Tinderの創設者がセックスのコツを教えるアプリLoverに投資

薬にお金を使ったり、セックス・セラピストを家に招いて気まずい思いをすることなく、ベッドルームで盛り上がりたい? Lover(ラバー)という新しいアプリは、セックスに関する個人的な質問から、性欲に関する知識のチュートリアルを通して、パートナーと時間を過ごすときの最適な刺激を個別に指導してくれる。性医学の臨床心理学者として正式な資格を持つBritney Blair(ブリトニー・ブレア)博士は、Tinderの創設者Sean Rad(ショーン・ラッド)氏をはじめとする投資家たちから500万ドル(約5億5000万円)のシード投資を受け、17日、iOS版のLoverをローンチした。

「楽しんでいるかどうかは別にしても、みんながしていることなのに、セックスがタブー視されるのは不思議です。私たちの健康にとって重要なこの一面について、もっと語り合う時が来たと私たちは考えています」とブレア博士。「Loverによって自信が生まれ、コミュニケーションが促され、パートナーとのつながりが改善され、セックスと性的嗜好に関する意識が高まるものと確信しています」

オーラルセックスの音声ガイド、ベッドでたっぷり楽しむためのビデオ講座、「固くして楽に」といったステップごとのプレイリストなど、Loverのコンテンツの大部分が、最初の7日間は無料で試すことができる。その後は、月額9.99ドル(約1100円)か年額59.99ドル(約6580円)を支払えば、「前戯よりもコアプレイ」や「夢から現実へ」といったテーマごとの教育素材を利用できるようになる。これらの内容は、ユーザーのセックスに関するアンケートを基に推奨される。

「女性のほぼ50パーセント、男性の40パーセントがセックスに不満を抱いています。しかし、ほとんどの人は、その問題が普通のことであり。対処可能であることを知りません」とブレア博士は話してくれた。「ローンチ前のテストでは勃起不全にフォーカスしていましたが、60パーセントのユーザーが、アプリを使って3週間以内に勃起に改善が見られたと報告しています。バイアグラの有効性が65パーセントで、しかも5時間しか効かないことを考えると、すごい結果です」

Ro(ロー)などのデジタル薬局のスタートアップは、バイアグラをはじめとする男性用健康医薬品の処方と販売により、設立後わずか18カ月で5億ドル(約550億円)もの評価額を記録した。Loverは、教育ベースで性的健康へアプローチする新たな市場を見据えている。

Loverの共同創設者(左から)ジャス・バグニエスキー氏、ブリトニー・ブレア博士、ニック・ペンドル氏

ブレア博士は、10年前、スタンフォード大学大学院で、セックスに関する問題が広く存在しているが、学習とコミュニケーションですばやく解決できるという講義を聞いてこの分野に興味を抱いた。彼女は、ヨーロッパ最大の電子商取引企業Zalando(ザランド)のイギリスのマネージャーであり、グルーポンに買収されたCity Dealの創設者でもある現CEOのJas Bagniewski(ジャス・バグニエスキー)氏と手を組んだ。バグニエスキー氏と、その友人でLoverの共同創設者Nick Pendle(ニック・ペンドル)氏は、ヨーロッパでキャスパーに競合するマットレスのメーカーEve Sleep(イブ・スリープ)を立ち上げIPOを果たしている。

彼らの計画は、ブレア博士の教育素材をバグニエスキー氏とペンドル氏が持つ電子商取引の見識と組み合わせるというもの。サブスクリプションと、ゆくゆくはセックストイなどの推奨製品の販売とでLoverに収益をもたらす考えだ。現在、彼らには、Lerer HippeauをはじめManta Ray Ventures、Oliver Samwer(オリバー・ザムビア)氏のGlobal Founders Capital、Fabrice Grinda、Jose Marinからのシード投資500万ドル(約5億5000万円)がある。この資金は、Android版とパートナー同士でベッドの中で遊べるゲームの開発に使われる。

現在、セックスのコツを教えるウェブサイトは無数にある。Loverは、マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標のようなアンケートの結果に基づく、個別のコンテンツで差別化を図ろうとしている。これは、ユーザーがどれだけ冒険的で、社交的で、積極的かを尋ねるものだ。それにより、数ページにわたる解説とともに、The Museのような分類結果が示される。たとえば、注目の的でいながら他人に影響を与えたいと思っている、といった性格が露わになる。

そこから、Loverは、ユーザー独自の性的個性をマスターするための、または新たな行動パターンへの発展のためのガイドが示される。また、XConfessions(エックスコンフェッションズ)という別のアプリからコピーしてくる機能もある。ユーザーとそのパートナーの好みを知るためのものだ。ユーザーはアプリを接続させ、「パートナーからロウソクのロウを垂らされたことがある」とか「パートナーは警察官の制服を着る」などの質問に、各自個別に画面をスワイプしてイエス・ノーで答えてゆく。そして2人にマッチするものがあれば、アプリはそれを試してみるよう勧める。

 

全体としてLoverのコンテンツは非常に高品質で、ほとんどの人がセックスの教材にしている素材、つまりポルノよりも思いやりがある。本物の性医学の医師がアプリを監修しているため、Loverには信頼性がある。そのデザインと雰囲気は、ユーザーを自堕落にすることなく、自信を与えてくれる。

それでも、ブレア博士は「人に生活習慣を変えるよう促すのは、難しいことです。もうすでに人々はアプリをスマートフォンに入れてサブスクリプションしてくれていますが、サブスクリプション疲労に陥る恐れもあります」と心配する。効き目がハッキリわかるバイアグラには、人々は疑うことなく金を出す。セックスのコツを教えるサブスクリプションの価値はわかりづらく、インターネット上で無料公開されているものと区別も付きにくい。

もっと多くの人たちに、ズボンだけでなく財布も開いてもらうためには、Loverは有料コンテンツの価値を宣伝し、インターネットのコンテンツに欠落している対話をさらに多く提供する努力が必要だ。しかし、このアプリのアドバイスが忘れられない夜を人々に提供できたなら、その人たちを長期にわたって誘惑し続けることが可能だろう。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。