicetrace、買収、RPA、MuleSoft
画像クレジット:Bloomberg / Getty Images
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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)