仮想現実(virtual reality, VR)はOculusの発明品ではないが、このところ同社のおかげで関心が回復してきたようだ。
しかし今週(3/16-22)は、新しい仲間が増えた。SonyがVRへの参入を決めたのだ。そこでぼくはここで、VRに関してはSonyはOculusなどよりも断然有利だ、というお話をしてみたい。〔訳注: この記事が書かれた先週末は、FacebookによるOculus買収が発表される前。〕
その前にひと言。SonyとOculusのVR戦争という視野では、明らかに弱小勢力であるOculusの味方をしたくなる。Oculusは、これまでみんながジョークかSFマニアの白昼夢とみなしていたものを真っ先に商品化し、業界の大物たちを味方につけることに成功した。でもぼくのようなファンでさえ、その欠点を見て見ぬふりすることはできない。
今、Oculusの周辺にはいろんなことが起きている。彼らのおかげでゲーム業界のVRへの関心が復活し、ここ1年あまり、どこへ行ってもOculusが話題になっていた。彼らの登場はどこよりも早く、たちまち大きな話題になり、一部のビッグネームたちを味方につけた。数万人ものデベロッパに、同社のプロトタイプのヘッドセットをいじくらせることにも成功した。それは、Sonyの競合製品には、真似できないことだろう。今後もPS4オンリーで行く気なら、なおさらだ。だから少なくとも現状では、“仮想現実”といえば誰もが”Oculus”を思い浮かべる。そしてそうであるかぎり、Oculusがつねに話の基準だ。
でも同社には、大きな弱点がある。ヘッドセットは、このハードウェアを構成する式の左辺もしくは右辺でしかない。
つまり、仮想現実というものは、ゲームのキャラクタをコントロールしたり、何らかのインタフェイスをナビゲートするだけがすべてではない。本誌も言ってきたし、ほかの人たちも言ってきたし、OculusのファウンダのPalmer Luckeyさえも言っていたように、入力がVRの乗り越えなければならない最大のハードルなのだ。
キーボードとマウスでいける? ぼくは、靴紐を自分で結べないのでマジックテープでとめる靴を与えられていたころから、キーボードを見なくてもタイプできたし、今や毎日一日中キーを叩いているが、そんなぼくでも、ヘッドセットをつけると相対空間の感覚が失われるので、正しいキーを見つけるのにすごく苦労する。そのおかげで、ヘッドセットから得られるはずの没入感が台無しになってしまう。
ジェスチャーセンサはどうだろう? 将来はそれでいけるかもしれないが、今あるKinectなどは、いらいらがつのるだけの粗悪品だから、とうてい常用する気にはなれない。
ルームランナー方式のこいつなんか、どうかな? うーん、ご幸運を祈る、としか言えないな。
残るのは、コントローラだ。
Oculus Riftには、専用の標準コントローラがないし、あったとしても、コントローラはものすごく多様化するだろう。ValveのSteamコントローラ、SixenseのSTEM、RazerのHydra、なつかしいGravisのゲームパッド。ユーザはいろんなものを使わされることになる。
またこのことは同時に、Oculus Riftのアプリケーションを考えるデベロッパにとっても難問になる。いっそアプリケーションごとに、それに合ったコントローラを提供すべきなのか?
コントローラが多様なら、アプリケーションのコードも多様になり、デベロッパの生産性を苦しめる。毎日、一日中、コントローラのコーディングの囚人になっていたりして。
ゲーマーも、ゲームが変わればコントローラも変わる。ゲームがすべて、そのゲーム専用のコントローラつきのゲームになったら、お値段的にもたいへんだ。いわゆるアーリーアドプターの人たちはそれでも平気かもしれないが、ふつうの人は、350ドルのアクセサリを買うとき、次もまたこんな高いアクセサリを買う必要がある、なんて思いたくないね。
SonyのVRヘッドセットでは、コントローラはたった一種類、Sony自身のMoveコントローラだけだ。あの、昔からある、おまぬけな魔法の杖みたいなやつ? でも、なんと、みんなにバカにされてきたあいつも、仮想現実の時代には息を吹き返す。VRの入力装置としては、あれに勝るものは見当たらない。すごく、良い。デベロッパは、ゲームのタイプによっては、ゲーム機本体のデュアルショックコントローラを使ってもよいが、本格的な没入感をプレーヤーに与えるためには、Moveで決まりだ。
銃にも剣にもなるし、二つで弓と矢にもなる。トリガ使って、手を開く/握る(物を持つ)をシミュレートできる。Sonyによると、同社がVRに取り組み始めたのと、Moveの開発開始時期は同じだそうだ。だから、話は合う。今度のヘッドセットには、Moveコントローラが少なくとも一つはつくだろう。
視界がどーのこーのと比較論をいくら言っても、実際に売れるのは、プラグアンドプレイですぐに遊べる完成品だけだ。Oculusが最初から正規の専用コントローラを提供しなければ、Sonyのおかげで突如Oculus Riftは未完成な製品に見えてしまうのだ。
Oculusも、きっと何かを考えているはずだ。まだ社外秘かもしれないし、デベロッパにも予告してないだろう。あるいは、ベストソリューションの決定過程という下駄を、市場とデベロッパとプレーヤーに預ける気かもしれない。専用の標準コントローラは、その結果に基づいて作られるのだろう。
しかし、どうなるにせよ、これから動乱の数年間が始まる。それは、消費者を含めて全員を巻き込む、どたばたの動乱だろう。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))