UC Berkeleyが生んだ24歳のベンチャーキャピタリスト:Jeremy Fiance

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大抵、24歳というと多くの人が自分のキャリアをどのように形成していくのか、まだ迷っている年頃だろう。最近UC Berkeleyを卒業したばかりのJeremy Fianceは、自分はベンチャー・キャピタリストになるのだと確信している。他の誰かが経営する会社に入って、そこで昇進するのを待つという選択もしなかった。

その代わりに、今日、Fianceは彼の新しい会社をお披露目した。The House Fundと名付けられたこのファンドは、先日数々の個人投資家から600万ドルを集め、初めての資金調達を達成したばかりだ。投資家の多くはベンチャーキャピタリストだ。

彼らがFianceに興味を持つのは無理もない。彼は頭がキレる。(彼は教養学部を卒業し、ビジネス、エンジニアリング、デザインを学んだ)。彼はメディア通だ。(先週おこなった電話インタビューの数時間後には、彼から幅広い内容のメディア・パッケージが送られてきた)。

そしてFianceには人を動かすピッチがある。長い間、エンジェル投資家やVCたちから見落とされてきたUC Berkeleyから、そこに埋まっている宝石を掘り起こすという大きなアイデアだ。

この数字を見ると、にわかには信じがたい。UC Berkeleyには50万人の卒業生がおり、大学と大学院あわせて3万7000人の現役学生たちがいる。同校の卒業生にはEric Schmidt、Steve Wozniak、Chris Andersonといった著名な人物がおり、多くのスタートアップがこの学校で生まれたのは言うまでもない。(Squareに買収されたCaviarもその例の1つだ) それにも関わらず、エンジェル投資家やベンチャーキャピタリストから向けられる同校への注目度は、Stanfordに対するそれと比べるとかなり低い。

ベンチャーキャピタリストのPejman Nozadが昨年の夏に私たちに話してくれたように、鍵となる要素は単純にロケーションだという。Palo Altoは今でも多くのVCにとっての生活と仕事の拠点だが、UC Berkeleyはそこから45分の距離に位置している。そのため、「UC Berkeleyのコンピューターサイエンス学部は、StanfordやCarnegie Mellon、M.I.T.などと同じくトップクラスであるにも関わらず、他の学校に比べるとUC Berkeleyの注目度は低い」。

Nozadが経営し、Stanfordから目と鼻の先にあるPejman Marは、UC Berkelyにおいて賞金が25万ドルのスタートアップ・コンテストを開催しており、その後のさらなる投資の対象となる将来有望なチームを見つけ出そうとしている。

他の会社もあちらこちらの大学に入り込んできている。たとえば、Alsop Louie Partnersは時折、キャンパス内のスカウトとして学生を雇い入れている。Andreessen Horowitzでは、テクノロジーに通じた人々による大規模なチームが構成され、そのチームがUC Berkeleyを含む大学のキャンパス内に時々現れては、能力を持った学生をスカウトしている。(その成果の一つ、機械学習とデータ分析プラットフォームのDatabricksは、UC BerkleyのAMPLabから誕生した。創立3年目のこの企業は、これまでに4700万ドルを調達している)

それでもまだ、Stanfordでの起業家の育成に注力しているStartXのように、UC Berkeleyだけに焦点を当てた団体は存在しない。

そして、これこそがFianceが埋めようとしている空白地帯だ。

彼にはそのためのコネクションがあるようだ。2010年、大学一年生だった彼は、現在は創立9年目になる、社会問題の解決のために起業家を育成する団体のKairos SocietyをUC Berkeleyに持ち込んだ。

またFianceは友人と共に、現在も活動中の学生アクセラレーターであるFree Venturesを在学中に創立した。初期の段階ではこの団体の資金力は乏しかった。実のところ、この団体が保有していた資金はBig Ideasと呼ばれるUC Berkeley主催のコンペティションでの優勝賞金の2500ドルだけだった。しかし、彼らはその金額で6つのスタートアップへ投資することに成功した。

しかも、彼らはその内いくつかの賭けに勝つことに成功した。その1つが当時創立されたばかりだったLily Roboticsだ。カメラを搭載したドローンを製造する同社は現在では創立2年半目に突入しており、これまでにSpark Capitalなどから1500万ドルを調達している。それ以外の5つの企業でも、これまでに合計で2300万ドルの資金調達を達成したとFianceは語る。

Fianceは他にも、学生によって運営されているベンチャーファンドであるDorm Roomにも関わっていた。First Round Capitalの協力のもと、同ファンドは50万ドルの資金を学生ベンチャーに投資している。彼は同ファンドに1年間半在籍し、将来有望なスタートアップを見つけ出す手助けをしていた。その後、シードステージ・ファンドのCrunch Fund(TechCrunchの創業者、Michael Arringtonによって共同創業)に在籍し、彼の学校生活における最後の7カ月間をそこで過ごした。このファンドに在籍中に、興味を惹いた7つのスタートアップに投資をしたとFianceは語っている。

当然のことながら、VCたちがFianceの噂を聞くまでには、そう長くの時間はかからなかった。これまでに何社から声を掛けられたのかと聞くと、彼はしぶしぶ10社だと答えてくれた。この記事を執筆するために彼を調査した際、Redpoint VenturesやGrey Partnersなどの企業が一様に彼を支持したところを見ると、私たちはそれを信じざるを得なかった。

Fianceはそれらの誘いを丁重に断り、かわりに彼のThe House Fundに投資するように説得した。このファンドはすでに6つのスタートアップに投資をしており、ターゲットとなるスタートアップはUC Berkeleyに在籍する学生や卒業生、教授によって創立され、モデルのテストに25万ドル以下の資金を必要とする企業だ。(The House Fundはスタートアップに対して5万ドルを提供し、他のエンジェル投資家やベンチャーキャピタリストを巻き込んでシンジケートを組織する)

どのように有望なスタートアップを見つけ出しているのかとFianceに聞くと、「つねに積極的に素晴らしい才能を探しています。それには、すでに過去にプロジェクトを実行してきた経歴のある起業家だけでなく、ユニークな分野のエキスパートたちも含みます」と彼は答えた。

これまで関わってきたチームに未練はないかと聞くと、彼は「ないです。もっと投資の数を増やすことの方が好きなのです」と語った。

今でも、外部の人々が気づいているよりも沢山のことがUC Berkeleyでは起こっており、彼の600万ドル規模のファンドはその始まりでしかないと彼は話す。「Berkeleyに的を絞ったファンドは、確実に同校のエコシステムに利益をもたらすでしょう」。

Fianceに協力するベンチャーキャピタルたちは彼に期待している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 / Website / Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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