SpaceX、明日NASAの重力観測衛星を打ち上げへ――地球の水循環をモニター

明日(米国時間5/22)打ち上げが予定されてSpaceXのFalcon 9ロケットには5基のIridiumコミュニケーション衛星と2基のNASAの観測衛星が搭載される。Iridium衛星の高度は800キロだがNASAの衛星は480キロ前後なのでFalcon 9は複雑な機動をする必要がある。NASAのGRACE-FO衛星は地球の重力を精密に測定して水の循環をモニターするのが目的で、いわばレーシングカーがシケインを抜けるような動きをする。

もちろん宇宙にシケインなどはないし、衛星のスピードも時速何万キロと桁外れに速い。しかし速度が変化する点は同じだ。

Falcon 9からNASAの衛星は一つが上方に、一つが下方に分離される。2つの衛星が220キロ離れたとき、下方の衛星が加速して他方の衛星の軌道に同期する。この動作には数日かかるが、Falon 9自身はNASAのGRACE-FO衛星を放出すると10分後にはIridium衛星打ち上げのためにエンジンを再点火する。

GRACEはGravity Recovery and Climate Experiment(重力取得による気候実験)の頭文字でFOはフォロー・オンの意味だ。Gravity Recovery and Climate Experimentはドイツの地球科学研究センターとの共同プロジェクトだ。オリジナルのGRACE衛星は2002年に打ち上げられ、15年間にわたって地球の水(地下水を含む)の循環をモニターしてきた。これは気象学の進歩にきわめて大きな影響を与えたが、今回のGRACE-FOはさらに精度をアップさせてその続きを行う。

地表の大きな質量の上空を一対の衛星が通過すると重力の変化によって軌道に微小な変動が起き衛星の間隔が変動する。これによって地表とその地下のようすを詳しく知ることができる。オリジナルのGRACEではこれによって地下の水を探知した。GRACE-FOにはレーザー測距装置が装備され、衛星間の距離測定の精度が文字通り桁違いにアップしているという。

今回用いられるロケットはこの1月にZuma衛星を打ち上げたその同じ機体だ。ZumaはFalconの2段目から無事に放出されたものの、衛星の不具合により軌道投入に失敗している。機密ミッションだったため何が起きたのか正確な情報がほとんどないが、SpaceXに原因がなかったことだけは間違いない。

Falcon 9は明日午後12:30にカリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から発射される予定だ〔日本時間は水曜日の明け方、4:30〕。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

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TechCrunch Japan

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