Y Combinatorが‘より株式投資に近い転換社債’Safeの運用を2014年より開始

Y Combinatorは数年前に、スタートアップがアクセラレータから容易にシード資金を調達できる方法として、転換社債を流行(はや)らせるきっかけを作った。本格的な投資ラウンドは弁護士を立てて契約条件をまとめる必要があったりして、なにしろ大げさだが、それに比べると借入れは簡単だ。そしてそのYCがこのほど、新たな株式転換形式として、”Safe“なるものを導入しようとしている。Safeは、”simple agreement for future equity“(将来の株式に関するシンプルな合意)の頭字語だ。

記事の見出しは、Y Combinatorが転換社債離れをする、となってしまうが、でも実際の話はもっと微妙だ。たしかにSafeには、負債を投資の道具として使用することに伴う面倒が少ないが、しかし結局のところ、“Safe”による投資の運用は基本的に転換社債と同じなのだ。

しかもそれは、最初から意図されていることだ。Y Combinatorのパートナーで弁護士でもあるCarolynn Levyによると、投資という観点から見ると、ほとんど何も変わっていない。アクセラレータとしてのYCが望んだのは、転換社債のメリット…弁護士や何週間もの交渉期間などなしで迅速に資金を調達できること…を生かしつつ、そのあまりおもしろくない部分を削ることだ。

Levyは言う: “急速な変化にはついてこれない人が多い。また、あまりにも新しすぎるものは拒否反応を喰らう。Safeは、その名前に慣れてから見ると、転換社債と同じものだと思えるだろう”。

Safeが解決を目指した二つの主な問題は、利息と満期日の取扱い方だ。転換社債は短期負債として発行されるので、満期はふつう1年だ。でも1年なんてすぐに経ってしまうから、スタートアップにとっては頭痛のタネになる。

そして利息の問題は、スタートアップにとって利息が重荷というよりも、ときどき高い利息を求める投資家がいることだ。そこで、転換社債のように投資を単純な短期ローンと位置づけるのではなく、Safeでは、全投資家に転換後の株主権を保証する。

“証券業界のこれまでの固定観念では、負債はあくまでも負債、株式はあくまでも株式、両者は明確に異なるものだ”、とLevyは言う。“でも誰もかれもが企業の株を保有することを求めるのなら、誰も負債を投資の道具として使わなくなるだろう”。つまり、単純な短期債務でなく、株式投資により近い性格の転換社債をYCは模索したのだ。

LevyがY Combinatorに加わったのはほぼ1年半前だが、その前はWilson Sonsiniのスタッフとして2008年以来、YCのAA(ダブルエー)クラスの株式投資や、同社が3年前に始めた標準転換社債型投資に関わる文書作成を担当していた。

Y CombinatorはSafeに関しても、一連の標準的でオープンソースで誰もが利用できる文書を作成するつもりだ。

投資の形式としてふさわしい、新しい形の転換社債を提案したのは、Y Combinatorが初めてではない。Adeo RessiのTheFundedとFounders Instituteは、Wilson Sonsiniと共同で2012年に、‘標準転換株式’に関するドキュメントを発行している。

でもSafeは、Y Combinatorという人気企業がバックにあるから、けっこう流行(はや)るかもしれない。しかもYCの育成事業に参加するスタートアップは、2014年冬のクラス以降、全員がSafeを使うことになるのだ。

==
* 転換社債について詳しく知りたい人にはこれこれなどがおすすめだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。