米国時間8月24日は、Y Combinator(YC)の2部構成の「Summer 2020 Demo Day」の一部で、100社近くの企業が初めて世界に向けて自分たちの取り組みを披露した。
2020年夏のデモデイは、YCのコホートとしては初の完全リモートとなった。新型コロナウイルスの感染拡大の深刻さが3月に明らかになったことを受けて、YCは2020年冬のクラスのデモデイの部分を土壇場でバーチャルに変更。そのため、デモデイの主要な部分を取りやめてしまった。ライブピッチの代わりに、2020年冬クラスの各企業は1枚のスライドと会社の簡単な説明文を使ってピッチを行った。
YCは今回は明らかに準備に時間を割いていたようで、実際のイベントと同じようにデモデイを体験することができた。わずか60秒の驚くほどの速さで行われた一連のライブピッチで、各企業は投資家、メディア、創業者仲間の聴衆に向けて事業の要点を紹介した。
この記事では、本日発表された各企業について登壇順に21〜40社目までを紹介する。
GitDuck
開発者のために作られたビデオチャットツール。 開発者のIDE(統合開発環境)に直接接続して、リアルタイムのコード共有や、開発者同士がリモートでコードを共有できるようにする。 料金は開発者席1席につき20ドル。
Hannah Life Technologies
妊娠に悩むカップルがクリニックを訪れることなく、自宅で妊娠できるように支援したいと考えている、Hannah Life Technologiesは。妊娠のチャンスを3倍できるというセックス中に使える小さなデバイスを販売している。 来年にはFDA(米食品医薬品局)の認証を得られる製品の開発を目指している。
Hellosaurus
YouTubeが子供向けコンテンツの収益化を難しくしている中、次の一歩を踏み出そうとしているクリエーターはたくさんいる。Hellosaurusは、子供向けのインタラクティブなビデオプラットフォームを開発するために多くの企業と契約を締結している。この市場は競争が激しいものの、トリビアビデオゲームのHQ Triviaの前製品責任者と優秀なクリエイターが揃えば、30億ドル(約3185億円)の市場の一部を切り取ることができるかもしれない。
Jika
平均的なShopifyの販売者が価格テストできる環境を提供。 大手オンライン小売業者は価格設定を担当するチームを社内に持っているが、小規模なShopifyの売り手の多くは、価格をまったく変更していない。Shopifyの直近の四半期からわかるように、Jikaのサービスの潜在的な市場はかなり大きく、急速に成長している。現在のJikaのMRR(月次経常収益)は1000ドル(約10万6000円)以下と小さい。しかし、小さな種から大きな木へJikaがShopifyの売り手市場でどれだけ早く足跡を伸ばすことができるか期待したいところだ。
Minimall
ヨーロッパのPinduoduo(拼多多、中国の大手ECサイト)を目指しており、小売の中間業者を排除して消費者に安い商品へのアクセスを提供することを目的としたEコマーススタートアップ。 同社はフェイスマスクを作ることから始め、3カ月で45万ドル(約4780万円)相当の在庫を動かした。
Hellometer
市販のカメラを使用して、ファストフード店のオーナーがどれだけ早く顧客にサービスが提供されているかを分析するのに役立つツールを開発。 現在は2か所でテスト中で、さらに300カ所でテストする計画があるとのこと。
MedPiper Technologies
医学部や政府と協力して、インドで資格を持った医師や看護師の最大のデータベースを構築。 病院に毎月の購読料を請求しつつ、このデータベースを活用して医療専門家を募集し、欠員を迅速に採用するというビジネスモデル。
Artifact
誰もが永遠に保存しておきたい人や出来事がある。Artifactは「個人ポッドキャスト」の作成を支援するスタートアップだ。プロのインタビュアーがあなたの祖父母などと話し、彼らの話を記録に残すことで、あなたの孫が犬の遠吠えなしに昔の話を聞けるようになる。
Charityvest
資産家が寄付をするとき、助成先の分野を指定して公益法人などに寄附する制度であるドナー・アドバイズド・ファンドを利用することが多い。Charityvestによると具体的には「401K(確定拠出年金)やHSA(Health Savings Account、税優遇のある医療用貯蓄口座)など」とのこと。 同社は、企業の福利厚生として、従業員にドナー・アドバイス・ファンドを提供する。 これまでにARR(年間経常収益)で6万5000ドル(691万円)、MRR(月次経常収益)で5400ドル(約57万円)を稼いでいる。 多くの大企業は、従業員の寄付についてある程度のマッチングを実施しており、そこで同社のサービスが生かせるかもしれない。
Eatable
レストランのワークフローに事前注文機能を組み込むことで、電話での注文を紙とペンで済ませる必要がなくなり、業務を効率化できるようになる。
Heron Data
既存のソリューションよりも正確で安価な方法を用いて、フィンテックサービスが銀行取引データを分類・ラベル付けするのを支援するB2B企業。
VoloPay
東南アジアで、企業向けのクレジットカードを提供するBrexのような事業の展開を計画しているスタートアップ。 承認、請求書の支払い、経費、会計の自動化をすべて1つのプラットフォームで実現しようとしている。 企業のクレジットカードによる支払いを合理化し、3カ月間でユーザーは9万ドル(約957万円)を利用している。
LendTable
401Kに企業負担を加えることは資金を節約する素晴らしい方法だが、給料受給者はその収入から支出する余裕はない。LendTableは、財務上の従業員給付のコストをカバーするために現金の前貸しを提供し、将来的には単一の利益分配のかたちで支払いを受けられるようにする。約3000万人の従業員がこの投資機会を利用していないので、大きな市場になる可能性がある。
Zuddl
大企業向けのカンファレンスをオンラインで開催することを目的としたスタートアップ。 出席者1人あたり5ドルを請求し、すでに数千人の参加者を集めたカンファレンスを主催した。競合のHopinなどと少し似ているが、Zuddleはブースやチャットのためのロビーなどを再構築したいと考えている。約1カ月で5万4000ドル(約574万円)の収益を上げたことで頭角を現し、年率換算すると大規模なスタートアップの1つになりつつある。
セルフストレージ(トランクルーム)での支払いや顧客のアカウントを管理するための建物管理ソフトウェアを開発。 あらゆる規模のトランクルーム向けに設計されており、これらの顧客のあらゆるニーズに対応したシステムを提供することを目指している。 以前にTechCrunchでも紹介している。
Ready
地域のISP(インターネット・サービス・プロバイダー)が全国規模の大手チェーンに対抗するためのツールを構築。テレビやVoIPなど厳選されたプロバイダのサービスを顧客にバンドルして、クロスセリングを可能する。 現在5つのISPと協力しており、MRR(月次経常収益)は20.5万ドル(約2180万円)。
Hubble
データの品質を手動ではなくソフトウェアで自動的に追跡するツールを開発。具体的には、企業のデータウェアハウスのエラーや欠落した情報を監視し、社内のエンジニアは他の作業に時間を割くことができる。 この会社は3週間前に創業したばかりだが、すでに3社の顧客がいる。 1社あたり年間1万ドル(約106万円)の売上を見込んでいる。
OrangeHealth
インドには、小規模なクリニックを持つ何十万人もの医師がいるが、オンライン相談やその他の遠隔医療サービスには対応していない。OrangeHealthは、オンラインサービスや請求、配送などのインフラの提供を目指している。患者は地元の医師の診断だけでなく、追加料金なしで迅速にオンライン治療も受けられる。
DraftWise
時間がかかり、退屈で、コストがかかる法律の仕事をソフトウェアで支援するスタートアップ。 DraftWiseのサービスを利用することで、信用契約に必要な時間を30時間から10時間に短縮できるという。まだ収益化には至っていないが、いくつかの法律事務所との間で約6通の契約書を交わしており、それぞれが7桁の収益を上げることを予定。年間50万ドル(約5315万円)以上の料金を大手法律事務所に請求する予定だという。DraftWiseは弁護士とビッグデータ分析を専門とするPalantirの元スタッフによって設立された。同社のサービスで費用を抑えることができれば、もちろんそれは問題ない(Palantirは上場申請書で多額の負債が発覚したが)。
Sakneen
米国で成功しているビジネスモデルを国際的に展開することを狙うスタートアップ。エジプト向けのZillow(オンライン不動産データベース)の作成を進めており、すでに同国の新築住宅供給の80%を占めるデータベースを構築している。
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(翻訳:TechCrunch Japan)